■ 2005/05/11 (Wed) 植田 裕先生の研究
 植田 裕先生は、昭和22年から香川県立高松商業高校の速記部で一先輩として指導され、昭和26年4月から同校の教員として、正式に速記部の顧問として指導されました。昭和45年3月まで、四半世紀に近い速記指導の中で植田先生が目指したものは「流麗な速記文字」「各法則間の矛盾の排除」でした。植田先生の研究は高校教員になる前の4年間における新聞社での実務速記者としての経験と、高校教員として指導する傍ら、地元の実務速記を手がけるなどして単に机上の空論ではなく、実務から割り出した研究であることと、その速記教育法・速記教育課程(カリキュラム)の開発でした。つまり、何をどのように教えるかということです。この方面の研究は速記界では、ほとんど行われておりません。
 当サイトでは「速記法則の部屋」で断片的に植田先生の昭和45年以降の研究をご紹介しておりますが、研究の根底をなす昭和26年の「中根式速記法原理」、昭和44年に速記部で指導された部員のノートを見なければ、その正しい評価ができません。
 
「法則的な研究」
1.50音中(テ・ス・ト)の特定符号の新設。
2.拗音中(シュ・ショ・キョ・チョ・リョ・キョー・ショー)の特定符号の新設。
3.特定N尾音記法の新設。
4.○ク、○キ音特定符号の新設。
5.順記インツクキの開発。
 逆記インツクキとの共存。従って中根式伝統のサイン助詞符号の使用が可能。
6.特殊漢音縮記法の開発 A+B=AB
 逆記法、順記法。
7.助詞符号のつけ方の研究。
 円系符号は、直線に対しては正側につける。
8.訓音換記法廃止に伴う上・下段の廃止。
9.スミニヒカリシ記法、ゾーン記法、SM、SF記法の研究。
10.縮記法・略記法等々の新設並びに整理。
11.加点助動詞記法と、〜マス・〜マシテ・〜マシタの書記位置の整合。
12.運筆の研究(上・下段廃止によって使える)
等々法則的な研究は数え上げればきりがありません。
 昭和26年から研究を開始されて以来、今日まで54年間、黙々と実務の合間に研究が続けられてきました。
 植田先生の体系は「1つの言葉に対して複数の法則を運用する」書き方が最大の特徴です。
 
 

■ 2005/05/10 (Tue) 中根式内の研究時期
 武部良明著「日本速記方式発達史」の94〜98ページで中根式内で研究された時期が推定できます。
 
(前略)
 森卓明氏によって昭和4年超中根式の一部が公開される。その基本文字の方は第45図(※速記基本文字総覧「超中根式」を参照)のごとくで、原始中根式との極端な変化は認められず、専ら基本線の変更にとどまっている。
(中略)
 超中根式の特徴はその基本文字には存せず、専ら後章で扱う縮字法に関する研究と見なければならない。
(中略)
 濃淡の区別は、国字氏も言っているごとく、可能である。初歩のうちから癖をつければ必ずできる、結局中根式の遅れているのはウ列の加点線ではなかろうか。森氏も正式なものとしては中根式に則ったが「速記研究」第95号(昭和7年8月)においては「いつまでも不便を忍びつつ旧式の使っておることは考えものであるから、どこまでも速記文字は速記する道具であるという見地に立って実用に即して徐々に改変を加え覚えやすく書きやすくその方式の簡単にして実用上最も適するようにしていくということは何式を奉ずるものであるというイデオロギーにとらわれざる限りこれは我らの常に心しておくべきことであると思う」といい、1つの試案として第51図(※速記基本文字総覧「中根式表象法」を参照)のような半円形を挙げたこともある(ウ列改良案及びワ字改良案)。
 中根式を学んだ浜田喜一氏も、昭和8年「速記研究」100号(※昭和8年1月号と推定)に試案として第52図のような長い線(ア列の3倍)を用いたのである。
 一方において実務に従事する中根式の速記者は、決してこんなことで満足するはずがない。そのためににそれぞれ自己流の改変を平気で行うことになる。
 
