■2004/04/25 (Sun) 拾い読み 符号の自己統一について 中根速記協会研究誌「ステノ」No.1が昭和32年8月4日に発行されました。「ステノ」の編集後記には、●5月3日、憲法記念日、東京九段の中根速記学校で開かれた、中根速記協会の新制理事会発起人会の席上、新たに専門速記研究誌を発刊することが決められ、その編集を、香川県支部に命ぜられた。●意気込みは盛んであっても、微力な香川県支部が果たして、これだけの大任を担ってゆけるかどうか、全国の先輩各位のご叱正、ご支援を請います。と書かれております。中根速記協会香川県支部では昭和29年4月1日に機関誌「美しき線の流れ」No.1を発行した実績があります。「ステノ」No.1には、中根速記協会滋賀県支部長・西澤政之(故人)さんが「符号の自己統一について」を書かれております。速記学習途中で、少し研究に熱心な人は、符号の遍歴をするものである。自己の習っている式に疑いを持って、他式から他式に乗り移る者は例外として、これならと信じた方式であっても、一向スピードがつかなかったり、誤訳が多かったりして、これを何とか解決しようとするのは、学習者の当然の努力として認めてよい。そのために同式のA先生、B先生、C先生とそれら先生方のテキストやノートを見せてもらって「これはいい」「なるほどこういう書き方もある」などと盛んに取り入れてみる、これが思わぬ利便を得て、非常に書きにくいと悩んでいたものが、一挙に解決されることもあり、また、それからヒントを得て自己流の解決をすることもある。(中略)速記符号の遍歴はよいが、それが過ぎると迷いになり、さらに混沌としてしまって何が何やらわからなくなり、結局大成しなくなる恐れがある。(中略)自分で書いた速記文字が自分で読めないという珍現象が多いのである。かつて、私が高校で自分の知っている限りの高等な符号による書き方を教えた者と、従来の原始中根式に近い書き方を教えた者と比較したことがあるが、結果は、スピードとしてはもちろん前者が勝っていたが、反訳力に劣り総合的にはむしろ後者が優れていたようである。(中略)よりよい式に発展させるために、符号研究をおろそかにしていいということはない。(中略)創案当時の優秀さをいつまでも誇って、その殻に閉じこもっていては、やがて転落の憂き目を見ることは必定である。幸い我が中根式には多士済々、人物には事欠かない。一々名を挙げるまでもないが、それぞれ独自の研究て、よりよい中根式が案出されている。それらを協会本部としても虚心坦懐に受け入れて、統一的な本部方式を打ち立てられることもよいが、まず緊急の問題として、学習者や実務に携わっている者にとっても「自己なりの統一符号を持つべきだ」というのである。(中略)省略法や縮字法を変えていくこともなかなか簡単ではない。一貫した理論と、系統的なシステムのもとに、統一的にやっていく方が覚えやすく、使いやすく反訳もしやすいということになるが、理論と実際では異なる場合が多く、理論を離れた飛躍的な省略法、例えば表意的というか、象形的なものが案外書きやすく便利なこともある。要するに己の短を捨てて、他の長を取り入れるについては、あくまでこれを自己なりに統一し、いわゆる自家薬籠中のものとなすことが大切であると思う。中根速記学校のJ・N先生から研究誌「ステノ」を特別にいただいたのは中根速記学校研究科生の4月です。中根速記学校の先生方は、私が各速記方式の基本文字収集や速記の研究について興味を持っていたのを本科生時代から知っておりました。西澤さんがこの原稿を書かれたのは昭和32年6月28日です。いつの時代においても学習者が速記方式の遍歴や速記文字を研究することは変わらない事実です。逆に速記方式に何の疑問を感じないで習ったとおりに使用しているのがほとんどの学習者です。西澤さんが冒頭の部分で書かれていることは、速記に熱心な人ほどその傾向があります。西澤さんは、昭和28年ごろに「最も粋を集めたる 中根式速記法」の「初等科」「高等科」「研究科」を著しております。「初等科(6訂版)」は、昭和28年11月3日に師匠がいただいた日時を書かれておりますので、初版は昭和23年ごろと推定できます。高等科の7訂版は、数字の年号に書き方から推測すると昭和26年〜27年と推測できそうです。研究科の方は、学習する人が少なかったようで初版しか作成されなかったようです。滋賀県の中根式関係者でも、「最も粋を集めたる 中根式速記法」を持っている人は少ないと思います。私が西澤さんから「最も粋を集めたる 中根式速記法」の「高等科(7訂版)」及び「研究科」をいただいたのは昭和50年11月2日です。師匠から「初等科(6訂版)」をお借りしてコピーをしました。「ステノ」No.1は他の原稿を読んでみてもいろいろと参考になります。
