速記対談
生涯学習と速記教育


はじめに
 今回の「速記対談」は、テーマを「生涯学習と速記教育」に絞って滝鞍二さんに聞いてみました。

 「生涯学習」関係の専門的な文献や、余り知られていない「生涯学習インストラクター」資格の文献等もあわせて紹介しております。

生涯学習
通信教育
生涯学習インストラクター制度




 生涯学習
 
速水研一郎 最近は「生涯学習」という言葉が盛んに使われておりますね。
 また「日本の速記」の平成12年12月号には平成12年10月26日に行われた「社団法人日本速記協会第35回通常総会」の“平成13年度事業計画案”の中に「生涯学習」に関したことが掲載されていましたね。
 
滝 鞍二 社団法人日本速記協会では平成2年11月1日の通常総会から「生涯学習」という言葉を使い始めております。その後、毎年の事業計画案では「生涯学習」という言葉が使われています。
 また、社団法人日本速記協会では平成3年度事業計画案の「その他」にも
 生涯学習の立場からは文部省のお力添えをいただきながら、その他、あらゆる機会をとらえ、速記の普及に向けて積極的なPRに努めるとともに、地道な啓蒙活動を行っていきたい。
と書かれています。
 
速水 平成13年度の事業計画案には、
 
  総 括
 21世紀を迎え、我が日本速記協会としては、さらに心を新たにして、定款に定められた目的達成に向かって、積極的な活動を行っていく必要がある。
 特に若い人々には書記能力の低下が目立ち、さらには、高齢化社会と生涯学習の重要性が増している現在、文字を速く書く、正確に書く能力を身につけられる速記能力の必要性を、強く訴えていくための活動を活発にしていかなければならない。
 
  1.総務関係
  (1)速記相談室
 資格取得の情報量が多くなるにつれ、速記に関する質問や相談も、日々多く寄せられるようになろうし、また、生涯学習の見地からも『速記』の資料要求などがふえてこようが、これらの相談等については、今までにも増して懇切な指導を行うことにより、速記についての正しい認識を持ってもらえるよう対処していきたい。
 
  2.速記技能検定試験関係
  (前略)
 速記技能検定試験は本協会事業の中核をなしているものであるから、「21世紀には速記能力が再評価され、国民各層で教育されるようになる」との確信のもと、速記を勉強する人々が多くなって受験者が増加していくように、積極的に活動していく必要がある。
 そのため、高等学校や中学校の授業の中での教育、生涯学習をしていただく教育機関での学習、通信教育の普及などを図っていただき、そこで学習される人々が、検定試験を受けることによって、より上級を目指して努力していこうという励みになるように、検定試験が各地で実施できるようにしていく必要がある。
 したがって、各支部での受験はもちろん、分試験場の設置を積極的に呼びかけ、速記の能力ある人々が増加していくように努力することにより、『読み書き、そろばん』の能力の必要性はますます増加し、その『読み書き』というのは、『正しく、そして、速く書く能力である』という認識が、国民全体に浸透していくように努めていかなければならない。
 
  8.結び
 以上、速記の現状、今後の計画というようなことについて考えてきたが、速記を勉強したい、速記の検定試験を受験したい、速記者になりたいという問い合わせは、全国から数多く寄せられるであろうから、それらの多くの声にこたえていかなければならないが、それには、速記の学校、教授所等が現在余りにも少ないのが悩みである。そこで分試験場を全国にできるだけ多く設置して、勉強しておられる地域の近くで、回数も多く受験できるように持っていきたいと思っている。 そこで、「教えてもいいよ」という会員の方々をふやす一方、一般の人々へのPRにも今まで以上に力を入れていきたい。
 そして、文部省主催の「全国生涯学習フェスティバル」を初め、国、地方公共団体、諸学校、その他の団体が行う生涯学習のためのあらゆる機会をとらえて、『国民皆速記』の旗印のもと、広く国民の書記能力の増進、記録事務の能率化、速記の普及発達に向け、本・支部一丸となって、会員の1人1人が先頭に立って『速記』の積極的なPRに努めるとともに、記録作成に携わる者が手を携えて、速記の大先輩が築いてこられた「日本の文化発展は我々の手で!」の意気込みでこの平成13年度もたゆまざる努力を続けて行きたい。
 
と書かれていますね。
 
 社団法人日本速記協会は生涯学習の一環として、速記をどのように展開していくのか、具体的なものが何も見えてきませんね。
 
速水 「日本の速記」には「全国生涯学習フェスティバル」の報告も全くないので、実態がわからない状態ですね。
 
 「生涯学習」とはどのようなものであるのか、ほとんどの人は「生涯学習」という言葉を概念的にとらえている程度ではないでしょうか。
 
 
生涯学習指導者養成講座
速水 「生涯学習指導者養成講座」については、各地の新聞などで盛んに広告を掲載していますね。
 
 文部科学省認定社会通信教育「生涯学習指導者養成講座/生涯学習ボランティアコース」は財団法人実務教育研究所(〒163-8660 東京都新宿区大京町4番地)が行っている通信教育です。
 