と書かれております。中根式内では昭和6年12月(※森卓明著「超中根式速記法」の発行)から昭和8年1月(※推定)が重要なキーポイントになると思います。
 中根速記学校内では池田正一先生(昭和7年4月入学、昭和7年9月に中根速記学校卒業)が有志を集めて「研究会」を設立されたのは昭和7年10月ごろと推定できます。
 中根式を修め、中根式の教鞭までとった国字常弘(本名・古久保峰吉。寿光式の国字寿光とは同一人物)さんは、中根式に満足せず大正8年から新方式の創案に着手しました。赤貧洗うがごとき6畳の矯屋にこもって苦闘研究10数年、初めて自然線の原理を取り入れて昭和6年2月11日に国字式を発表されました。
 国字式から山根祐之さんが昭和26年8月10日正式に山根式として発足されました。
 中根式を全面的に否定した国字常弘さんと、中根式の基本文字を残して法則の研究をされた森卓明先生とは対照的です。
 
 

■ 2005/05/10 (Tue) 森卓明先生の研究について
 5月10日は中根式創案発表の日ですので、中根式関係についてご紹介いたします。
 
 森卓明著「超中根式速記法」の発行は昭和6年12月5日発行ですが、「序」は昭和6年8月に書かれておりますので、昭和6年8月に「超中根式」を発表されたと推定できます。
 私は昭和52年に彦根市の西澤政之先生(中根式速記協会滋賀県支部長)と京都の森卓明先生に手紙でお聞きしました。
 森先生に書簡で「森式か、中根式森派かのどちらか」についてお聞きしました。
 森先生の書簡では、
 「私の式ですが、みんなが森式と言われるのは勝手ですが、基本文字そのものはほとんど中根式です。ただ省略文字がユニークなので、その点森式と言われればそれでよいと思われます」
と書かれております。
 森先生ご自身が森式でもよいと認められております。
 西澤政之先生は、
 「森先生の方式のことですが、これは適確なことは、ご本人に聞かないとわかりませんが、小生の見方では、中根式→超中根式→森式とはならないと思います。超中根式時代、東京で全国議事記録事務研修会に出席した際、日本速記協会が配付された資料の中に中根(森)式という表現があったことを記憶しておりますが、当を得ていると思っていました。
 それから、現代国語表象速記法も超中根式に入るかというお尋ね、ごもっともですが、現代国語表象速記法も基本文字はス・ヌ・ムを除いて中根式そのままですから、そのとおりと言えますが、書かれた文章は超中根式を習った人でも読めませんから、イエスというわけにはまいりません。
 ですから、中根式→超中根式→現代国語表象速記(森)式というふうに小生は解釈しております。カッコで森と入れたのは、他の式がほとんどその創案者の名前を冠しているから、一般人にもわかりやすいようにとのことです。(中略)
 今、資料がないので適確なことは申し上げられませんが、記憶にあるものから拾い出してみると、基本文字の改変、例えば加点文字のウ・ス・ヌ・ム、またワをかなり長い間使っておられたようです。(※速記基本文字総覧「中根式表象法」を参照)表象法として最大線(四種線)略字を飛躍・発展させて1〜5種線を使い分けて、数音のときには10数音を1線であらわす。あるいは、動詞の表象法等々があろうかと思います。(※「5種線」という表現ではなく、森先生は「スーパー・ライン」及び「S.L」と呼ばれております)
 こういう研究・実践の成果を基にして最終的に統一されたのが現代国語表象速記法ということになろうかと思います。」
と書かれております。
 また森先生の書簡では、
 「超中根式から表象法の間には略画法があります。これはインツクキ等の符号をなくして、線の組み合わせによってあらわす方式です。逆記の符号をとったので、いよいよ順記の表象法になるわけです。
 あなたのお書きになった50音表を使っていたこともありますが、(※速記基本文字総覧「中根式表象法」を参照)今は一応ウ・ルは(速記基本文字総覧「森式」を参照)としております。基本文字中、サ行とタ行はどうしてもいただけません。そこで表象法では、これはほとんど使わずに別の方法で表象することにしました。」
と書かれております。
 森先生は「日本の速記」昭和17年8月号に「略画法の原理とその応用」について発表されております。
 「略画法」は、当サイト「速記法則の部屋」“森卓明先生の体系”を参照してください。
 濁音は濃線
 母音表象
    初音  中間
ア、オ 上段  周辺分離
ウ   中段
イ、エ 下段
 父音表象
    初音   中間
カ行k 小カギ  短交差
サ行s 大 円  大結び
タ行t 結び小円 尾部空間
ナ行n 小 円  小結び
ハ行h 大カギ  長交差
マ行m 小 円  小結び
森 卓明著「現代国語表象速記法」19ページより。
 
