話体の速記文例 話体1 このような土地の値上がりは、政府の景気対策と密接な関連があると思うので ございます。 ここ1、2年、住宅金融公庫の融資枠が拡大されており、民間ロー ンも緩和されまして、住宅建設が促進されているのでありますけれども、そのこ とが地価を刺激しているということも言えるのであります。 つまり、需要に供給 が伴ってきていないのであります。都心部のマンションの売れ行きが好調であり まして、マンション建設用地やミニ開発用地の競争が業者の間で激しいわけであ りますが、このことが地価の上昇に拍車をかけているのでございます。 〔第1図〕 話体2 このごろじゃ、速記っていうのは時代おくれだなんて言う人もあっちこっちに 出てきているけど、わたしはそうじゃないと思うんですよ。そりゃ、テープレ コーダーができてから仕事のやり方は随分変わりましたよ。だけども、テレコが 仕事を全部やっちゃうわけじゃないでしょ。速記符号を書いているのは自分だし、 原稿だって自分がつくらなきゃなんない。だのに、録音機が何でもかんでもやっ てくれるって錯覚しちまう人がいるんだなあ。最近。それにね、ほんとのところ、 速記ってもっともっと大きいものなんですよ。それがわかんないんですねえ。 〔第2図〕 書 体 私はこの面会日のさだめを頼りに石原先生を訪ねた。雨の降る5月のとある夕 べ、紹介者もなしに勇をこして玄関のベルをおした。出てきた女中に来意を告げ ると、玄関脇の小部屋に通された。やがて和服姿であらわれた先生に、哲学を勉 強したいので御指導願いたいとおそるおそる申し出た。先生はそれには直接答え られず、これまでにどんな本を読んだかと尋ねられた。そこで、英語、ドイツ語 で読んだプラトン、デカルト、カント、ショーペンハウエル等の書名を上げたと ころ、めがねの奥からじっと私を凝視していた先生はおもむろに口を開いて、シ ョーペンハウエルのものよりもっとカントを読めと言われた。 〔第3図〕 |