■ 2005/10/09 (Sun) 資料紹介 中根速記学校の通信教育
 昭和42年当時の中根速記学校通信教育の案内書が出てきたので紹介いたします。
 
 公認中根速記学校・速記教育研究会指導
通信教育案内
――速記は中根式――
創案50年、輝く歴史。どなたでも安心して習得できます。
中根式とは
 大正3年現京都両洋学園長(幼、小、中、高)中根正親先生が京大在学中に創案、大阪毎日新聞に発表され、自来令弟正雄先生によって日本全国はもとより朝鮮、台湾も満州まで普及された速記であります。
創案者正親先生は
 昭和27年、日本速記発表70周年記念式典において、斯界の功労者として表彰の栄に浴されました。先生は速記法則の発見から英、数、物、化などの一般学科の教授にもまた独創的な方法(要体)を案出し、今日両洋学園においてその直接指導に携わりながら、なお研究を続けておられます。
本校長正雄先生は
 50年にわたる速記普及の功労により、昭和37年10月、日本速記発表80周年記念式典において表彰の栄に浴されました。中根式にとって重ね重ねの栄誉であります。
中根式の特徴は
 主なものを挙げてみれば、
 1.今までにない独創的な法則により科学的に組み立てられていること。
 2.法則が平易で中高生はもちろん、小学生でも容易に覚えられること。
 3.短期間の学習で高速度速記が可能であること。
 4.中根式は基本から省略法まで一貫していて、50年後の今日、なお手を加える余地のない完璧なもので、他の追随を許しません。
中根式は学生層に最も普及
 この式は以上のような特徴を有しているため、早くより全国の中高校に普及しており、学生で速記のできる者があればその90%までが中根式であります。昭和6年第1回を開催以来、毎年開催される文部省後援の全国高等学校速記大会は、回を重ねること33回、全国高校生憧れの速記競技大会となっております。
中根速記学校は
 昭和5年現在の東京九段下に当時我が国唯一の速記教育の専門学校として創立され、年々優秀な速記者を出しております。卒業生はそれぞれ国会を始め県市議会、新聞社関係、秘書、自営など極めて多方面に活躍しており、また日本速記協会主催の検定試験には毎回多数の合格者を出し、最高技術競技会には最高技術賞を獲得するなど、本校の存在はまことに斯界に冠たるものがあります。
中根式の地方組織
 中根式は全国に広く普及されておりますので、各種主要地に支部があります。校外生はその支部によって技術認定試験などに応ずることができ、またお互いの親睦を図れるようになっております。
校外生は
 中根速記学校速記教育研究会が多年の経験をもとにして、本校に直接通学できない方の要望に応え、通信により中根式の基本文字から高速度法則に至るまで、良心的に責任を持って、指導いたします。なお、本会主催の各種講演講習会、競技会などにも優先的に参加できますし、修了後も質問その他には懇切にお答えすることになっております。
 録音機の発達に伴い、速記の需要はますます旺盛です。
校外生となるには
 校外生には、いつからでも、どなたでも入ることができます。
学 費
 本科 6ヵ月分 3,000円(教材「中根式速記の基本教程」300円を含む)
特 典
 中高校生に特に普及のため、申し込みの際、担任の先生の記名捺印があれば、学費2,500円に割引優待をいたします。
○何らかの事情で学習が遅れても、1ヵ年は校外生としての取り扱いをいたしますから、継続して学習をしてください。
○修了試験に合格した方には修了証を授与します。
○中根速記学校に入学希望者には、試験の上適当なクラスに編入許可します。
○本式は1級より8級までの級制度を設け、随時その試験を行い、合格者には認証状を交付します。
(42.4)
 以上が、昭和42年の中根速記学校通信教育の案内書です。
 
 中根速記学校の通信教育では、6回の「本科学習課題」と「校外生修了試験問題」がありました。
 用紙はB4版縦長で左半分が〔反訳問題〕、右半分が〔速記問題〕です。各回ごとに教科書の○○〜○○ページと速記法則の範囲指定がありました。速記文字を書く問題文には破線の中心線が印刷されておりました。
 また「添削・質問用紙」はB5版縦長ですが、左半分は〔自由速記文〕、右半分が〔質問欄〕及び〔回答欄〕が6回分ありました。
 私の本科課程の校外生番号は210でした。修了証の番号が113号ですから、受講者の53.83
%が「本科課程」を修了しております。この数字は、中根式通信教育受講生の落伍率は少ないと思います。
 私は昭和42年9月に通信教育を受講して昭和43年1月26日に「校外生修了試験」に合格しております。約4ヵ月半で6回の「本科学習課題」と「校外生修了試験」を提出しておりますが、実際に中根式を学習したのは7日間だけです。私自身は日常で早稲田式を使用しておりましたから、中根式は片手間に学習しただけです。
 使用方式を中根式に切りかえてからまじめに練習したのは昭和43年4月5日からです。
 中高校生には、特に普及のために申し込みの際、担任の先生の記名捺印があれば、学費が2,500円になる割引特典がありましたが、私は「割引特典」を利用しませんでした。高校の担任に記名捺印をお願いするような環境ではありませんでした。下手をすれば「速記ばかりやっていないで、学業に専念しろ」と言われる環境におりました。
 「本科課程」の上に「研究科課程」がありましたが、私は研究科へは進学しませんでした。
 研究科は6ヵ月で学費が3,000円でした。添削指導に重点をおいて進めていたようです。
 
