同列同方向の方式の元祖は林甕臣氏であり、明治22年に発表している。その後
は小谷式まで途中がないと思われていたが、昭和13年に櫻井ふさ氏により「飛行
ガナ」という「カナ」が飛ぶように速く書けるという意味だろうと思われる方式
が発表された。これは岐阜の蔵書家から教えていただいたものです。複画の傾向
が強い方式である。省略法の検討はしていないので、とりあえず基本符号のみ掲
載にした。櫻井ふさ氏の「飛行ガナ」の著作中には、キーボードの配列もあり、
「JIS配列」よりも優れている配列である。シフトに親指を使うことは当時の
タイプライターでは無理なのでそれを除くと、富士通の親指シフト配列と比べて
も遜色がない配列である。また点字の独自の案も掲げてある。これらは将来文字
コードとフォントがしっかりできた段階になったら自分でホームページを作って
説明をしたい。できるかどうかはあまり自信がないが。
なんと同じ昭和13年に大兼政政義氏が京都で新しい方式を発表していた。ほぼ 単画に近い方式である。複画になっているのが「やゆよ」と「らりるれろ」の8 字しかない。後々の省略法がどうなっているかは、よく読んでいないことと、第 2巻以降がないのでわからないが、「ら行」は和語が語頭に来ることがないし、 語中や語尾も「ら行」省略を使えれば基本文字を使う必要が少なくなるはずであ る。「や行」は3文字しかなく、ほかの行に比べて「や行」の頻度は非常に少な い。小さな「ゃゅょ」は拗音での使用は相当あるが。 これらの点を考えていく と大兼政政義氏の方式は基本符号は相当優れているといってよい。これが完全な 単画になっていれば「いうきくちつん」の省略法をサインだけで作ることが可能 になるのだが、もう一息の所まで来ていた。 この大兼政政義氏の方式は日本速記発表120周年の直前まで知られていなかっ た。国会図書館では2002年くらいに公表された。それまであったものが眠ってい たのか、国会図書館でもようやくそのころに納入されたのかはわからない。 これら2つの方式が本の発表だけに終わったのか少しでも教育されて速記がで きる人が出たものかが知りたいものである。 |
林甕臣原体 | 林甕臣実用体 | 桜井ふさ 飛行ガナ | 大兼政政義 | 小谷征勝 | |
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あ列 | 0 | -45 | 0 | -45 | 30 |
い列 | 45 | 45 | -90 | -75 | -120 |
う列 | 0 | 0 | -135 | -105 | -30 |
え列 | -45 | -45 | 45 | 45 | -90 |
お列 | 0 | -45 | -45 | 0 | 0 |
・正確な角度が書いていない方式もあり、若干の誤差はある。
・林甕臣原体の「あ列」は田鎖式や早稲田式の「ま行」に相当
・林甕臣実用体の「あ列」は田鎖式や早稲田式の「ら行」に相当 |