 

■ 2005/05/07 (Sat) 拾い読み 書かない符号
 西来路秀男著「衆議院式 標準速記法原理」(衆議院速記者養成所研究室 昭和25年5月15日発行)の2〜5ページに「第1編 基本論」“第1章 基本理念”が掲載されております。
 (前略)
 つまり、50音符号で連綴していくのが原則でも何でもなくて、従来「略字」(略符号)とか「縮字」とか「省略」とか言われているものこそ速記の本体であり、本質である。「一字一句漏らさず書く」というのは、でき上がった速記反訳文のことをいうのであって、これまでの過程である音声を聞いて符号で書き取る記音行為(符号化)の方は、それとは全く反対の法則が働いているのである。
 もっと言えば、我々の知性で類推し得る限り、できるだけ多くの音韻をひとまとまりの符号として簡単化し、無形化するのが原則であって、それのできないときだけ、やむを得ず原始的な素材符号で連綴する。それはまさに「やむを得ざる悪」(necessary evil)である。……というのが新しい速記理念である。標準符号はこの理念のもとに組織され、運用されているのである。
 逆説的な言い方をすれば、書いて書いて書きまくるのが速記ではなく、できだけ書かないで読めるようにするのが速記である。速記の極致は「書かないで読むこと」にある。なぜなら、書かないで済ますほど速い書き方はないから……。これをわたしは「書かない符号」「見えない符号」の活用と言っている。速記の理想は「書かない符号」「見えない符号」(けれども「読める符号」)の最大限の活用にある。「書かない符号」「見えない符号」の活用(書かないで読むこと)ができるのは、発言の連続に対応する符号の連続性(前後関係とが「場」とか)を極度に利用し、既得の知識によって類推判読をするからである。それだけ標準速記法は頭脳の働きに依頼する度合いが強いと言える。
 (後略)
 「速記文字は書かない方が速い」ということで、川田秀幸著「ウツシングのすすめ」(中根速記学校出版部 昭和42年5月1日発行)で紹介されております。
 「15人の乗組員は    である」
 前の「15人の乗組員は」という一群の速記符号と、後の「である」という符号の間は空白である。これは今の「書かない速記術」であって、この空白の部分は「速記符号が、どこへ行ったのかわからない」――ということから、「15人の乗組員は行方不明である」と読ませるのである。
と書かれており、その後は「略記法」の説明になっております。
 また、中根式以外でも「彼は    になった」という文例もあります。
 果たしてこのように速記文字を1単語分の空白をあけて「行方不明」と読めるのでしょうか。
 速記文字が抜けないで書いている状態はともかくとしても、ギリギリの状態で書いている場合には速記文字を抜かして書いておくこともあります。
 下手をすれば反訳で見落とす可能性もあります。何も書かないで空白にするよりも「○」か何か書いていた方が無難です。
 
 