■2004/04/10 (Sat) 速記雑話 速記法則の指導 速記学校では体系的な法則を指導しますが、指導する側と学習者の側では違います。「指導する側」速記学習者が全部の速記法則を使用するかどうかは別にして、一定期間内に速記法則の指導を終わらせなければなりません。一定期間に速記法則を指導する場合には、指導者の方で1年間のカリキュラムを組みます。速記学校の場合ですと、学習者のレベルに関係なく授業内容を組んでいきます。学習者が速記法則をどの程度理解しているかは、ある程度は本人次第という面もあります。また、指導した全法則体系を使用することまでは要求しませんが、最低限の基本となる速記法則だけは使えるように指導をします。速記法則は「知識」としての指導です。あとは速記法則における応用力だけです。「学習者の側」ほとんどの学習者は、指導されたように速記法則を覚えますが、これもせいぜい最初の1〜2年間ぐらいです。ノートには習った速記法則を書き取っていても、人によっては書きにくい速記文字は自然にわかってきますから、自然に整理されていきます。速記学校では「知識」として速記法則を習っても、実際に使用する速記法則には、好みがありますので、個人によって運用する法則は異なります。私自身も速記学校時代に習った速記法則は今でも全部覚えておりますが、すべての法則を使用しているわけではありません。書きにくい速記法則は使用しないで、別の速記法則を使用しております。
■2004/04/09 (Fri) 速記雑話 速記文字を盗む 昔、同じ方式の先輩速記者から「人が書いた速記文字を盗んで覚えるように」と言われました。昔の職人は、仕事を覚えるときは仕事を見て盗め、と言っておりましたが、昔の速記界でもそういう風潮があったようです。この「速記文字を盗む」こと自体がなかなかくせ者でして、速記文字をそのまま盗んで使用しても、ほとんど役には立ちませんでした。速記文字を略字単位で盗んできても、せいぜい役に立つのは1割もあればましな方です。その人が使用している速記文字と、自分で使用している速記文字の感覚が違いますと、採り入れる内容が少なくなります。私は「速記文字をいただくときには、略字単位ではなく、法則単位でいただいてくる」という考え方を持っておりますし、その方が作業効率がよいからです。速記文字は略字単位で考えるよりも、法則単位で考える方が、好みの速記法則体系が組めるからです。自分で使用している法則体系に精通していなければ「速記法則」をいただいてきても失敗をします。中根式は各地の指導者によっていろいろな速記法則がありますが、その中から自分の好みに合った速記法則に出合うことは非常に少ないものです。
■2004/04/07 (Wed) 速記雑話 中根式 速記問題集 中根式速記協会北海道支部では、昭和47年12月に「中根式 速記問題集」を発行しております。B5版で48ページのものです。表紙には昭和47年11月30日〜昭和47年12月3日作成と書かれております。これは中根式速記協会北海道支部で指導者を養成するために作成したものですが、指導者を養成するには至りませんでした。1.中根式速記学指導者用試験問題(100点)2.中根式速記法問題(1000点)30ページで88問3.中根式速記学問題(200点)4.中根式速記術問題(分速240字×3分)5.方式学問題(100点)です。問題だけを作成して実施するに至りませんでしたが、なかなかおもしろい問題が掲載されております。中根式速記法問題は、テキストを丸暗記していないとできないような問題が含まれております。