 

■ 2005/10/08 (Sat) 資料紹介 中根式速記を志す人々のために
 日本速記協会機関誌「日本の速記」昭和24年10月号 第170号に「中根式速記を志す人々のために」が掲載されておりますので、紹介いたします。
中根式速記とは
 最初現京都両洋中学長中根正親先生が京都大学在学中に創案せられ、大正3年5月10日大阪毎日新聞紙上に『大学生の発明』として初めて世に紹介されたものである。当時最も進歩的速記であった熊崎式の発明者熊崎氏は『幾多斬新なる法則あるが中にも中根式のインツクキ法の妙用には只管敬服の他無御座候、是等独創的御発明に対し満腔の敬意を表し申候』と激賞された。次いでその翌年から中根正世先生(現中根速記学校長)がかわって研究を続けられ、さらに種々新法則を考案して大成に努められつつ今日に至ったのであって、その法則の平易簡明なる点、特に単画式として短期間に高速度を出し得る点において定評をかち得ているのである。
中根式の普及状態
 我が国に速記を普及せられた点において、殊に全国学生間に『速記』なるものを知らしめた普及の功績者として中根正世先生の右に出る者はないであろう。過去20数年の間内地はもとより台湾、朝鮮、満州の各学校にまで献身的な講演講習の行脚を続けられたため、殊に学生間に中根式は広く普及され来たっている。また、依然として本式が速記界から注目されているゆえんのものは、その普及の力とともに法則の斬新を特長とするからであろう。
中根式速記競技大会
 昭和6年全国中等学校中根式速記競技大会第1回を開催以来、本年第15回(新制高校第2回)の回数を重ね、この種競技会は我が国唯一のものであって、学生速記界に毎年感激の嵐を呼んでいる。その他各地方でもそれぞれ学生速記競技が活発に行われており、特に全国大会では文部大臣杯、優勝旗の争奪戦が展開されて、大会出場選手で優秀者はそのまま学窓から速記者として就職していく者も多々あるくらいである。
実務としての中根式
 中根式により国会を始め地方議会、新聞通信社、雑誌社、労働組合その他で多数の人々が専門速記者として活躍しつつあるが、中でも大阪朝日新聞は半数を越して中根式であり、しかも後継者の養成は中根式で指導している。その他専門速記者以外に学生や一般の人々でも中根式を活用しつつある者の数は非常に多数に上っている。
 以上が中根式の沿革であるが、次に指導機関について述べることとする。
中根式の指導機関
 〔中根速記学校〕本校は昭和5年5月、公認速記学校として創立されたもので、爾来20年中根式速記の指導機関として幾多人材の養成に当たってきたものである。入学資格は旧制中学または新制高校卒以上の男女(年齢に制限なし)。または同等の学力ありと認められた者。
 修業年限は普通科(3ヵ月)高等科(3ヵ月)となっているが、これは短期養成を目指すものにて、この6ヵ月の期間に大体の法則を修得せしめ、さらに研究練習を重む者に研究生の制度がある。
 入学は毎月始め。
 授業は二部制で、朝の部は午前10時から12時。夜の部は午後5時から7時まで。
 卒業には所定の卒業試験を課し、合格者を卒業させる。卒業後も技術試験その他受験指導を行う制度も設けられている。
 〔校外生制度〕今日速記の学習を志されても、地方の人々で上京入学することのできない人々のために、校外生制度も設けられている。教材は本校使用の「中根式速記講座」全3冊の他プリント、学習のしおり、通信教育の万全を期して、校内教育を広く開放している。
 以上はいずれも東京都千代田区神田神保町3の4同校に問い合わせれば詳細規則書が送られる。
中根速記協会
 本部を中根速記学校内に置き、各地に支部を置いて、全国中根式速記人の研究、連絡等に活発な働きをしている。
 〔機関誌発行〕月刊『中根式速記』を本年4月号より復刊中根式速記人の向上、発展を企画し、新しい書き方の研究を始め、速記全般についての文化的な機関として、高度なものを発行し、他式の方でもいやしくも速記に関心を持つ人には大いに裨益するところがあるように編集されている。殊に自式そのものの独善生を排し、総合速記雑誌として進む傾向があり、好感を与える点、一機関誌としてより速記の広い意味での雑誌と解してよかろう。所在地は中根速記学校内中根速記協会出版部。
 〔各地支部〕各地の支部においてはお互いの技術向上を図るために研究会を持ち、初心者の手ほどきには講習会等も開催している。殊に校外生の指導連絡にも支部が活用されている。紙面の都合で支部所在地は省略するが、ご照会くださればお知らせします。
主なる参考書
 中根式速記講座全3冊。通俗中根式速記法。中根式速記読本。中根式速記入門。中根式速記文字画集。いずれも中根正世著・中根速記協会刊。
(筆者・中根速記協会本部長 池田正一)
 