■ 2005/05/05 (Thu) 資料番号のつけ方
 私が作成した速記関係の資料には〔○○−□−△△〕という記述を表紙につけております。
 ほとんどの方はこの意味を知らないはずです。
 「○○」の部分は資料作成年度を表記しております。○○の部分を見ただけでいつごろ作成したものかわかります。私は西暦を使用しませんので、全て元号で表記します。
 「□」の部分は内容の区分です。今まで使用しているのは「S」「K」「P」「H」「N」「L」「W」「pl」です。最近は「D」も検討しております。
 S=Stenography 及び Shorthand〔速記〕
 K=Kurzschrift〔速記〕
 P=Phonography〔速記〕
 H=History〔歴史〕
 N=Novel〔小説〕
 L=Literature〔文献〕
 W=Writing〔著作〕
 pl=plan〔計画〕
 D=Database〔データベース〕
です。
 「△△」の部分は内容区分の通し番号です。
 例えば「S」シリーズですと、作成年度に関係なく「46−S−1」から「49−S−10」まであります。ちなみに「49−S−1」という資料番号は存在いたしません。
 この資料番号の3ヵ所を見れば「作成年度−内容区分−通し番号」が全てわかるという「代物」です。
 当サイトに掲載している「速記基本文字総覧」は「17−D−1」です。
 平成17年度に作成したデータベースの1冊目という表示になります。
 またページ数が多い場合には、内容を第1部、第2部と分けることもあります。
 PDF版でも容量が大きくなる場合には「枝番」をつけます。
 「10−K−23−1」「10−K−23−2」は、速記法編、資料編を分割した場合です。
 例外的に「改訂版」でも枝番をつけます。
 「59−K−5−2」は改訂・増補版です。数年後に「改訂・増補版」を作成しても、最初の作成年度をそのままにして「枝番」をつけることもあります。
 通常の「改訂・増補版」では通し番号を変えていきます。
 「11−pl−1」「11−pl−2」「12−pl−3」は、速記指導者養成計画案ですが、改訂1版、改訂2版の場合もあります。
 
 

■ 2005/05/03 (Tue) 「道楽」について
 小学館「日本国語大辞典」(昭和50年3月1日発行)で「道楽」(どうらく)を調べると、
@仏語。仏道修行によって得た悟りの楽しみ。法悦の境界。
A本職以外の道にふけり楽しむこと。趣味として、ある事柄を楽しむこと。
B品行が悪いこと。身持ちがよくないこと。だらしがないこと。特に、女色や博打などの、遊興にふけり、おぼれてしまうこと。放蕩すること。また、その人。道楽者。放蕩者。
C物好きであること。またその人。好事家。
Dとんでもないこと。並はずれていること。
 
「道楽の生涯学習」
 lifelong learning for life work
http://www.katch.ne.jp/~komp-ken/
というホームページがあります。
管理人は愛知県安城市の汐満健一さんですが、公民館主事をされていた生涯学習1級インストラクター(生涯学習)の方です。
 
トップページに
 「道楽」という言葉に「放蕩」という意味を与えてしまったのは 負の遺産である。
 今の時代には、じっくりと道を楽しみながら 歩んでいく余裕が必要ではなかろうか。
と書かれております。
 私も小学館「日本国語大辞典」のBのように「放蕩」という意味を与えてしまったのは負の遺産であると思います。
 またAの「趣味として、ある事柄を楽しむこと」とは、かなり違います。
 「趣味」は、飽きたらいつでもやめることができるものであり、執着心がありません。
 「道楽」は、飽きることなく奥が深くその道を楽しむことです。ライフワークです。
 「道楽者」は今の言葉でいう「オタク族」です。
 言葉の意味は時代とともに変化するものでなければなりません。もっとよい意味をつけ加えてもらいたいものです。
 
 

■ 2005/05/02 (Mon) 中根式速記法資料編の補足説明
 「中根式速記法資料編」は各速記法則体系ごとに作成したものです。
 
 「中根式速記法資料編」「中根式速記法体系」は、表裏一体の関係にあります。
 「中根式速記法体系」は、中根式における主な各速記法則体系の縮記法及び略記法を1冊にまとめております。
 