合格点数は決めておりませんが、「速記法」は900点以上。「速記学」は180点以上。「速記術」は96点以上。許容ミス29字以内。「方式学」は90点以上。だったと伝え聞いております。「速記方式学」の問題を紹介してみましょう。1.次の文章の空白に語を書き入れよ。1)符号速記には( )( )( )に分けられる。2)日本における四大方式には( )( )( )( )がある。3)日本速記協会の推薦方式には( )( )( )( )( )( )( )( )( )( )がある。※理事会では承認されなかった。4)日本では田鎖式が発表されてから現在まで約( )の方式がある。5)現在、日本で指導されている方式は( )方式である。6)現在、実務で使用されている方式は( )方式である。2.次の方式の系統を書け。荒浪式( )、井辺式( )、大川式( )、加藤式( )、黒岩式( )、国際式( )、佐竹式( )、寿光式( )、武田式( )、デーゲン式( )、26年式( )、毎日式( )、中根式( )、森山式( )、ユニ式( )、米田式( )、中庸式( )、毛利式( )、宅間式( )、Pitman式( )、Graham式( )3.次の方式名を入れよ。※4方式の50音表を見て、方式名を書き込む問題。があります。作問者を詮索するつもりはありませんが、かなりひねくった問題が含まれております。「速記術」よりも「速記法則」を重視していたことが容易に推測できます。また、下記のような問題もあります。3.次の関係あるものを線で結べ。1)ブライト式 体系化ウィリス式 考 案メーソン式 議事録作成テイラー式 実用化2)上記の国名を書け。〔 〕3)アメリカ ピットマン式フランス エーメパリ式イギリス サカロフ式日 本 ノエ式ド イ ツ ヘロートミクリク式イタリア 統一式ソビエト グレッグ式チ ェ コ 田鎖式ス イ ス デュプロワイエ式韓 国 南天式当時の中根式速記協会北海道支部では、指導者養成に対して力を入れていたようです。
■2004/04/06 (Tue) 速記雑話 発展的内容 発展的内容……小中高で教員が指導すべき内容を定めた学習指導要領の範囲を超える内容。文部科学省は「教科書は学習指導要領の範囲内」との基準を厳格に適用してきたが、新学習指導要領に基づく2001年の小中学校教科書検定が「学力低下を招く」と批判され、「指導要領は学ぶべき最低基準」と方針転換。基準を改定して教科書でも発展的内容の記述を認めた。……(平成16年3月31日 北海道新聞)速記にも「発展的内容」はあります。速記のテキストでは、基本的な速記法則しか掲載しておりませんが、上乗せをした法則が発展的内容に相当しますし、1つの法則でも教科書に掲載されていない速記文字が存在します。少し例を挙げますと、教科書には「上段」の法則は訓音換記法しか掲載されておりませんが、特殊上段という法則があります。これは「上段」における発展的内容に相当します。「上段」の訓音換記法で「考える」は「コウ」と書きますが「考えん」の場合は「コウ」に頭部加点をしてあらわします。「上段略字」で語尾が「○ん」で終わるものには、頭部加点をつけます。「行わん」「改めん」「戒めん」「認めん」「求めん」等々があります。いずれの法則でも教科書に掲載されている以外の法則などは発展的内容に相当します。また「速記史」もその一例です。中根式の教科書には「速記史」について、「中根式の歴史」を簡単に述べている程度です。田鎖綱紀翁が明治15年10月28日に「日本傍聴記録法」の講習会を行ったという記述はありません。「早稲田式速記講義録」及び「早稲田速記講座」の通信教育用のテキストには、簡単な「速記史」を掲載しております。早稲田式のテキストに書かれている「速記史」を読んで「日本速記八十年史」及び「日本速記百年史」を読んだ場合は、教育的な立場ではなく、個人的な立場で「発展的内容」の学習をしたと言えます。さらに「日本速記八十年史」及び「日本速記百年史」では物足りず「速記史」関連の資料を収集して読む場合もありますし、速記法則以外の速記概論、速記教育関係の資料・文献等を読むようになります。これも発展的内容をさらに発展させたものです。