 

■ 2005/09/27 (Tue) 国字式の速記用語
 国字常弘著「国字式速記講座」(国字速記学塾 昭和8年9月23日発行)には、国字式独自の速記用語があります。
 
「速記の構成」
基礎文字
 清音(直線、曲線=少し曲ったもの/多く曲ったもの)
 濁音(※濃線)
 半濁音(△中曲字)
 撥音(※小円順記)
 促音(※尾部空間)
 長音(※小カギ逆記)
 拗音(※大カギ逆記)
普通速記法
 キクイツチ
   漢字系の言語を簡単化(順記法)
    キ(※尾部交差)
    ク(※ツノ出し)
    イ(※大円順記)
    ツ(※尾部空間)
    チ(※尾部平行)
 助詞
   助詞の簡単化
 第一特殊略法
   特殊のもの10種
高等速記法
 天地人
   上中下の3段に分かちて簡単化す
  過現将法
  (上段=将来 ヽ ありましょう − ございましょう)
  (中段=現在 ヽ あります   − ございます)
  (下段=過去 ヽ ありました  − ございました)
    1.音訓省略法(上段)
    2.ッタ、ッテ省略法(中段)
    3.ラ行省略法(下段)
   頭音字法
    1.頭音上段
    2.頭音中段
    3.頭音下段
   最大最小文字法
    文字の大きさ
     最大文字(最大線)短字の3倍長/最小文字(最小線)短字の2分の1
    1.人名物名(上段)
    2.無形(中段)
    3.地名(下段)
 組合法(※交差法)
   二単語よりなる熟語の簡単化
 陰陽法(※加点法)
   積極、消極の意の簡単化
   (※正側頭部…セシム、正側中部…セシメ、負側中部…セラレ、負側尾部…セラル)
 第二特殊略法(※符省法)
   成句その他の簡単化
 
※(△○○)は、寿光式の用語で説明
※(※○○)は、中根式の用語で説明。
※「短線」は国字式では4ミリ、寿光式では10ミリ。
 「長線」は国字式では8ミリ、寿光式では20ミリ。
※普通速記法は、平易であって10時間ぐらいの説明で理解し得るものである。
※高等速記法は、非常な速力をもって速記し得る法則である。
 
 

■ 2005/09/26 (Mon) 資料紹介 国字式速記を志す人々のために
 日本速記協会機関誌「日本の速記」(昭和24年12月号 第172号)に、山根祐之さんが「国字式速記を志す人々のために」という、投稿をされております。
 