 まず「生涯学習」と「生涯教育」の違いを「生涯学習指導者養成講座」の「生涯学習用語集」(A5版 98ページ 1998年)から引用してみましょう。
 
 生涯学習
 生涯を通じて人間的、社会的、職業的発達のために行われる学習のことをいう。生涯学習と生涯教育はよく混同して使われるが、中央教育審議会答申『生涯教育について』(昭和56年)では、これらを次のように区別している。「今日、変化の激しい社会にあって、人々は、自己の充実・啓発や生活の向上のため、適切かつ豊かな学習の機会を求めている。これらの学習は、各人が自発的意志に基づいて行うことを基本とするものであり、必要に応じ、自己に適した手段・方法は、これらを自ら選んで、生涯を通じて行うものである。その意味では、これを生涯学習と呼ぶにふさわしい。この生涯学習のために、みずから学習する意欲と能力を養い、社会のさまざまな教育機能を相互の関連性を考慮しつつ総合的に整備・充実しようとするのが生涯教育の考え方である」。なお、臨時教育審議会の答申では、学習者の観点に立って教育の見直しを行うということから、生涯教育という言葉はすべて排され、生涯学習という言葉のみが使われた。→生涯教育
 
 生涯教育
 生涯にわたって人間的、社会的、職業的発達を図る教育の総称。今日言われる生涯教育は、従来の学校教育、社会教育、家庭教育などに新たに登場してきたそれ以外の教育機能も加えて、教育の再編成を行うべく提唱された。学校教育のような明確な対象を指し示す用語ではなく、さまざまな教育活動を統合するシステムとして主張されることが多い。統合には生涯にわたる垂直的(時間的)統合と、あらゆる学習機会の水平的(空間的)統合とが考えられている。
 生涯教育は、生涯にわたって国民の学習を管理する主張である。学校教育の生産化を推し進める主張である、などという生涯教育論への批判もある。この批判を思想的に堅持しようとする立場から、生涯教育ではなく「生涯学習」を主張する場合もある。
 最近では生涯教育(lifelong education)とほぼ同じ意味で生涯学習(lifelong learning)を用いることが多い。厳密に両者を区別するならば、生涯にわたる自発的で自立的な学習が生涯学習であり、これを組織的に援助する教育が生涯教育ということになる。→生涯教育における「統合」の概念、生涯学習
 
 生涯教育における「統合」の概念
 生涯教育は lifelong education の訳であるが、より正確には、lifelong integrated education と言われる。つまり、生涯教育というのは、「生涯にわたって統合された(integrated)教育」である。この語から推察されるように、生涯教育というのは、単に生涯わたって教育が継続されるというにとどまらず、「統合」されていなければならないということになる。ユネスコにおいてラングラン、P.は、「統合」には垂直的統合と水平的統合とがあると主張した。垂直的統合は、生まれてから死ぬまでの生涯の各時期における教育を関連づけることを意味している(時間的統合)。それに対して、水平的統合というのは、あらゆる教育機関や教育機会を関連づけることである(空間的統合)。垂直的統合を図るための基本原理としては、発達課題が重要だと考えられている。発達課題の概念を考えたのは、シカゴ大学教授のハヴィガースト、R.J.である。彼は胎児の身体の各部分の形成、発育に一定の決まった順序があることにヒントを得て、誕生後にも、各発達段階にはそれに対応した発達課題があると想定した。ここで重要なことは、単に幼児期、児童期、青年期にとどまらず、壮年初期、中年期、老年期というように、人間の生涯にわたっての発達課題が上げられているということである。このことは発達がある一定の年齢段階で止まってしまうのではなく、学習を続けることによって一生続くものであることを示唆している。このような生涯にわたる各時期の発達課題を順序を追って達成していくのが垂直的統合である。一方、現代社会においては、学校を初めとして教育や学習のための制度、機会、手段などが多様に発達しつつある。知識、技術、能力などの獲得において、これらの有機的な連携を図ろうというのが水平的統合である。
 
と書かれています。
 
 また、「生涯学習インストラクター機関紙」(財団法人社会通信教育協会)の第15号(平成14年2月発行)に真柄正幸さん(国立教育政策研究所 社会教育実践研究センター・社会教育調査官)が、「生涯学習と生涯学習社会」について下記のように書かれております。
 
生涯学習とは、「@各人=国民1人1人が行う学習」であり、人から言われて行うのではなく、「A自発的意志に基づいて行う」ことを基本とし、「B自分が必要と思ったときに」、「C自分に適した手段や方法を自分自身で選んで」、「D生涯を通じて行う」学習であると言えます。
 
速水 「生涯学習」と「生涯教育」の定義は違うんですね。
 現在、全国の都道府県及び市町村の教育委員会では生涯学習の推進に力を入れていますね。
 
 私が住んでいるA市でも「A市生涯学習推進基本計画」(A4版 74ページ)が平成9年3月に発行されています。
 内容は先の「生涯学習指導者養成講座/生涯学習ボランティアコース」(全6冊 A4版798ページ)のテキストとほとんど同じことが書かれています。
 
速水 どういう内容ですか。
 
 「生涯学習指導者養成講座/生涯学習ボランティアコース」の通信教育は、平成元年4月から財団法人実務教育研究所で行われております。興味のある方は通信教育を修了しておくことをお勧めします。標準学習期間は6カ月であり、速記の通信教育と比べると学習はかなり楽なものです。
 平成12年2月15日に受講して平成12年8月11日に修了しました。実際に学習したのは15日ぐらいです。
 
速水 えっ!
 