 「中根式速記法資料編」は、各速記法則体系ごとに1冊ずつまとめております。
 中根正親の体系
 中根正世の体系
 中根康雄の体系
 中根速記学校の体系1〜3
 森 卓明の体系1〜3
 森下 等の体系
 稲垣正興の体系
 金沢二水の体系
 長岡商業の体系
の13冊ですが、このシリーズも中途半端な形で終わっております。
 植田 裕の法則体系について書きますと
 「中根式速記法原理(符号編)」(60−K−6)……植田 裕の体系1
      昭和60年1月12日発行 B5 88P 5.21MB
 「中根式速記法資料」(曲線カ行・斜線タ行)(61−K−7)……植田 裕の体系2
      昭和61年1月12日発行 B5 46P 2.03MB
 「中根式速記法」(47−S−4)……植田 裕の体系3
      昭和47年1月1日発行 B5 87P 3.95MB
に相当しております。
 
中根式速記法資料編(中根正親の体系)1巻(61−K−9)
昭和61年5月10日発行 B5 24P 1.11MB
 中根正親著「中根式日本語速記法(中根式速記法講解)」(大正5年2月発行)と大正8年8月22日から6日間にわたる「第4回 中根式速記法講習会」のテキストを中根正親先生の体系としてまとめました。
 また、大正14年12月1日に発行された本山桂川著「応用速記術の秘訣」(東京崇文堂)は、中根正親先生の体系です。この書は昭和16年4月25日発行の12版まで現物確認しております。
 本山桂川著「応用速記術の秘訣」は「第4回 中根式速記法講習会」のテキストと大体同じであり、同方向の直線が続くときには「切り線」を採用しております。
 
中根式速記法資料編(中根正世の体系)2巻(61−K−10)
昭和61年5月10日発行 B5 40P 1.69MB
 中根正世著「通俗中根式速記法」(昭和2年11月15日発行)及び中根正雄著「中根式速記通信講座」(昭和44年3月5日発行)を中根正世先生の体系としてまとめました。昭和2年から昭和44年までは42年間の開きがありますが、大きな違いは「数字の位取り」及び「超最大線」の追加です。昭和27年4月発行の「中根式速記」には「ウスヌムルの代字」が追加されております。
 
中根式速記法資料編(中根康雄の体系)3巻(61−K−11)
昭和61年5月25日発行 B5 52P 2.25MB
 中根康雄著「速記マスターノート」(上巻、下巻)及び「全国速記検定試験5段合格への道/プロ検定1級合格への道」を中根康雄さんの体系としてまとめました。中根康雄さんの体系には中根速記学校の体系、稲垣正興の体系、植田裕の体系が入っております。中根正世先生の体系とは異なりがありますので別にしました。
 
中根式速記法資料編(中根速記学校の体系1)4巻(61−K−12)
昭和61年6月15日発行 B5 66P 3.12MB
 昭和45年4月から中根速記学校で池田正一先生が本科前期(昭和44年4月15日〜9月30日まで)指導された体系をまとめました。
 中根速記学校で指導された体系は、中根速記学校卒業生以外には中根式関係者の間で余り知られておりません。同じ先生に指導を受けても時代とともに部分的な異なりが見出せます。
 例えば昭和43年10月入学生は江森武先生に指導されましたが、昭和44年4月入学生は池田正一先生に指導されております。指導する先生によつて体系の異なりが見出せます。
 中根速記学校の教科書は中根洋子著「中根式速記の基本教程」が1冊です。この教科書は中根速記学校の通信教育「本科」で使用されていた教科書です。
 中根速記学校では教科書として「中根式速記の基本教程」を使用し、教科書以外の省略法は各先生が板書で指導しております。省略法を指導して1週間は省略法を使用できるように速度を落として、速記文字が出てくるたびに口頭で説明されておりました。
 9月末までにほとんどの省略法が終わっております。夏休みが40日ぐらいありましたから実質4ヵ月半ぐらいで覚えたことになります。
 本科生時代のノートには、この資料のように詳しく書いておりませんが、基本形+変化形で指導を受けました。
 