 「速記はだれにもできる」ということを私はまず強調したい。ある程度の速記ならば、努力によりていかなる方式でもなし得られるものである。ただ短期間にして優秀なる速記能力者となるには、方式の優秀さと指導力、さらに練習生のよき努力によりてのみ完全になし遂げ得るのである。速記を志す人は「だれにもできる、必ずやれる」との信念を堅持して、なし遂げずんばやまずの決意が必要である。
 速記に適不適ありや!との質問をよく受けるが、先天的に適不適はあり得ない。中にはごくまれに天才的の人もないではないが、努力の天才たるに及ぶべくもない。およそ一時をなさんとせば必ずや幾多の困難に遭遇するはずである。まして速記習得には非常な根気と努力を要求される。富士山頂の涼を味わう前にまず熱汗を流すべきで、決して一時のパッションでもってなし得られるものではない。
 真に速記のできない人というのは、普通人なればほとんどいないと言えるが、まず出発点を誤ってはならぬ。「速記は3ヵ月あるいは6ヵ月でできる」とか「速記料云々」というがごとき宣伝に迷わされて易感をもってなさんか、必ずや中途においてペンを折るの結果となる。いかなる方式を選定するかあらゆる面で調査検討されることを切望してやまない。中には速記本来の使命より逸脱したるものも多く、これらは速記の断片的普及に役立つよりも、真の速記に対する認識を誤らしめる弊害のいかに多いかを知るべきで、かかる方式は時と質と量とにおいて公平なる判定がくだされ、自然淘汰されるは必然である。不合理なる方式はいかに努めても真の完成は望むべくもなく、指導者において無責任であったり、優秀なる速記能力なき者が内職的に非良心的指導をなしたりするものを選定してはならぬ。また優秀なる方式及びその指導機関を得たとしても、練習生においてその方式の規範性(どの方式でもある)を守り得なかったり、指導者の説明も真剣に聞かない人はまずできない人の部類に属する。指導者が非常に重要なる説明中に、書くことのみを主としている練習生があるが、かくのごときは説明要旨を理解していると思っているだけで、その実その要旨を少しも理解してない人である。理論的説明の把握なくして合理的練習効果は望むべくもない。
 ではいかにすれば速記のできる人となり得るか、それは前述のごとく出発点を誤ってはならぬことは論ずるまでもないが、まず練習生に対して、「自我を滅せよ」と言いたい。主幹を許さないで「規範性を守る」ことを私は強く要望する。これは決して私のドグマではない。指導者の説明事項の理解に努め、さらにそれを徹底的に実現すべく不断の努力をなすことである。これを国字先生は「良努力」といっておられるが、この良努力をもって絶対正確なる文字を書き得る基礎をつくり上げることである。即ち自我を捨てよということは、練習時代練習生の主観を許さないということである。練習途上自分でよいと思うことと指導者の言と相反することがある。この場合いずれを是とするか論ずるまでもない。速記は知るとともに、まず書けねばならぬ。頭の記憶は容易なるも、正確に書き得る書記動作を手に覚えさすことは容易でない。速記は正確を生命とし、この正確度は将来大成せんとする者は絶対に守らなければならぬ。正確度が守り得ずして速度の高度は望み得ぬ。「読める文字必ずしも正しからず」だんだん深く進に従って不正確なる文字は反訳難に陥る。だれしも正確なる文字を書かねばと認識しつつも、ついその正確への努力を等閑視する傾向がある。しかし出発を誤って東すべきを西し一歩一歩出発点から遠ざかり行をもって上達したものと思いがちであるが、事実は逆に努めるほど目的地から遠ざかる結果を招来する。苗木のときの曲がりは、大木になればなるほど大きくなるの理を忘れてはならぬ。
 速記志望者は例外なく初歩より速書すると思ってくるが、国字式は「遅く正しく」より基礎をなして、速記本来の「正しく速く」に到達せしめる方法である。本塾では約6ヵ月は毎日毎日指導者の添削を受けるために提出せしめる。もちろん速記原文及び反訳とに厳密に添削を実施し、その後は速記したものを反訳せしめ、その結果を1字1字練習生に照合させている。ゆえに2時間授業中本読みは5分前後2〜3回であるが、反訳することによりて完成を早めるのであって、反訳練習なくしては速記完成は望むべくもない。本塾では(国字式全部とは言えないからあえて本塾という)練習過程において画一主義を廃して、努力主義実力主義に準拠している。これは人によりそれぞれ境遇及び教養(学歴の意でなし)才能を異にするためであって、努力効果の認められる者はどんどん進め、しからざる者はできるまで指導する方法である。実質の伴わざる有名方式に堕してはならぬ。デモ速記者は廃して優秀なる有力者を養成するのが、我々の責務であると信じている。私はいかにして短期にして優秀なる完成をなさしめるかを目標としている。しかもその効果は事実となって幾多の門下生がこれを実証しているのである。一例を挙げれば習得8カ月目(1日2時間授業)に完成し得た者もいる。これは例外ではない、天才でもない。我を捨てて根気と良努力によってのみなし得たのである。速記だけはだれにもできると再言して責を果たしたい。
(筆者・山根速記学塾長 山根祐之)
 
 

■ 2005/09/26 (Mon) 資料紹介 寿光式
 昭和42年11月ごろに、寿光式の案内状を取り寄せたときに、青写真で作成された案内状が出てきました。
 
速記とは
国字速記学塾
 人の言葉の文字化は漢字でも、片仮名、平仮名、またはアルファベットにしても、それをそのまま筆記することができません。人の話の速度は1分間200字ないし300字であり、書く速度は1分間100字ぐらいであります。それは漢字は6画、仮名は2画半を要します。口の方が一度動いて手は4回も動かさねばならない、ゆえに筆記ができない。
 ここに人の言説を完全に書くために速記が考案された。明治15年田鎖先生の田鎖式がそれであります。この米英速記を源とした速記とドイツ系の毛利式、英ピットマン式の日本化の中根式、片仮名の速記化の岩村式、以上の進化と思われるものが数式あります。田鎖式に似ている熊崎式、それとほとんど異なってないのが有名な早稲田式である。
 人の手の動きは1分間360回ないし450回であり、書くには聞く労力、書く労力、考える労力も加わって速記習得の必要労力になる習学の年月日にもなるのであります。
 参考のため日本の速記を別紙に例示する。
※図版省略
国字式速記
 国字式速記は日本人の発音50音を基本とし、その構成を分解して科学的なる理法をもって10余年の歳月を経て昭和6年2月11日完成、世に公にしたものである。
 その後教育について研究し、その間衆議院の速記者、新聞社、一般会社、その他一流の技術者男女を世に出した。
 終戦時大阪の地より郷里広島に帰りより優秀なる法則の発見に努め20余年にして必要限界をきわめ得たものである。我らの使用している語は6万ないし12万語と言われている。国字式が完成している速記は1筆労(一度手を動かす)の文字で大体500余りある。これが3画(3筆労)となると約125万ある。されば3筆労の必要がない。漢字1字で20数画あるものがあり、これを使用している。逆襲は速記では左記(※下記)のとおりである。
 「逆襲」   
      )
 この書き方の習得は小学生でもよく身につけることを得る平易さである。1日2時間の教育で5日くらいで習得し、この種数百の言葉を自由に書き得るほどである。
(速記文字は省略)
 以上のごとく速記は決して難しいものではなく、しかも完成すればすばらしく書けるものであります。国字式は終戦前民間第一の速記として自他ともに許していたものでありますが、終戦後20年の研究が完成しました。速記を習う小学生から大学生まで習って悔いのない進化した文字であります。
42.4
 