滝 「報告課題」の6回分と「修了報告課題」だけです。1日目はテキストを読み、2日目で「報告課題」を作成しました。
 「修了報告課題」は、私の最も苦手なレポートで約1,200字程度のものです。テーマは
1.私とボランティア活動
2.通信教育の学習を通して得たこと
(受講の動機、学習方法、教材及び学習指導についての感想等は適宜織り込む)
 新しいテーマだったので「修了報告課題」の作成には3日間かかりました。ですから実質15日なんですよ。
 
速水 全部、覚えているんですか。
 
滝 私の場合は、とにかく修了だけはしようということで概略を勉強しただけです。本格的に勉強をするのはこれからなんです。
 
速水 ……。
 

 通信教育 (↑ このページの先頭へ)

滝 私は、高校時代に中根速記学校の通信教育「本科課程」を受講したときにも、受講期間が6カ月間のところを約5カ月で修了しています。
 
速水 そんなに簡単に修了できたんですか。
 
滝 中根式の通信教育でも、実際に勉強したのは7日間だけで、添削問題の6回分と修了試験だけです。
 
速水 ほかの時間はどうしていたんですか。
 
滝 次の添削問題が届くまでは、早稲田式で練習していました。中根式の通信教育を受講していたときは興味本位でやっていました。ですから、受講期間中には速度練習をしておりません。
 
速水 中根速記学校を卒業しておりましたね。
 
滝 中根速記学校の場合は「本科」が卒業で、「研究科」は修了と言うんです。
 
速水 
 
滝 大学の場合は「卒業」で、大学院の場合は「修了」と言うでしょう。
 
速水 なるほどね。
 
滝 ですから、中根速記学校の場合は本科(1年)の「卒業証書」と、研究科(1年)の「修了証書」があります。
 
編集部注
※1.昭和54年4月から実務速記科(2年)、研究科(1年)と教育課程が変更になった。(従来の「本科」を「実務速記科」と名称変更をした。さらに「研究科」を1年とした。)
 
速水 研究科では、中根式の研究も指導するんですか。
 
滝 主に速度練習ばかりでした。時たま朗読後に書きにくい符号を指導されていましたね。研究科のA先生は朗読材料を選ぶのが上手だったんですよ。
 昭和42年12月19日に早稲田式の「総合技術課程」も修了していますが、早稲田式では分速120字しか書けませんでした。まだ趣味の段階でしたからね。
 高校2年の3学期が終わってから、春休みに修学旅行で東京へ行き、宿泊したのが中根速記学校のそばにあった九段会館でした。そのときに中根速記学校に行き、E先生(故人)にA市で中根式のT先生(故人)を紹介していただきました。
 昭和43年4月にT先生とお会いしてから、本格的に中根式に切りかえて速度練習をしました。
 ですから、通信教育における学習の仕方を知っていたんです。
 
速水 物好きなんですね。早稲田式に限らず通信教育を受講しても修了までいかない人が多いんですが、よく2方式の通信教育を修了しましたね。
 
滝 1つの方式をがっちり学習していれば、別の方式だって簡単に学習ができます。速く書けるかどうかは別の話です。ただ速記に情熱を持っているかどうかだけだと思いますが……。
 
速水 滝さんは「即席速記法(スピードメモ法)」や「超中根式」も独習していましたね。
 
滝 基本体系の「中根式」を知っていれば、簡単に独習ができます。
 私のやり方は、本1冊分を全部ノートに書き写せば概略ぐらいは学習できると思っております。
 スピードメモ法は、高校時代に授業中のノートで使っていました。
 
速水 中根式は使わなかったんですか。
 
滝 スピードメモ法を使ったのは「商業法規」の時間だけで、ほかの科目は中根式を使っていました。商業法規の時間は先生が黒板にいっぱい書くんですよ。先生に速記を使わないように言われまして、T先生に相談したら「即席速記法」の本を貸していただき、本を1冊書き写しながら覚えました。
 北日本高校速記競技大会(東北・北海道地区)が青森県弘前市で行われたときに、中根式速記協会青森県支部のS.Kさんから中根式の大成者・中根正世先生(故人)を紹介されたんです。
 中根正世先生に「即席速記法」を学習したいきさつをお話ししたら、非常に感激されまして、昭和43年11月16日に「即席速記法」の本を送っていただきました。今では私の宝物の1つになっております。
 特に英語の時間は、先生が分速200字ぐらいで直訳したのを書くのには便利でしたね。
 完全な訳文でも分速150字ぐらいだったと思います。
 私は「生涯学習指導者養成講座」も速記教育に関係があると思っていたから、簡単に修了しました。私は、受講期間中には質問をしておりません。
 私の場合は、最初にテキストを全部読み終わってから「報告課題」を見て、何が重要なことであるかを調べてから、そこを重点的に学習しました。
 いわゆる手抜きの学習法です。この方法は余り他人には勧められませんが……。
 
速水 なるほどね。
 
滝 速記指導者は速記教育を行う上でも生涯学習の基礎的な知識も必要です。速記教育を考える上でも参考になると思いますよ。
 参考までに「生涯学習指導者養成講座/生涯学習ボランティアコース」の受講案内書から簡単に内容を紹介しましょう。
 