■2004/04/05 (Mon) 速記雑話 カギつきの日記帳 高校時代に文通していた友人から誕生祝いとして「カギつきの日記帳」をもらいました。日記は1年分書ける分量になっているはずですが、1月1日から毎日1ページずつ書いても8月26日に書き終わってしまいました。日記は毎日続かないもの、ということなんでしょうね。最初は、カギを使用しておりましたが、途中で使い勝手が悪いのでカギの部品などを取り外して使用しました。私の日記には速記文字で書いておりますので、第三者に読まれる心配がありませんでした。当時、「カギつきの日記帳」は、第三者に日記を読まれたくないという人たちには売れ筋だったようですが、都合の悪いことを書く場合でしたら、速記文字で書いておけば心配はありません。本当に都合の悪いことは日記には書きませんし、文書や文字として証拠を残さないものです。ちなみに「カギつきの日記帳」の送り主も通信教育で速記を学習していた人ですが、その人は、日記を速記文字で書いていたか確認をしておりません。同じ速記方式でも、他人が書いた速記文字は読みにくいものです。特に身内で速記を知っている者がいる場合には、速記文字を研究しておくか、別の速記方式で書いておきます。私は日記とまでは行かなくても、B5版のノートに日誌をつけていた時期があります。国字で書くよりも、速記で書いた方が楽だという理由です。30年以上前に、速記文字で書いた日記などは、今でも完全に読めますし、標準的な速記文字で書いておりました。
■2004/04/04 (Sun) 速記雑話「速記法則問題」の作成方法 「速記法則」の問題作成方法については、下記のものがあります。極めて単純な方法ですが、各法則ごとに問題文を作成する方法です。1.指導した速記法則を運用して速記文字を書く。2.指導した速記法則の速記文字を国字に反訳する。これが、速記法則問題における一般的な作成方法です。さらにつけ加えると、3.速記法則の説明文を空白にして、語群からの選択方式、あるいは適当な語の記述式です。4.速記法則の説明を簡単な小論文形式でまとめる。5.マルバツ形式の問題。6.三択及び五択形式の問題。7.100文字程度の速記文例と反訳文を掲載して速記文例で間違っている速記文字を探して正しい速記文字を書く問題。8.短文の速記文例を書き、反訳文の〔 〕などに同音異義語の漢字を書き込む問題。9.総合的なものとして、単語を幾つか出して、習った速記法則の中で最も簡単だと思う法則を応用して書く問題。10.速記法則を指定して、教科書に掲載されている文例以外で10個の単語を書く問題。などがあります。速記法則における問題作成には、下記のことに留意します。1.学習者用1)各法則ごとに作成。2)ある程度の範囲を決めて作成。3)法則全体における総合的な内容。2.指導者用1)速記法則の指導法を含めた内容で作成する。2)総合的な問題は複数にわけて作成する。等々、いろいろな方法を駆使して問題文を作成します。1つの問題で解答を複数にした「完全解答」という方法があります。1カ所でも答えが間違うと点数に加算されません。商業簿記の「8桁清算表」では、この手法で行われます。1カ所でも間違ったら役に立たないからです。速記法則問題でも「完全解答」の手法が使えます。自動車の「普通車運転免許」などの学科試験ではマルバツ式の問題には、必ず「引っかけ問題」が入っております。マルバツ式の問題には、必ず「引っかけ問題」を入れておきます。同じ法則の問題を作成する場合でも、「マルバツ」「五択」「記述」「小論文」「完全解答」では、難易度が違ってきます。問題文を作成する場合には、速記法則にかなり精通してしていなければできません。