 昭和42年4月に作成されたものと容易に推測できます。
 
 

■ 2005/09/24 (Sat) 参考文献 寿光式パンフレット
 昭和42年11月ごろに、各地の速記教育機関から資料を取り寄せた中に、「寿光式」のB4版のパンフレットがあります。
 
 「国字式速記仮名」と「大和文字(国字式速記法併用)の文例」が掲載されております。
 基本文字の下に「三鉄則を備え その上 文字特有の 挌 即ち 字挌を備えた 四十四音字」と書かれております。
速記のできる大和文字と国字式速記法
 日本人は、無限の発音中より50音を選定す、清音これである。大和文字、基本文字と速記法によって組織される。
 清 音 字 50音字、速記には仮に44字を使用す。
 濁 音 字 ガザダバ行20音(文字は力を入れて書く)
 半濁音字 パ1行5字(濁音は中曲字とする)
 撥 音 字 (ン)字末に小円 または速記法を加味して天段に書く。
 促 音 字 (ッ)字の間に空間(無形延長線上)2〜3ミリをつくる。
 長 音 字 字頭に2ミリの小カギをつける、速記法ではウ、オ段の長字を5ミリで書き、スのみ方向を30度に変える。
 拗 音 字 カ キャ キ キュウ ク キュ ケ キョウ コ キョの構成の理に従って、字頭に4ミリの大カギをつけるか、速記法を加味して上段に書く。
速記法 語の性質を研究し簡単に書く方法を定めたものである。
 1.キクイツチ法 漢語系の省略法を定めたもの。
 2.助    詞 速記学上特別に定めた。
 3.最大最小字法 学生のノートなどに用いることができる速記法の原理。
 4.シイ法 主義法 国略法
 5.数    字
 6.その他、語にして省略せられざるなし。
日本の速記界
 明治15年田鎖式完成、その後日本に70余式つくられ現に公認方式10余。国字式は他のすべてと構成を異にし、日本人の発音の文字化であり、寿光速記法を併用すれば他の一切の専らつくられた速記に劣らず。試験合格率は国内一を誇る。
“公式試験を通じて見る速記界”
イ.衆参両院の速記者養成所(官立)
ロ.民間の速記方式と試験合格1.早稲田式 会員8万人、AB試験246人(昭和30年調)2.中根式 入門者10万を越ゆべし、141人合格。3.国字式 会員数千人、44人合格。4.田鎖式(日本最初の速記)27人合格。米田式6人合格。10.岩村カナ3人合格。12.毛利式2人合格。15.三浦式1人合格などである。
※この合格率の数字にはトリックが見え隠れします。
※AB試験(A級=分速320字×10分2回、B級=分速290字×10分2回)
 
※昭和30年ごろに作成したようです。昭和42年に資料請求したパンフレットでは、「撥音字」「長音字」「拗音字」の説明文では、下記の部分が赤線で消しております。
 撥音字〔字末に小円、または速記法を加味して〕
 長音字〔字頭に2ミリの小カギをつける、速記法では〕
 拗音字〔の構成の理に従って、字頭に4ミリの大カギをつけるか、速記法を加味して〕
 
 昭和30年初頭の寿光式では国字式の撥音〔小円順記〕、長音の〔小カギ逆記〕、拗音の〔大カギ逆記〕が混在していたことが推測できます。
 
 

■ 2005/09/21 (Wed) 参考文献 寿光式について
 日本速記協会機関誌「日本の速記」昭和33年4月号 第272号に国字寿光さんが「我が式の構成」――国字式速記及び寿光速記法――の中で下記のように述べております。
 
「速記と速記法」
 速記と言えば、簡単に早く書くものと誤解する者もあるようであるが、私は研究完成の3分の1(最高試に合格程度)くらいを教えることにしている。
 
「速記の生命は正にある」
 ゆえに速記法創案の目標は
 1.正 2.書きやすく 3.読みやすく 4.しかして簡単であることがその構成の必要条件であり 5.しかも美的にして品格が高ければ理想的である。
 寿光速記法は創案時代の速記法の一部を一歩進めたほか別に変わったものでなく、国字式の同志はもちろん他式の人にも活用し得て妙である。
 私は、著作者は自他ともに他式の研究を無断盗用は許さるべきでなく、1方式研究の成果を公にして斯界の向上に資すべきものであると信じている。
 広島市吉島本町1丁目653
  国字寿光
 
と書かれております。国字寿光さんは「研究完成の3分の1くらいを教えることにしている」と、と書かれておりますが、後継者には全部の研究を伝えるべきだったと思います。寿光式の後継者があらわれなかったかどうかわかりませんが、昭和42年5月19日に亡くなられましたが、「国字速記学塾」は、昭和58年ごろまで残っていたはずです。2代目塾長は国字ハルミ(古久保ハルミ)さんが継いで、塾の「寿光式」通信教育は香川さんが昭和44年3月に担当しておりました。
 昭和44年3月28日の「国字速記講座」(1)の通信教育のテキストでは、
大和文字(基本文字)
 角度 5方向
  |(垂直)90度  ― (水平)0度  \ 30度(左上から右下)  /(右上から左下)65度   /(左下から右上)20度
 字形 直字 少曲字 多曲字の3種類
 長さ 短字10ミリ 長字20ミリ 
濁音及び半濁音
 濃く書く(濃線)
段位の話(5段法)
  天段、上段、中段、下段、地段
 撥音
 促音
 長音
 拗音
までを32ページのテキストで習います。これが3ヵ月目におけるテキストの学習内容です。
 