 第T単元/生涯学習とボランティア活動
現代社会とボランティア/学習ボランティア活動の方法/学習ボランティアの活動/学習ボランティアの養成と活用
 全国各地に展開される活動事例を通して、生涯学習社会における学習、ボランティア活動のあり方を知る。
 ボランティア活動は奉仕とか自己犠牲ではなく、その活動を通して他者とともに自己の成長となる“学び合い”に注目したい。地域の生涯学習が生きがい充足となる。
 
 第U単元/生涯学習の方法
生涯学習の原理/個人学習の基本/集団学習の基本/生涯学習の展開
 生涯学習はいろいろな方法がある。その中で基本となる個人学習と集団学習の特質を知る。
 後半では集団学習におけるリーダーシップ、メンバーシップのあり方を通してグループ学習を学ぶ。また、公民館、図書館、博物館を利用した学習活動のあり方について学ぶ。
 
 第V単元/学習メニューと学習プログラム
学習メニュー方式による学習/学習メニューの作成/学習プログラムの作成 /学習プログラムの作成
 利用できる学習機会・方法・手段の中から学習者自身が選択してみずからの学習計画を作成するのを学習メニューという。学習プログラムとは学級・講座などの行事計画を立案すること。
 それぞれの特徴を知り、具体的な作成方法も学ぶ。
 
 第W単元/生涯各期の学習と教育
乳幼児期と少年期の教育/青年期の学習と教育/成人期の学習と教育/婦人の学習と教育/高齢者の学習と教育
 広範囲の年代層が参加する生涯学習社会。指導者活動をする場合、人生各期の特徴を生かした学習援助が必要となる。
 乳幼児期から高齢期までの特徴や学習援助は当然、異なる対応が望まれる。成人期、女性の学習については第 単元で詳しく学習を進める。
 
 第X単元/成人教育と学習の理解
成人の発達/成人教育の原理/成人の生活と学習/成人の学習構造
 成人は子供と異なる生活環境や心身の発達特徴、能力を有している。
 これらを活かした成人学習援助をアンドラゴジーといい、世界各国で研究が進められている。
 成人期の学習能力から学習構造の実態、学習傾向、学習目標などについて広い範囲に及んで学習する。
 
 第Y単元/生涯学習と生涯教育
 生涯学習への道/生涯教育論の系譜/我が国の生涯学習の施策と動向/地域における生涯学習の展開と課題
 学校中心の教育から生涯にわたる教育体系に移行した生涯教育論の系譜を知る。歴史的変化である。
 その上で、我が国の施策・動向地域における生涯学習の展開や課題を学ぶ。生涯学習ボランティアとして、学習情報の提供、学習相談、まちづくりまでを学んでおく。
 
速水 速記教育を考える上でも参考になりそうですね。
 
滝 私が興味を持っていたのは、第V単元の「学習メニューと学習プログラム」でした。
 大学の教職課程を卒業していれば、指導計画書の作成方法を勉強しますが、教育関係の文献を見ても、見本はありますが、具体的な作成方法が書かれておりません。
 
速水 速記教育を研究するためには、必要な部分ですね。
 
滝 各法則ごとに細かい「指導計画書」を作成するとなったら大変な作業量になると思います。
 
速水 早稲田速記講座「総合技術課程」の“学習の手びき”にも「指導計画書」がありましたね。
 
滝 さすがによくできておりますね。中根式に応用しようと思ったこともあります。
 私が「総合技術課程」を受講していたときには、テキストの説明をほとんど読んだことはありませんよ。
 私がテキストでまじめに読んだのは、第1巻の下段に書いてある70ページから96ページの「速記の歴史」だけです。
 
速水 速記文字はどうやって覚えたんですか。
 
滝 テキストの速記文字をノートに写しながら丸暗記しました。ですから、ワーク・ブックの単語編や文章編を使ったことがありません。
 速記文字をある程度覚えてから、授業のノートに使っておりました。速記というよりも「遅記」でした。
 
速水 最初に速記を使ったのはいつですか。
 
滝 中学3年生のときです。
 
速水 反訳をしたんですか。
 
滝 私の場合は反訳よりも反読の方が先です。
 高校に入学して2カ月ぐらいたったころだと思いますが、「生物」の授業のときに、先生に見つかって反読をさせられました。そのときは前回の授業のものまで反読させられました。今から考えても冷や汗ものでしたね。
 
速水 普通は反訳の方が先なんですけどね。
 
滝 速度練習をしたことがありません。ですから、自分自身がどのぐらい書けるのか知りませんでした。
 高校1年の2学期に、美術の先生が全員に書ける速度で講義をノートに取らせたんです。速度は分速40字ぐらいだったと思いますが、4時間にわたって書いたことがあります。私はもちろん速記文字で書きました。期末試験に出すと言われたのでまじめに書きましたね。回りを見たらクラスの仲間は必死に書いておりましたが、私の方は十分に余裕がありました。これが初めての速度練習でした。そのときの原文帳と反訳したものは今でも持っております。
 