中根式速記法資料編(中根速記学校の体系2)5巻(61−K−13)
昭和61年8月3日発行 B5 61P 2.66MB
 昭和52年4月15日から中根速記学校で江森武先生が本科生(昭和52年4月15日から昭和53年3月末まで)指導された体系をまとめました。
 池田正一先生と江森武先生とは体系的に異なりを見出せます。
 池田正一先生は「冠上法」「抄下法」「接触動詞」を指導しております。江森 武先生は「冠上法」「抄下法」「接触動詞」を指導しておりませんし、また「交差法」についても異なりを見出せます。
 
中根式速記法資料編(中根速記学校の体系3)6巻(61−K−14)
昭和61年8月10日発行 B5 49P 2.10MB
 昭和49年4月15日から中根速記学校で西宮純一郎先生が本科生に指導された体系をまとめました。
 私も本科後期(昭和44年10月1日から昭和45年3月20日まで)で西宮純一郎先生から指導を受けておりますので、西宮純一郎先生の体系を知っております。
 「加点インツクキ法」等が欠落しておりますし、省略法が少ないように思います。
 池田正一先生、江森武先生、西宮純一郎先生の体系に異なりを見出せますので中根速記学校の体系を1〜3に分類しました。
 
中根式速記法資料編(森卓明の体系1)7巻(61−K−15)
昭和61年8月15日発行 B5 49P 2.05MB
 森卓明著「超中根式速記法」(昭和6年12月5日発行)をまとめました。
 「超中根式速記法」が発行された当時の中根式速記界は、中根正世著「通俗中根式速記法」(昭和2年11月15日発行)が、中根式では最も新しい法則体系でした。
 4年後に「超中根式速記法」が発表されると、各地の中根式関係者に大きな影響を与えることになり、超中根式から取り入れられました。
 中根速記学校では池田正一先生が中心になり7年10月ごろに研究会グループができ、独自の研究が開始されました。中根速記学校では和語縮記法の一部分を略字程度に幾つか取り入れた程度で、超中根式の全体系を取り入れませんでした。
 私は「超中根式速記法」の発表により、中根速記学校の体系にも大きな影響が与えられて研究の必要性に迫られたと推測しております。
 超中根式が発表された時期と中根速記学校で研究グループができた時期が符合しております。
 
中根式速記法資料編(森卓明の体系2)8巻(62−K−16)
昭和62年8月10日発行 B5 67P 3.12MB
 森卓明著「中根式表象法通信教室」(昭和32年7月発行)をまとめました。
 昭和6年12月の「超中根式速記法」の発表から26年間経過しており、その間に新しく発表された省略法を見出せます。
 超中根式から発展して中根式表象法に移行した体系は従来の中根式を習得した人にとっても参考になると思います。
 
中根式速記法資料編(森卓明の体系3)9巻(62−K−17)
昭和63年1月12日発行 B5 84P 4.61MB
 森卓明著「現代国語表象速記法」(昭和52年6月1日発行)をまとめました。
 「現代国語表象速記法」は、社団法人日本速記協会機関誌「日本の速記」(昭和44年3月号)にその概要が発表されております。
 「現代国語表象速記法」は、中根式の系統というよりも、完全に森式といっても過言ではありません。
 「中根式速記法資料編」として参考のために「森卓明の体系3」としました。
 
中根式速記法資料編(森下等の体系)10巻 (63−K−18)
昭和63年1月17日発行 B5 38P 1.53MB
 池田正一/中根洋子/森下等著「中根式速記」(昭和43年5月28日発行)をまとめました。この書は共著になっておりますが、中根速記学校の体系とは異なっております。森下等先生の体系です。
 この「中根式速記」は、高等学校商業科の実習科目「速記」の文部省指導要領に従って作成したものです。
 高校生の授業用教科書としてまとめられているので、森下 等先生の全体系が掲載されていないと思います。
 
