「モリタ式」をご紹介いたします。
この速記方式についての詳細は、日本速記協会東海支部のH氏により、機関誌 『日本の速記』2011年4・5月号から4回にわたって、関係者への取材レポートを中心にした記事が掲載されております。 今回、このページを作成するにあたり、H氏の解説と当該方式で書かれた文例を提供していただきました。 なお、H氏はこれまで5つの速記方式で検定1級に合格され、第119回検定ではモリタ式を採用して文部大臣賞を受賞しております。
以下の文章は、H氏によるモリタ式の解説文です。 いわゆる「モリタ式」という言い方は、その解説書『速記の習い方』 (元衆議院記録部 副部長 谷田達彌著)が出版された際に、著者が名付けたものであります。 『日本速記方式發達史』(昭和17年・武部良明著)では「森田案」と記されています。 森田案を開発された森田章三氏(元々は佃式の名手)は、 衆議院速記者養成所の第14期から19期(昭和5年入所〜昭和10年入所)までの6期間の教授として活躍されました。 現業の速記者時代には、県議会・通信・新聞・国会等のおいて速記を駆使され、大正時代の「速記士法案」の中心人物としても相当活躍されたようです。 養成所での6期間のうち後半3期間(昭和8年入所〜昭和10年入所)は森田氏自身が開発された森田案を教授されるようになります。 養成所としては初めての、複画式から折衷式への一歩を踏み出した方式でありました。 実務者養成の国立の養成所でご自分が開発された符号を教授するにあたっては、相当思い切った決心が必要であっただろうと思われます。 しかし、森田氏は昭和11年に59歳で急逝されたため、その後養成所の方式は単画化されていくことになります。 昭和48年に出版された『速記の習い方』の著者谷田達彌氏は、森田氏の最後の生徒さん(昭和10年入所)になります。 『速記の習い方』では、森田氏の符号に多少の改変を加えているものの、森田案であることに変わりありません。
モリタ式速記法のサンプル … 林芙美子 『 下駄で歩いた巴里 』 より
三百フランは勿論家具つきですが、 おっそろしくチャチなもので、 洋服ダンスは今にもひっくりかえりそうに 木口がふんぞりかえっているし、 二つある椅子と来たら背が高くて、 足がどうしてもぶらんこして しまいます。 外に楽屋裏から引っぱり出したかの様なガタガタの円 テーブル、 これは少し猫背で、 墜落する姿で書き物しなければなりません。 さて、一番私の神経を焦々させるものは 七面に張ってある壁紙。 まるで安宿みたいに紅色の花模様で、 何かあわただしくなやましい。 木屑の浮いた日本の優しい壁の色こ そ なつかしくなってきます。 朝、 眼を覚しますと、 紅色の洪水。 目を閉じると瞼の裏まで紅く染まる。 ここで病気にでもなって文無 しになったら悲惨でしょう。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - モリタ式速記法のサンプル(moritashiki_sample.pdf … 18KB) EPSEMS ( エプセムズ ) 速記 … deme7のブログ http://ameblo.jp/deme7rmnc/ |