速水 随分のんびりやっていたんですね。
 
滝 今と違って趣味の段階でしたから、まだ速記に対する情熱がなかったと思います。速記が好きだったという程度でしょうね。
 私が本格的に速度練習を始めたのは、高校2年の夏休みにアルバイトをしてテープレコーダーを買ってからです。
 私が早稲田式で本格的に速度練習をしたのは7カ月間ぐらいです。
 そのときに残ったアルバイト代で、中根式の通信教育を受講しました。
 
速水 もう早稲田式を使って書くこともないでしょうね。
 
滝 早稲田式の速記仲間に、はがきを出すときに使うこともあります。短い文章で済みますからね。私が書いた早稲田式で、はがきをもらった人は少ないと思います。
 
速水 40年以上使わなくても、ちゃんと覚えているものなんですか。
 
滝 省略法や簡字などは、あらかじめ早稲田式のテキストを調べてから、2〜3回は別の紙に書いて練習して、はがきに書きます。
 速度は別としても、今でも基本文字程度ならテキストを見ないでも書けますよ。
 中根式で手紙やはがきを出すときには、標準的な書き方をしています。私が使っている中根式は中根式の人でも読めませんからね。
 
 

 生涯学習インストラクター制度 (↑ このページの先頭へ)

 
速水 話が大分脱線したので、本題の「生涯学習」に戻りましょう。
 
滝 財団法人社会通信教育協会認定資格「生涯学習インストラクター」制度を知っておりますか。
 
速水 自由国民社の「各種通信教育ガイド」(2007年版)には簡単に書かれていましたね。
 余り詳しいことはわかりませんが……。
 
滝 まず財団法人社会通信教育協会(〒114-0015 東京都北区中里1−15−7)について簡単に紹介しましょう。
 
 昭和34年に文部省の認可を受けて設立された公益法人です。文部省認定社会通信教育(現在、文部科学省認定社会通信教育)の普及とその向上を図り、我が国生涯学習の振興に寄与することを目的とし、さまざまな事業を展開しております。
 平成16年8月現在で、財団法人社会通信教育協会に加盟をしている団体では、下記の通信教育を実施しております。
 
事務系講座
 
財団法人日本通信教育学園
●法律講座民法課程●日商簿記検定講座
 
財団法人実務教育研究所
生涯学習指導者養成講座生涯学習ボランティアコース●校正実務講座●統計実務講座●多変量解析実務講座●孔版技術講座文字コース●孔版技術講座絵画コース●編集製作レイアウト講座
 
社団法人日本経営協会
●企業会計講座企業会計マスターコース●企業会計講座原価計算コース●現代経営講座戦略管理者コース●現代経営講座戦略管理者基礎コース●現代経営講座中堅社員コース●経営実務講座営業基礎コース●経営実務講座営業戦力化コース●経営実務講座ビジネス文書速修コース●民法入門コース●商法入門コース●労働法入門コース●経済入門コース
 
社団法人公開経営指導協会教育センター
●ラッピング講座●売場管理実務講座●POP広告実技講座
 
財団法人企業経営通信学院
●中小企業診断士講座
 
財団法人日本通信美術学園
●レタリング講座
 
財団法人日本経営教育センター
●社会保険労務士講座●衛生管理者講座●行政書士講座
 
学校法人早稲田速記通信教育センター
早稲田速記講座●文章上達講座●秘書実務コース
 
学校法人産業能率大学生経営開発本部涯学習センター
●新・物流管理講座●新・生産管理基本講座●生産管理者講座●漢字能力検定2級講座●マネジメント基本講座●生産経営者講座●製造基本講座●インストラクター入門講座
 
技術系講座
 
秋田大学工学資源学部通信教育講座
●地球科学コース●資源開発コース●材料工学基礎コース●材料工学専門コース●電気・電子基礎コース●電気系専門コース●一般科学技術コース
 
財団法人国際文化カレッジ
●自動車講座●オートバイ講座●家庭園芸講座●洋菓子講座●総合盆栽講座●写真講座●写真講座●ハイキングとカメラ技法講座●庭木と果樹の手入れ講座
 
財団法人電子文化研究所
●新家電−修理講座
 
財団法人中央工学校生涯学習センター
●トレース講座●漢字検定ゼミナール●機械設計製図講座●建築講座設計製図課程木造コース●宅地建物取引主任者講座●土地家屋調査士講座●風景写真講座
 
 
生活技術・教養系講座
 
学校法人女子栄養大学社会通信教育部
●栄養と料理一般講座●栄養と料理専門講座専門職業コース●栄養と料理専門講座専門料理コース●栄養と料理専門講座治療食コース
 
学校法人杉野学園ドレスメーカー学院通信教育部
●ドレメ通信教育講座
 
学校法人文化服装学院通信教育部
●文化服装通信講座服装コース●ファッションデザイン画講座
 
学校法人大塚末子きもの学院通信教育部
●きもの通信教育講座
 
学校法人清水学園専門学校清水とき・きものアカデミア
●現代きもの講座
 
財団法人日本英語教育協会
●実用英語講座1級クラス●実用英語講座準1級クラス●実用英語講座2級クラス●英検1級対策講座●英検準1級対策講座●英検2級対策講座
 
財団法人日本書道教育学会
●書道基礎科講座●書道専攻科講座●ペン習字基礎講座●ペン習字教育講座●篆刻入門講座
 
学校法人日本放送協会学園
●漢詩講座●短歌入門●俳句入門●川柳入門●新書道入門●古文書を読む●ハーブを楽しむ●ビジネス書法士●ペン字●ガーデニング●園芸●愛犬と暮らす
 