■2004/04/03 (Sat) 拾い読み 赤鉛筆 加藤康司著「新聞づくり三十年 赤鉛筆」(昭和31年10月30日 初版発行 虎書房)の中に「珍文感文誤訳集」が80〜82ページに書かれております。速記界ではよく引用されております。校正が悩まされるものに速記原稿というものがあった。あったという過去形を使ったのは、現在は、大新聞社では、文字電送時代に入って、速記者の活躍範囲が非常に狭められたからである。従って最近では、往年ほどおもしろい速記原稿の傑作は見られなくなった。今は停年で社を退かれたが、大阪本社に川田二郎さんという速記の名手があった。その川田さんの「珍文感文誤訳集」にこんなおもしろい話が載っている。課長「おい君、君、これはどうもおかしいよ。照宮様が二月堂で大カメ(亀)をご覧になった、とあるが、あんなところにカメがいるかね」速記者「でも何度聞いてもそういう説明でした」これは戦争前、宮廷記事が華やかりしころ、照宮様奈良へ修学旅行の記事の一節、注意原稿だから慎重に、というわけで、もう一度奈良支局へ電話をかけてみたら真相はこうでした。速記者「大カメ?大きなカメですね」支局「そうだ、大きな鐘だ」速記者「ツル、カメのカメだね」支局「うん、つり鐘の鐘だ」速記者「そりじゃ、もう一遍念を押すがね。動物のカメだね」支局「そうだよ。大仏の鐘だよ」皆さん、字でみるとまるで感じが違いますが、これを口で言ってみてください。無理もないとご同情くださることと存じます。……この話のように全く速記も楽じゃなさそうだが、校正も戦前には速記原稿に泣かされた。新聞速記では翻訳時間(※反訳)の節約のために、1本の記事を2人も3人もで中継ぎするから、吹き込み者(送話する人)は最初には「河上の河はサンズイ河、準一の準はジュンズル準、教諭の諭はゴンベンの諭」と説明しても、2回目からはどんどん読んでしまうから、2人目の速記者は「川上純一教授」というように書いてしまう場合が実に多い。岡山と和歌山が混同したり、後援会が途中から講演会になっていたり、三女のちよさんが妻女のきよさんになるというような例は毎度のことで、殊に予約電話時代の地方支局の電話原稿には悩まされたものだ。現在ではほとんどの支局と即時通話もできるし、文字電送時代になって速記原稿も少なくなったから、どのくらい楽になったかわからない。私がある雑誌の「校正座談会」に出席したとき、「社用族という言葉は、確か「朝日」の伊藤昇さんがつくられた言葉だと思いますが……」と発言しておいたところ、活字になってみると「斜陽族」とあった。座談会を傍聴していると、慣れた“座談会族”は、速記者の方を向いて字の説明をしている。ちゃんと活字になることを頭に置いて話しているのだ。著者は当時、朝日新聞の前出版校閲部長だった方です。校正者側の言い分もわからないでもありませんが、速記者側の言い分もあると思います。それはともかくとして、「カメ」と「カネ」を電話で区別をするのでしたら、別の方法があったと思われます。「カメ」の場合は「為替のカ、明治のメ」「カネ」だったら「為替のカ、ネズミのネ」「大仏」なら「タバコのタに濁点、イロハのイ、富士山のフに濁点、鶴亀のツ」「動物」なら「東京のトに濁点、上野のウ、富士山のフに濁点、鶴亀のツ」「つり鐘」なら「鶴亀のツ、りんごのリ、為替のカに濁点、ネズミのネ」というように、第三者的にみると無線通信の通話法でいけたと思います。新聞社のやり方は、各社によって違うと思いますので、何とも言いようはありませんが……。私も昭和43年に○○新聞社で電話速記用の受話器を聞かせていただきましたが、何を言っているのかさっぱりわかりませんでした。毎日新聞社で電話速記が幕を閉じたのは昭和63年2月1日だと伝え聞いております。それに関連して一言。昭和60年前後だったと思いますが、電電公社(現在ではNTT)へ電報を依頼したときに、私が無線通信の通話法で「朝日のア」という調子で電文を読み上げたら、電電公社の若い男性職員に「普通に読んでください」と言われました。普通に読み上げたら、聞き間違いが何カ所かありました。その職員は耳には相当の自信があったんでしょうね。結局、間違った部分は通話法で訂正してもらいました。素直に無線通信の通話法で聞きながら受信をした方が恥をかかないで済んだと思います。