 天段=撥音 上段=拗音 中段=直音 下段=ラ行省略 地段=長音
 
 長音には二種類あり、漢語系の長音があり、「クー、スー、ツー、フー、ユー、オー、コー、ソー、トー、ノー、ホー、モー、ヨー、ロー」は「スー」以外の長音はすべて5ミリの長さで「中段」に使用します。なお、「スー」は右上30〜35度で書きます。基本文字の「ス」は20度です。いずれも10ミリですが、角度で区別します。その他の長音は「地段」を使用します。
 寿光式の基本文字は10ミリと20ミリが基本の長さです。
 ウ×2=ク ス×2=ツ ヌ×2=フ ム×2=ユ
 「ウー」と「ムー」は漢語系の長音には入れておりません。「ウー」と「ムー」は「地段」を使用します。
 「スー」と「ツー」を5ミリで書くと同形になりますので、「スー」は「ス」と同様に
10ミリのまま角度を30度へ変えて使用しております。「例外」が認められております。
 
 寿光式では「線」と言わずに「字」を使用しております。
 直線→直字 少曲線→少曲字 多曲線→多曲字
のほかに「中曲字」があります。
 中曲字……濁音字を少し多く曲げ中曲字として書く。
 つまり「濁音字」は、濃く書きますので、「半濁音字」は多曲字と少曲字の中間となります。
※国字常弘著「国字式速記講座」昭和8年9月23日発行では、
 直線
 曲線(少し曲がったもの/多く曲がったもの)
という表現をしております。少曲字/多曲字という用語を見出せません。
 
 

■ 2005/09/20 (Tue) 参考文献 国字式について
 武部良明著「国語速記史大要」(下)に、国字式について記述がありますのでご紹介いたします。
 
第7章 昭和前期
 第1節 単画派の発展
(前略)
 森(※卓明)があくまで中根式の50音表を尊重したのに対し、根本的改変を企てたのが古久保峰吉である。古久保も中根式を習って実務につき、一時はこれを教えたこともあったが、遂に方式そのものに不満を感じた。そこで根本的検討に移ってこれを再編成し、自ら国字常弘と号し、昭和6年新発表(※)の方式を国字式と名づけている。まず50音表においてはマヤラワの4行に深い曲線を当てて清音から濃線及び加点線を除き、対照形式及び倍化の利用を次のように一貫させた。
 ア列文字の対照形=イ列文字 ア列文字の倍化=エ列文字 イ列文字の倍化=オ列文字 〔ウ〕〔ス〕〔ヌ〕〔ム〕の倍化=〔ク〕〔ツ〕〔フ〕〔ユ〕
 第2に直長音はすべて小カギ逆記とし、拗音に方は大カギ逆記により直音との関係を次のように一貫させた。
 ア列文字→ャ列文字 イ列文字→ュー列文字 ウ列文字→ュ列文字 エ列文字→ョー列文字 オ列文字→ョ列文字
 第3に、一般撥音及び次音省略法としてのキクイツチをそれぞれ次のような点画とし、逆記を廃し順記によってこれをあらわした。
 ン――小円 キ――交差 ク――角カギ イ――大円 ツ――空間 チ――平行
 国字式は、これらを基礎に、線尾の点画による順記助詞、音訓転記による上段略字、その他中根式の行き方を巧みに利用したものである。
 古久保は大阪(※)に国字速記学塾を開いて直接教授を行い、「国字式速記講座」を出して通信教授を始め、中根式の行き方を真似て各地に講習会を開きその宣伝に努めた。通信教育の講座は豊富な写真及び模範的凸版によって懇切に説明され、直接教授は独特の人格教育を兼ねた速記教育により、よくその効果を上げた。やがて昭和13年衆議院速記者採用試験に合格者を出し、ここに国字式は、単画派として、中根式及び超中根式と並び称せらるに至ったものである。
 
武部良明著「日本速記百年史」社団法人日本速記協会(昭和58年10月28日発行)
 
第4期 内部整備の充実(昭和元年―昭和20年)
 1 需要拡大の勢力(省略)
 2 記念会と速記士法(省略)
 3 速記方式の普及
  単画派の発展
(前略)
 森(※卓明)が中根式の基本文字を尊重しその範囲での改良に努力したのに対し、同じく中根正親門下の古久保峰吉は、中根式の根本的改良を企てるようになった。古久保は、直線・曲線の他に曲がりの深い曲線を用いることによって50音表すべてを単画線にすることができると考え、他にいろいろと新しい書き方を補い、昭和6年2月、新しい単画方式を発表するに至った。その際、古久保はみずから国字常弘と号して新方式を国字式と名づけ、大阪に国字速記学塾を開いた。そうして、これを中心に各地に講習会を催し、同年11月からは「国字式速記講座」を刊行するなど、その普及にも積極的に進んだ。その努力が実り、国字式は、関西地方を中心に、広く行き渡る存在へと発展した。後に日速協が大阪で認定試験を行うに至ったのも、国字速記学塾の尽力によるものだった。
 