中根式速記法資料編(稲垣正興の体系)11巻(63−K−19)
昭和63年8月15日発行 B5 58P 2.20MB
 稲垣正興著「学生の速記」(昭和44年4月1日発行)をまとめました。
 この書は「兵庫県実業教育協会商業部会推薦」であり、兵庫県の高校では稲垣正興先生の体系が指導されております。初版は昭和27年5月1日発行の「学生の速記」は、著者・発行者とも「兵庫県実業教育商業部会」になっております。
 稲垣正興先生は中根速記学校の卒業生であり、中根速記学校の体系と共通した部分もあります。
 稲垣正興先生の体系は関西地区の学生速記界を中心に広まっており、実務者も出ております。
 稲垣正興先生の体系は愛知大学速記研究会(昭和63年3月末で廃部)及び学習院大学輔仁会速記研究会(平成3年ごろから早稲田式)にまで影響を与えております。
 
中根式速記法資料編(金沢二水)12巻(1−K−20)
平成1年5月21日発行 B5 59P 2.35MB
 下谷政弘/久田美代子著「中根式速記研究書」(昭和36年10月20日:石川県中根式速記研究会発行)をまとめました。
 石川県中根式速記研究会は石川県立金沢二水高校速記部と金沢女子短大高校速記部の連合です。金沢二水高校速記部(現在廃部)の下谷政弘さんと金沢女子短大高校速記部(現在廃部)の久田美代子さんが作成しました。
 金沢二水高校の速記部は、昭和35年4月に北川暉基さんが設立しました。北川さんは卒業後学習院大学へ進学して、昭和38年6月15日に速記研究会を設立し、初代委員長として速記研究会の基礎づくりをされました。
 金沢二水の体系は、学習院大学輔仁会速記研究会へそのまま引き継がれました。学習院大学輔仁会速記研究会の「中根式速記教程」(昭和44年10月3日発行)の体系に見出せます。また、中根速記学校の体系、稲垣正興の体系が採用されております。
 
中根式速記法資料編(長岡商業)13巻(1−K−21)
平成1年7月2日発行 B5 47P 1.92MB
 新潟県立長岡商業商業高校速記部で昭和50年3月に作成されたテキストと速記部員のノートからまとめました。
 長岡商業速記部は、全国大会や選抜大会で過去において何度か個人、団体で優勝しておりますし、卒業生も各市議会等におります。
 
 速記関係の資料作成方法をある一定の形にパターン化することも必要です。
 
 

■ 2005/04/30 (Sat) 速記法則の部屋
 「速記法則の部屋」の“各速記法則体系”で、中根正親の体系、中根正世の体系、中根康雄の体系、中根速記学校の体系(池田/江森/西宮)、森 卓明の体系1〜3、森下 等の体系、稲垣正興の体系、金沢二水の体系、長岡商業の体系、吉川欽二の体系、武部良明の体系、西澤政之の体系、学習院大学の体系、植田 裕の体系、中根式の基本体系、中根式の標準体系についてご紹介しております。
 「速記法則の部屋」補完資料として、PDF版「中根式関係資料」を作成いたしました。
 中根正親の体系、中根正世の体系、中根康雄の体系、中根速記学校の体系1〜3、森 卓明の体系1〜3、森下 等の体系、稲垣正興の体系、金沢二水の体系、長岡商業の体系、植田 裕の体系1〜3及び私が使用している体系(中根式速記法教程、中根式速記法教範 速記法編/資料編、中根式速記法教範 速記法指導編)等23ファイルを収録しております。
 PDF版「中根式関係資料」は「掲示板」で御案内して速記関係者へ特別配付させていただきました。B5版で2,143ページ、容量が約112MBありますので、ホームページへ各速記法則体系の完全な図版を掲載するには容量が大きすぎます。
 「中根式関係文献」でご紹介している、「中根式速記法資料編」1〜13巻は、各速記法則体系を1冊ごとにまとめたものです。
 「中根式速記法体系」改訂版は、中根正親の体系、中根正世の体系、中根速記学校の体系、森 卓明の体系、稲垣正興の体系、植田 裕の体系の6体系を1冊にまとめたものです。
 「中根式速記法資料編」と「中根式速記法体系」は表裏一体の関係にあります。
 現在、PDF版「中根式関係資料」は特別配付作業が完了いたしましたので「絶版中」です。しばらく「再版」の予定はありません。
 