■2004/04/02 (Fri) 速記雑話 速記者でも取れない速記? 平成元年8月20日の速記科学研究会で「中根式の流れ」と題して行われた録音テープが残っております。固有名詞や速記法則は〔 〕の中に片仮名で入れてみました。テープはかなりの早口で、話した本人も早すぎて聞き取れない、というシロモノです。瞬間的な速度は分速400字〜分速450字ぐらいです。プライバシー保護の観点から、話をされた速記関係者の名前を伏せておきます。(前略)……〔リャッカクホウ〕は〔モリ〕先生の符号でありまして〔マルウマル〕がコウギ、〔マルウマルウ〕がオウトウ、〔マルイマルン、マルンマルイ〕がサイキンと書いてあります。(中略)……〔レンゾクコウサリャクホウ〕でありますが、〔ヒモガキホウ〕とも呼んでおります。これは〔チュウカンショウカギ〕が発展したものではないかと思います。(中略)……〔カンジョウリャクホウ〕は中根速記学校で指導されたものであります。前の符号にかぶせて、ウン、ジョウを省略する方法です。(中略)……〔ショウカホウ〕も中根速記学校で指導されたものです。前の符号からすくってショ、ジョ、トウ、ドウを省略する方法です。(中略)……この他省略法名を挙げますと、〔カイリョウキホンモジ、ウレツカテンモジ、アギョウヒョウショウホウ、ヒンシュツオンセツシュッキホウ、ウスヌムルシュッキホウ、ゼットキホウ、ガイコクゴシュクジホウ〕、数詞、〔ギャクリュウハンテンシャクヨウ、ユウゴウキホウ〕があります。これは〔ウエタ〕先生が昭和63年に整理をされたもので、〔チョクセンユウゴウ〕があります。(中略)〔ヒョウショウジョシ、セッショクドウシ、エムエムキホウ〕は〔ウエタ〕先生の符号で昭和56年3月に発表されております。(中略)……〔トクシュジョウダン〕これは〔イナガキマサオキ〕先生の符号で、主に動詞を処理するものでありまして、昭和24年1月号の〔ナカネソッキカイ〕に発表をされております。形容詞、〔タンキホウ、サイショウセン、ツテ、ツタ、ロウ〕〔セッキリャクホウ〕は〔ウエタ〕先生の符号で、昭和26年の中根式速記法原理に発表をされてお閧ワす。〔キョクダイセン、トクダイセン、スーパーライン、チョウサイダイセン、ヒョウイリャクホウ、トクテイリャクホウ、エンケイホウ、ヒョウショウホウ、コウクショウリャクホウ〕、併用略字。〔ギャクギャッキホウ〕は〔ウエタ〕先生の符号で昭和62年6月18日に発表をされております。後ほど〔ウエタ〕先生からご説明があると思います。〔ダエンギャッキ〕は〔ウエタ〕先生の符号で、昭和62年6月13日の発表であります。(後略)というような内容ですが、中根式関係者でも知らない速記法則や速記文字が70カ所以上出てきます。当日は速記関係者が15名参加しており、そのうち中根式関係者が6名参加していたと伝えられております。こういう内容の話は第三者ではなく、本人が直接反訳をした方が確実だと思います。速記法則オタクでないと、内容を理解できないでしょうね。
■2004/04/01 (Thu) 速記雑話 速字典について 速記方式によっては「速字典」とか「簡字字典」と呼ばれる「速記文字」を50音順にまとめた略字があります。ユニークな名前がついているのは「速記マガジン――上級者のための速字7000」があります。その改訂版として「速記マガジン――上級者のための速字7700」が発行されております。中には「解明誤訳速字典」「名詞速字典」「動詞・形容詞字典」「易誤文字辞典」というものがあります。初心者用には「連綴・運筆辞典」があります。上記のものは早稲田式ですが、佐竹式でも「佐竹式簡字字典」が発行されております。速字の掲載語数は、書物により違いますが大体3,000〜8,000語前後です。中根式関係者で「速字典」を作成した人は少ないと思います。昭和46年5月に「中根式速記術 簡字辞典」(約920語)を中根式速記協会北海道支部で発行しております。速字典を作成するかどうかは、速記方式の創案理念や、指導者によります。「速字典」には速記文字の最終形を掲載しますが、速記文字によっては人によって法則の運用方法が違いますので、どうしても指導者が使用をしているものになります。1つの言葉に対してAの法則、Bの法則、Cの法則を使うかということに出合います。中根式は、速記法則を重要視するので「速字典」はなじまないようです。速字典を作成したら「法則」を覚えないで、略字を丸暗記をする学習者が出るかもしれません。