財団法人日本音楽教育文化振興会
●音楽通論●ソルフェージュ●和声法●作曲法
 
などがあります。
 
速水 私が知らなかった文部科学省認定の通信教育が随分あるんですね。ところで「生涯学習インストラクター制度」とはどういう資格なんですか。
 
滝 財団法人社会通信教育協会認定資格「生涯学習インストラクター」の案内書から紹介しましょう。
 
制度開設の背景と目的
 余暇の拡大、高齢化社会の到来、趣味の多様化といった、生活環境及び経済社会の変化ので、生涯学習に対する期待と必要性がますます高まっています。行政面でも「生涯学習振興法」の施行や生涯学習審議会による活発な答申が行われ、本格的な生涯学習の時代に対応する体制が進みつつあります。
 このような時代の要請に応えて、生涯学習インストラクター制度は、財団法人社会通信教育協会が文部科学省の後援を得て、文部科学省認定社会通信教育講座修了者の学習の成果を評価し、全国各地の地域における多様な生涯学習活動を推進・指導する人材養成を図るために、平成4年より実施している認定し各制度です。
 
生涯学習インストラクター資格の内容と人材登録
 文部科学省認定社会通信教育講座を修了された方々が、その学んだ学習成果を生かして、全国各地のさまざまな施設や学校で、生涯学習講座や各種カリキュラムの企画や指導に当たっています。また、地域や団体、個人に対する幅広い学習の支援活動と、生涯学習の振興に寄与されることが期待されています。
 財団法人社会通信教育協会認定審査委員会の審査に合格しますと、認定証書・認定証を発行し、本協会人材バンクに登録し資格取得者の名簿を市区町村教育委員会に送付します。なお、本制度には、生涯学習2級インストラクター資格と生涯学習1級インストラクター資格があります。
 
  生涯学習2級インストラクター
   生涯学習推進活動における指導補助者・支援者
  生涯学習1級インストラクター
   生涯学習推進活動における企画立案者・指導者
 
資格付与団体 財団法人社会通信教育協会
財団法人社会通信教育協会は、昭和34年に文部省(現在の文部科学省)の認可を受けて設立された公益法人です。本協会は、社会教育法第51条で定める文部科学省認定社会通信教育の普及と、その向上を図り、我が国の生涯学習の振興に寄与することを目的として、さまざまな事業を展開しています。
 本協会は、文部科学省認定社会通信教育を実施する、学校法人、社団法人、財団法人の28団体で構成されています。なお、各団体で実施されている文部科学省認定社会通信教育講座は、事務系、技術系、生活技術、教養系を合わせて115コースあります。
と書かれております。
 
 
生涯学習インストラクター資格取得の方法
 
速水 「生涯学習インストラクター」の資格を取得するのにはどうすればよいんですか。
 
滝 まず「生涯学習2級インストラクター資格取得の方法」から紹介します。
 
〔以下、財団法人社会通信教育協会認定資格 生涯学習インストラクターの案内書を紹介〕
 
資格認定対象講座受講
    ●生涯学習2級インストラクターの資格を取得するには、文部科学省認定社会通信教育講座、財団法人社会通信教育協会認定講座を受講し、修了後、以下の申請手続きが必要です。
 ↓
同講座を修了
    ●資格認定対象講座を修了。
 ↓
資格認定申請・他
    ●生涯学習2級インストラクターの資格認定申請手続きに際しては、以下の者に限ります。
    @申請時に満18歳以上である者。
    A資格認定対象講座を優秀な成績で修了した者。
    B資格認定対象講座の実施団体の長が推薦した者。
 ↓申請
    申請手続きの方法:以下の@〜B関係書類等を教育実施団体へ提出(申請)してください。
    @所定の「生涯学習2級インストラクター資格認定申請書」に必要事項を記入する。
    A顔写真(タテ3.0cmヨコ2.5cm)を2枚用意し、1枚は上記@の資格認定申請書に貼り、もう1枚は同封する。
    B申請料は12,000円です。
教育実施団体
    ●教育実施団体による書類審査をします。
    ●教育実施団体による書類審査の上、上記の@〜B関係書類に教育実施団体の長の推薦状を添えて、財団法人社会通信教育協会へ提出(申請)します。
財団法人社会通信教育協会 資格認定審査委員会
              審査
資格認定
    ●資格認定審査委員会で、各指導分野別審査基準・細則により審査します。
    ●審査の結果、合格者を「生涯学習2級インストラクター」と認定します。
 ↓
財団法人社会通信教育協会人材バンクに登録
    ●「生涯学習2級インストラクター」の資格取得者として、財団法人社会通信教育協会人材バンクに各指導分野別・都道県別に登録します。
 ↓
認定証書・認定証の発行
    ●「認定証書」(生涯学習2級インストラクター認定証書)と「認定証」(生涯学習2級インストラクター証)を発行し、ご本人宛に郵送します。
    ●なお、最新の「生涯学習インストラクター機関紙」を同封します。
     