 

■ 2005/04/22 (Fri) 速記講座 ウ列加点文字の処理
 中根式ではウ列加点文字を処理する方法として、2つの方法があります。
 
1.「代字」を設ける。(順記法)
2.「縮記法」を設ける。(逆記法)
※縮記法には逆記法と順記法があります。植田 裕先生は逆記法と順記法を併用されております。
1.の代字は、ウ列における加点文字のかわりに最大線(浜田案)、最小線(中根正世先生)、ウ列無加点文字(森 卓明先生)の方法です。
 年代的には森 卓明先生(昭和7年8月)、浜田喜一さん(昭和8年4月)、中根正世先生(昭和27年4月)です。
2.縮記法は、ウ・ス・ヌ・ム・ルを逆記法で縮記する(中根速記学校、植田 裕先生)方法です。
 年代的には中根速記学校(昭和16年3月)、植田 裕先生(昭和26年11月)です。
 なお、中根速記学校では昭和16年3月に発表されたのは北村薀雄先生ですが、戦後は江森 武先生に引き継がれました。
 池田正一先生が機関誌の昭和24年8月号に紹介されておりますが、実際に指導をされた年代は確認しておりません。
 戦後の中根速記学校では、同時期に池田正一先生と江森 武先生の「ウ・ス・ヌ・ム・ル省略」が指導されました。
 中根式全体では「代字」と「縮記法」では、「縮記法」の方が広く使用されております。
 「縮記法」の方法は、各地によって書き方に多少の違いがあります。
 他式から基本文字の濃淡・加点文字について批判されておりますが、中根式では基本文字に濃淡・加点があっても「濃淡表示の別法と便法」及び「ウ・ス・ヌ・ム・ル縮記法」で処理しますので批判の対象にはなりません。中根式の裏技を知らないだけです。
 当サイトへ掲載している速記文例を見てもわかるように、私は濃線を使用しておりません。
 なお「濃淡表示の別法と便法」及び「ウ・ス・ヌ・ム・ル縮記法」は、一般的な教科書類には掲載されていない法則です。
 
 

■ 2005/04/18 (Mon) 文献紹介 ウ列無加点文字
 森 卓明著「中根式表象法 速記通信教室」(京都速記研究所 昭和32年7月?)に「ウ列無加点文字について」説明されております。
 
83.ウ列無加点文字について
 昔から速記方式創案者が50音をつくるについて一番困ったのが、ウ列である。50音の構成はなるべく簡単な方式によらなければならんと同時に、50音の字形もなるべく単純にする必要がある。そこで中根式においては、ク、ツ、フ、ユの頻度の高い音を除いては、オ列に加点という方法を取ったのである。
 さて実際の場合、綴字後の加点はかなり能率に影響する。相なるべくは無加点文字が欲しい。さればといって簡単な簡単な加点文字も捨てがたい。よって最小線や最大線を用いた人もあったが、線の長さの変化はもっと効率的な利用法を考えなければもったいない。
 そこで考えついたのが、半楕円や半円形である。半楕円はアメリカのクロスに、頻度の高いアルファベットに用いられておるし、半円はフランスのデュプロワイエ式に用いられておるのを見る。
 
84.ウ列無加点文字の割り出しと配分
 ウ列無加点文字も相なるべくは、加点文字と幾分関係を持つ方が覚えやすくもあり、応用もしやすい。よって第二基本線もその心して配分することがより効果的である。
 ウ列加点文字は連綴の場合より、単独に用いる場合の方が便利である。

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