社団法人日本速記協会 第147回速記検定〔平成16年1月〕 1級問題 〔問題文〕分速320字×10分間 @ まず初めに、知的財産権についてお話をしたいと思います。  皆さんは、コピー商品という言葉を聞いたことがありますか。これは、本物と そっくりにつくられた、にせもののことであります。このような商品は、とても 安く買うことができます。しかし、本来、アイデアを出して何かをつくり出すと いうのは非常に手間がかかることなのであります。私たちがコピー商品を買って しまうと、本物をつくった方(ほう)は、その苦労が報われないばかりか、新た に物をつくる意欲をなくしてしまいます。このようなことを防ぐために知的財産 権というものがあるのであります。  皆さんも、特許でありますとか著作権という言葉を目にしたことがあると思い ます。これは、発明などに独占的な権利を与えて保護しようというものでありま す。近年、この知的財産権が大きくクローズアップされるようになってきました。  例えば、特許などは、他人が使うことを認めて利用料を取ることもできます。 一例を挙げますと、アメリカのあるコンピューター会社は、そうした特許の利用 料を取ることによりまして、一年間に千二百億円もの利益を得たそうであります。 米国全体で見ると、そのような利益は三兆円以上にもなっています。  一方、この権利を侵害してしまったときには、多額の賠償金を払わなければな りません。日本においても、このようなケースで百億円を超える支払いを求めら れた企業もあります。近ごろ、こうした訴訟はふえる傾向にありまして、賠償金 もどんどん高くなってきています。ですから、物をつくるときには、だれかの権 利を/A侵害していないかどうかについても十分調べる必要があるわけでありま す。  こういった知的財産権にかかわる訴訟というものは、今後とも増加していくと 思われます。そして、それに対応して裁判制度の改革も必要になってくるであり ましょう。このような裁判には、今まで以上に迅速性と専門的な知識が求められ ます。このため、現行の制度では限界だという声が上がっているのであります。 アメリカには既にこのような訴訟を主に扱う裁判所がありますが、日本にはまだ そうしたものがありません。ですから、日本でも同じようなものができないかと いうことについて、現在、検討が進められています。あわせて、そうした問題に 詳しい法律家の育成ということも緊急の課題となってまいります。  それからまた、知的財産権は、その活用も大切であります。我が国の大手メー カーの中には、保有している特許をインターネットで公開しているところもあり ます。こうすることによって、中小企業でも新しい技術を創造するチャンスが生 まれます。そして、開発費を大幅に減らすことができるのであります。  そういうわけで、知的財産権は、もはや国全体でその保護と活用に取り組んで いかなければならないものなのであります。  次に、制服についてお話をします。  制服というのは、例えば学生服のように、その人の社会的な立場をあらわすも のであります。警察官や看護師さんなどのように職業をあらわすものもあります。 あるいは、男性の背広も広い意味での制服と言えるかもしれません。大多数の皆 さんが何らかの制服を着た経験があると思います。ですから、制服に対する思い も/B千差万別なのではないでしょうか。  きょうは、その中でも、特に学校の制服について述べていきたいと思います。  ある学校で制服について議論が起こりました。そこで、生徒会が中心になって アンケートをとったわけであります。さまざまな意見が出されまして、まとめる のに大変だったということであります。しかし、個性であるとか自主性について 考えるいいきっかけになったそうであります。  それでは、まず賛成の意見から紹介していきます。一番多かったのは、毎朝着 ていく服に迷わなくてもよいし、経済的にも助かるというものであります。また、 学生としての自覚を持てるし、統一がとれて一体感も出てくる、こういうものも ありました。  一方、反対意見としては、個性や自主性を奪っているという意見が多くありま した。つまり、服装は個人が決めることで、強制すべきではないということだと 思います。また、いつも同じものを着るのは余り清潔ではないとの声もありまし た。  そのほかには、制服でも私服でも好きな方を選択できるようにしておけばいい のではないか、こんな意見も出ました。あるいは、一週間の中で一日だけ自由に してはどうかというおもしろい提案もあったようであります。  このように、いろいろな意見が出されましたが、ともかく学校側が一方的に押 しつけるのはよくないというのが最終的な結論のようであります。それぞれの長 所を認め合った上で、よりよい方向を模索していくことが大切だと思います。  ところで、制服に限らず、私たち日本人は、子供のときから、みんなと同じと いうことを求められてきているのではないでしょうか。ですから、人と違ってい ると何となく不安になります。/Cそして、自分を積極的にアピールすることが 余り得意ではありません。これから国際社会の中で活躍していくには、そうした ことが不利になることも考えられます。 そこで、自己表現のトレーニングとし て私服というものを考えてみてはどうでしょうか。人と違っていてもいいわけで ありますし、自分と違っているものを認めることも大切な勉強だと思います。  いずれにしても、服装はその人の人格をあらわすとまで言う人もいます。本人 はもちろんでありますが、周りの人にとっても気持ちのよいものであるのが望ま しいと思います。そして、制服にしても私服にしても、自分というものを十分に 表現できれば、すばらしいことだと思います。  最後に、コンビニエンスストアについてお話をしたいと思います。  皆さんよく御承知のように、コンビニエンスストアというのは、文字どおり、 便利さを売り物にしている店であります。それは、いつでも買えるという時間の 便利さであります。また、すぐ近くにあるという距離の便利さもあります。それ から、いろいろなものがそろっているということも利用する人が多い理由かもし れません。  このような店の形態は、海外から取り入れられたものであります。日本に登場 したのは今から三十年ほど前であります。そのころは、買い物をするところとい えば、駅の周りや近所にある商店がほとんどでありました。したがって、これを 国内で始めた企業は、日本の社会に受け入れられるかどうか不安だったそうであ ります。しかし、こういうスタイルは、物すごい速さで私たちの生活の中に溶け 込んでいきました。そうした状況に至るまでには、さまざまな工夫があったわけ であります。  まず、商品の管理について、/Dそれまでとは違う方法をとりました。もとも と、このようなタイプの店は規模が小さいものであります。ですから、少しでも 多くの売り場を確保するために、在庫を保管しておくスペースを減らしました。 そして、商品一つ一つの動きを管理して、売れたものを必要な数だけ調達する方 式にしたのであります。こうすることによって、よく売れるものだけが店に並び ます。それが合理的な経営にもつながりました。ただ、そうすると、品物を小ま めに運ばなければなりません。そこで、同じエリアに店を集中させるなど、配達 の仕方も工夫をしていったわけであります。  それから、人々のライフスタイルの変化にも柔軟に対応しました。遅い時間に やってくるお客の要望にもこたえるために、生活必需品でありますとか調理済み の食品をそろえておくようにしました。  一方におきまして、品物を売るということ以外のサービスにも力を入れました。 公共料金の払い込みや、宅配便の取り扱いを早くから始めています。近ごろでは、 インターネットで注文した本などを受け取ることもできます。また、大学の受験 料や国民健康保険の保険料を納められるということで話題にもなりました。  さて、今後、コンビニエンスストアはどういう形になっていくのでしょうか。 家の近くにあるという利点を生かして、生活に関連するサービスを行うことが考 えられます。例えば、家事をかわりに行ったり、食事を届けるということもあり ます。あるいは、病院や学校など、今まで余り見かけなかったところにも店を出 せば、新しい需要も生まれてくるのではないでしょうか。  これからもますます私たちの生活に密着した形で展開していくことを期待した いと思うのであります。