    ●生涯学習2級インストラクターの名称は、資格認定対象講座の指導分野別に次のように表示します。例えば修了講座が「書道」ですと、「生涯学習2級インストラクター(書道)」です。
 ↓
教育委員会
    ●資格取得者のお住まいに該当する市区町村教育委員会(生涯学習所管セクション)にあなたの名簿を送付します。なお、財団法人社会通信教育協会会長名義のあいさつ文書を同封します。
 
 次に「生涯学習1級インストラクター資格取得の方法」を紹介しましょう。
 
財団法人社会通信教育協会の指定通信教育講座を受講
    ●生涯学習1級インストラクターの資格を取得するには、生涯学習2級インストラクターまたは教育実施団体の長の推薦者で、財団法人社会通信教育協会の指定通信講座を履修し、以下の申請手続きが必要です。
 ↓
同講座を修了
    ●財団法人社会通信教育協会の指定通信教育講座を修了する。修了者には「履修証」を発行します。
 ↓
資格認定申請書・他
    ●生涯学習1級インストラクターの資格認定申請手続きに際しては、次の各要件を満たす者に限ります。
    @申請時に満25歳以上の者。
    A生涯学習2級インストラクターの有資格者。
    B財団法人社会通信教育協会の指定通信教育講座修了者。
    C教育実施団体の長が推薦した者。なお、指導分野により生涯学習1級インストラクター資格取得のための研修・講習履修者。
    申請者の申請手続きの方法:以下の@〜B関係書類等を教育実施団体へ提出(申請)してください。
    @所定の「生涯学習1級インストラクター資格認定申請書」に必要事項を記入する。
    A顔写真(タテ3.0cmヨコ2.5cm)を2枚用意し、1枚は上記@の資格認定申請書に貼り、もう1枚は同封する。
    B申請料は14,000円です。
 ↓申請
教育実施団体
    ●教育実施団体による書類審査をします。
    教育実施団体の申請手続きの方法:教育実施団体による書類審査の上、上記の@〜B関係書類に教育実施団体の長の推薦状を添えて、財団法人社会通信教育協会へ提出(申請)します。
財団法人社会通信教育協会 資格認定審査委員会
              審査
資格認定
    ●資格認定審査委員会で、各指導分野別審査基準・細則により審査します。
    ●審査の結果、合格者を「生涯学習1級インストラクター」と認定します。
 ↓
財団法人社会通信教育協会人材バンクに登録
    ●「生涯学習1級インストラクター」の資格を取得した者として、財団法人社会通信教育協会人材バンクに各指導分野別・都道県別に登録します。
 ↓
認定証書・認定証の発行
    ●「認定証書」(生涯学習1級インストラクター認定証書)と「認定証」(生涯学習1級インストラクター証)を発行し、ご本人宛に郵送します。
    ●なお、最新の「生涯学習インストラクター機関紙」を同封します。
     
    ●生涯学習1級インストラクターの名称は、資格認定対象講座の指導分野別に次のように表示します。例えば「生涯学習」ですと、「生涯学習1級インストラクター(生涯学習)」です。
 ↓
教育委員会
    ●資格取得者のあなたの名簿を財団法人社会通信教育協会会長の文書を添えて、お住まいに該当する市区町村教育委員会(生涯学習所管セクション)に送付します。
 
 私の指導分野は「生涯学習」ですので、「生涯学習1級インストラクター(生涯学習)」と記入されております。
 
速水 全国で「生涯学習インストラクター」はどのぐらいいるんですか。
 
滝 財団法人社会通信教育協会発行の「生涯学習インストラクター機関紙」25号(平成19年2月1日発行)によると、
 平成4年3月に「生涯学習インストラクター」制度が、発足して以来、平成19年2月1日現在で24,945名が登録をしております。その内訳は、「生涯学習1級インストラクター」は4,499名、「生涯学習2級インストラクター」は20,446名です。
 登録指導分野は、書道、ペン習字、英語、パソコン、園芸、盆栽、写真、孔版、校正、生涯学習、服装、トレース、宅建、食品衛生管理、採鉱地質、簿記、きもの、栄養と料理、マネジメント全般、企業会計、中小企業診断士、編物手芸、レタリング、社労士、経営労務、旅行主任者、古文書、俳句等が書かれております。
 残念ながら「速記」は書かれておりません。
 
 財団法人実務教育研究所では、平成13年11月1日から平成14年2月28日まで第1回目の「生涯学習1級インストラクター養成のための特別講習」の通信制講習が行われました。受講資格は「生涯学習2級インストラクター(生涯学習)」の有資格者に限られております。特別講習を修了すると「生涯学習1級インストラクター(生涯学習)」の資格申請ができます。
 この特別講習は、資格認定機関の財団法人社会通信教育協会より指定を受けて実施する唯一の通信制講習です。
 参考までに、早稲田通信教育センターが行っている「早稲田速記講座」の全科コースを修了すれば「生涯学習2級インストラクター(速記)」の資格申請ができます。
 