「国字常弘」と「国字寿光」は同一人物(明治29年7月〜昭和42年5月19日)です。
※昭和6年2月11日発表。
※大阪市浪速区桜川3丁目1374番地
戦後は広島市天満中町128(広島市西区天満町15−1)に「国字式速記塾」を開設。現在は後継者難のために閉鎖。
 
「日本速記五十年史」日本速記協会(昭和9年10月28日発行)
 第2編 日本速記術の各式とその発達
  第2章 田鎖式以外の新速記術の発達
   第5節 中根式速記法
(前略)
 中根正世(略)
 森 卓明(略)
 岩村 学(略)
 国字常弘
 本名・古久保峰吉というのであるが、自ら国字と称している。氏は中根正世の高弟であって同氏上京後は京都成安女子学院の速記講師を担当していた人であるが、中根式に物足らず自ら中根式を改案して国字式と号している。かつて京都に国字速記塾を開き、今は大阪に同塾を設けて子弟の教養を図ると同時に、昭和6年末より速記講座1号2号を発行し順次6号まで発行する予定(※)になっている。宣伝としてはやむを得ないとしてもいささか自画自賛の嫌いはあるが、とにかく速記の講義録としてはまれに見る完備せるものである。
 なおこのほかに中根式を修めて自らその基本文字の配列を変改して何式何式と僭称する者もあるが、それらは一切とらないこととした。
(執筆担当:安田勝蔵)
※「国字式速記講座」が発行されたのは3号までです。4号の予約を受けつけておりましたが未刊行のままです。
 
国字式関係文献
国字常弘著「国字式速記講座」1〜3号 B5版 264P 国字速記学出版部 昭和8年9月23日発行
国字常弘著「国字式速記カード」小240 国字速記学塾 昭和9年7月
国字常弘著「国字速記読本」B5版 80P 国字速記学塾 昭和16年1月
山根祐之著「国字式速記」No.1 B5版 58P 山根速記学塾 昭和25年3月28日
山根祐之著「国字式速記」No.2 B5版 140P 山根速記学塾 昭和25年6月14日
 
寿光式関係文献
国字寿光著「講義プリント」全10冊 B6版 320P 同人方 昭和21年4月〜22年1月
国字寿光著「寿光宝典」全2冊 B6版 120P 同人方 昭和21年8月〜22年8月
国字寿光著「秘訣」B5版 32P 同人方 昭和22年2月
国字寿光著「国字速記講座 寿光」(1)B5版 42P 国字寿光速記学塾 昭和42年〜44年
 
 

■ 2005/09/13 (Tue) 新刊紹介 絶妙な速メモ(速記)の技術
 当サイトでは「スピードメモ法 概要」「中根式21世紀型はやかな」を掲載しておりますが、中根康雄著「絶妙な速メモ(速記)の技術」(明日香出版社 平成17年9月)が発行されました。
 B6版 192ページ
 定価1365円(税込)
です。
 「スピードメモ法」の詳細については「絶妙な速メモ(速記)の技術」を御覧ください。近くの書店に並んでいると思います。書店にない場合は中根速記学校へ直接お申し込みください。
 中根速記学校理事長・中根康雄先生から下記の出版案内状をいただきましたのでご紹介いたします。
(前略)
「速記は便利そうだが、テープレコーダーがあるから不要だ音声入力もできているから」と思う人が多い現状ですが、自分自身で文字が簡単に書けるようになれば、速記に対する認識も変わってくると確信しております。
 『10の音を省くだけの「スピードメモ法」』ということで、皆様にわかりやすく説明しています。イラストやカットも多く入っておりますので、興味を持っていただける方が多くなるかと、期待しています。
 新しく創案した新中根式〔はやかな〕も載せています。
(中略)
 この9月2日から、東京都内の大型書店のビジネス親書コーナーで販売しております。
 9月10日ごろから、東京以外の各県の大型書店で販売されるようになりました。
 
<申込先>
中根速記学校 〒101−0016 東京都千代田区三崎町2−4−12
電 話 03−3261−5864/FAX 03−3230−2329
 
 目 次
 第1章 あなたも使っている“速メモ”わざ
 第2章 すぐ役立つ「スピードメモ法」(初級編)
 第3章 “狭養”“薄学”がミスの元
 第4章 すぐ役立つ「スピードメモ法」(中級編)
 第5章 略記の仕方は外国の人が得意?
 第6章 すぐ役立つ「スピードメモ法」(上級編)
 第7章 第3のかな文字「はやかな」のお薦め
 
※第2章、第4章、第6章は、「スピードメモ法」の説明です。
 第7章は「中根式21世紀型はやかな」の入門編です。
 管理人・菅原 登がお薦めする1冊です。

 

■ 2005/09/11 (Sun) 参考文献 超中根式について
 武部良明著「国語速記史大要」(下巻)に、超中根式の記述がありますので、ご紹介いたします。
 
第7章 昭和前期
 第1節 単画派の発展
(前略)
 中根正世が主として普及宣伝に従ったのに対し、中根式そのものの研究に努めたのが森卓明である。森は中根正親の講習を受けやがて実務についたが、研究の必要を感じ、大正13年に京都速記研究所を開いて研究及び後進の養成に当たった。続いて14年「中根式速記術通信講座」を出すとともに、機関誌「速記研究」を創刊、後者は中根式に関するもののみならず、研究「比較速記法」翻訳「アーサーメンツ速記法の歴史」等まで及んだ。これらのうち中根式に関する研究の第一は、昭和4年研究発表録第1号「中根式を基礎としたる和語縮字法」にまとめられたものである。
 このかなり多数の言葉を吟味してみると……同一母音を有するものが非常に多いことがわかる。本縮字法の原理はまさにここに存するのである。即ち同列縮字法とこれを名づける。
 それは、次のような点画化された父音符号の逆記により、同母音を持つ二音文字を合理的につくろうとする書き方である。
 カ行――小カギ  サ行――大円  タ行――有尾小円  ナ行――小円  ハ行――逆大カギ  マ行――逆小カギ  ヤ行――大カギ  ラ行――短小化または長大化
 これは他との混同を避けるため「上段に書くを原則」とし、さらに「言語を比較した上、他に存在しない場合または混同するおそれのない場合、同列のみに限らず母音全体に応用する」こととした。森はこれによって和語に関する限りとかく濫用されがちな中根式の音訓転記法にかえようとしたものである。
 森の中根式に関する研究は、このほか逆記法による外国語縮字法、速記数字その他に及んだが、既に昭和3年その門弟を貴族院式速記課に送り、大いに自信を得ていた。そこで中根式と抵触しない形でその研究をまとめ、昭和6年「超中根式速記法」としてこれを発表した。
 これらは全部逆記法の発展であって、反中根式でも外中根式でもない。これ即ち超中根式と称するゆえんである。
 森はさらに昭和9年より「超中根式速記者養成講座」全4巻を出し、超中根式の通信教授用講義録とした。これは基礎文字の融合による一線化及び漢語縮字法を発展させた四音一線化等の書き方が増補されるとともに、講義録という立場でも種々の考慮が払われている。即ち「速記法の習得と速記者になるということは自ら別である」点に着目し、単なる方式の解説にとどまらず「被講者にとっては講義は文章であるばかりでなく講師の声として聴取できる」ように心がけた。そのため学習日程を区切り、例示例文を豊富にし、4巻1,200ページにわたって懇切丁寧に説明する等、その努力を惜しまなかったものである。
 森があくまでも中根式の50音表を尊重したのに対し、根本的改変を企てたのが古久保峰吉である。古久保も中根式を習って実務につき、一時はこれを教えたこともあったが、遂に方式そのものに不満を感じた。そこで根本的検討に移ってこれを再編し、自ら国字常弘と号し、昭和6年新発表の国字式と名づけている。
(後略)
 
「超中根式関係文献」
森 卓明著「中根式速記法通信講座」(全6冊)A5版 300ページ 京都速記研究所 大正14年6月〜大正15年2月
森 卓明著「中根式速記法一般」 14ページ 京都速記研究所 大正14年10月
森 卓明著「中根式を基礎としたる和語縮字法」A5版 60ページ 京都速記研究所 昭和4年8月
森 卓明著「超中根式速記法」B6版 153ページ 京都速記研究所 昭和6年12月5日
浜田喜一著「中根式速記学教本」(全4巻)半紙2折り 312ページ 湘南速記研究所 昭和8年
宮川正光著「中根式を基礎としたる最新速記法」半紙2折り 26ページ 北陸速記研究所 昭和8年5月
森 卓明著「超中根式速記者養成講座」(全4巻)A5版 1,200ページ 京都速記研究所 昭和9年3月〜昭和11年3月
 
出典:京都速記研究所機関誌「速記研究」第76号(昭和6年4月15日発行)
※宮川正光(明治41年生まれ)昭和6年4月京都速記研究所入所。
 
出典:京都速記研究所機関誌「速記研究」第72号(昭和5年12月15日発行)
京都速記研究所 支部所在地(昭和5年12月当時)
 松江速記研究所
   松江市北堀町
    主任 和田  新
 大阪速記研究所
   大阪市住吉区聖天下2丁目40
    主任 赤坂  薫
 長野速記研究所
  長野県諏訪郡岡谷
   主任 林  経義
 湘南速記研究所
  横須賀市安浦町2丁目
   主任 浜田 喜一
 
※「京都速記研究所」の関係支部は後継者を育成できず既に閉鎖しております。
 
 いろいろな方式が出現しましたが後継者を育成しなかった方式は自然消滅しております。
 後継者の育成はどの方式でも大切なことです。
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