速水 実際に「生涯学習2級インストラクター(速記)」の資格を持っている人はいるんですか。
 
滝 私が財団法人社会通信教育協会へ直接問い合わせて確認いたしました。「生涯学習2級インストラクター(速記)」の有資格者は3人おります。
 「早稲田速記講座」の全科コースを修了しても、速記教育に対する情熱がなければ、資格を申請しないと思います。
 財団法人社会通信教育協会に「生涯学習インストラクター」として登録していれば、毎年、1月と9月には「生涯学習インストラクター」の機関紙が送られてきます。
 財団法人社会通信教育協会事務局では、生涯学習インストラクター登録者の活躍状況を把握し、連絡先の整備をし正確を期すために返信用のはがきが毎回同封されております。はがきには意見を書く欄があります。私は平成13年9月の返信用はがきに、
 1.登録分野別の表も機関紙に掲載をしてもらいたい。
 2.「生涯学習インストラクター全国大会」の記録を有料で頒布してもらいたい。
と書きました。私が最も知りたいのは、登録分野別の人数なんですよ。
 
速水 制度上では「生涯学習1級インストラクター(速記)」の資格があるわけですね。
 
滝 この制度は「文部科学省認定社会通信教育修了者」の学習成果を積極的に評価認定しているものですからね。
 
速水 社団法人日本速記協会の「速記士」よりも、財団法人社会通信教育協会の「生涯学習インストラクター」の資格の方が社会的にも認知度が高いのではないでしょうか。
 
滝 そもそも「速記士」と「生涯学習インストラクター」の資格を比較すること自体が間違っていると思いますが……。
 「速記士」と「生涯学習インストラクター」とは全く別の資格です。
 
速水 一般社会では「速記士」という資格があることを知っている人は以外と少ないですね。
 
滝 私の住んでいるA市でも「速記」という言葉さえ知らない人が多くおります。
 30歳以下の世代になると「速記」という言葉も知らないと思います。最近の新聞には「速記」の通信教育の広告が掲載されておりませんからね。
 
速水 ところで、A市の図書館には速記の本は何冊ぐらいあるんですか。
 
滝 5〜6年前に中央図書館で「速記」の項目を検索したら8冊ありました。本棚に出ているのは2〜3冊だったと思います。ほかの本は書庫に入っておりました。
 
速水 人口の割合には、随分少ないんですね。
 
滝 速記に興味を持って本を読む人が少ないと思います。
 昭和43年から昭和48年までは「早稲田速記○○共練会」がありましたが、私が東京に住んでいる間に自然消滅してしまいました。
 共練会のリーダーだった人も、会員も速記に対しては一時的な情熱だったと思います。
 A市でも早稲田式の通信教育受講者が結構おりましたし、一時期は高校の速記部が3校ありました。
 現在、北海道では高校の速記部は自然消滅してしまいました。
 
速水 我々速記関係者は、速記を学習した時点から、既に生涯学習を実践しているのではないでしょうか。
 
滝 速記は常にいろいろなことを学習しなければなりませんからね。
 速記は速記法則を覚えて、使いこなしているだけで終わったわけではありません。
 速記は単なる言語をとらえるだけの道具という考え方は近代の遺物ですし、速記は125年の輝かしい歴史を持っている知的な日本文化だと考えております。
 速記を通して、さらに速記の各分野を学問的に勉強することも大切なことです。
 私は「生涯学習」の一環として「速記教育」をとらえていくべきだという考えを持っております。
 
速水 速記界では、もう15〜16年ぐらい前の話になりますが「生涯学習」を「老人教育」だと思っていた人がおりましたね。
 
滝 私も、そういう話を聞いたことがあります。老人に速記を指導してどうするんだって言っておりましたね。その人は「プロ速記者の養成」しか考えていなかったんでしょうね。
 
速水 「アマチュア速記」の観点から考えれば、検定試験の5級や6級でも十分に速記の活用分野があるんですけどね。
 
滝 私は検定試験を受ける前から、自分なりに日記とか授業のノートに速記を使っておりました。
 中根正世先生は「速記を知らないのは一生の損」であると言われておりましたね。
 
速水 そのとおりだと思いますね。
 
滝 私は速記だけではなく、速記に関連したことにも興味を持つようになりました。速記をやっていなければ「生涯学習」にも興味を持たなかったし、今ごろは平凡な生活をしていたと思います。
 
速水 今まで、その辺の速記教育が忘れられていたように思いますね。
 
滝 「生涯学習」は、社会人全般を対象にしたものです。
 私は速記に関したいろいろな文献を読んだり調査することも「生涯学習」の一部分だと思っております。
 私の場合は普通の人より、少し速記が好きなだけなんですが……。
 
速水 そこまでいくには、速記に対する継続的な情熱がなければできませんね。
 予定の時間になりましたので、別のテーマで、改めてお話しを伺いたいと思います。
 

 
生涯学習関係参考文献

1.文部科学省認定社会通信教育「生涯学習指導者養成講座/生涯学習ボランティア コース」受講案内書及びテキストT〜Y (財団法人実務教育研究所)

2.財団法人社会通信教育協会認定資格「生涯学習インストラクター」案内書 (財団 法人社会通信教育協会)

3.文部科学省認定「生涯学習指導者養成講座/生涯学習1級インストラクター養成 のための特別講習」受講案内書 (財団法人実務教育研究所)

4.「生涯学習インストラクター機関誌」第25号 (平成19年2月1日発行、財団法人 社会通信教育協会人材バンク委員会)