真剣勝負の中で
ここでまた、話は変わるが、「画数が少なければ速く書ける (!?) → ∴ 速
記法として優れている」 といったように単純には決して判断できないことは当
然であると思われる。
また、「五十音速記文字を初め、全体として覚えやすい速記法 → ∴ 速記法と
して優れている」 といったように、単純に判断ができるものではないことも当
然であろうと思われる。
この 「覚えやすさ」 に関しては、例えば 「A式」 の方が 「B式」 よりも
「覚えやすさ」 といった点で優れているようだけれど、覚えて使いこなせるよ
うになったあかつきには 「B式」 の方が使い勝手等々、いろんな意味で優れて
いるといった場合だってあるのかもしれない。
そして、このことに関しても結局は主観的な感覚が入ってくるということもあっ
て、速記法の評価は簡単ではないと思われるのである。
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「モリタ式速記法」 に関して、あくまでも私個人の主観的な感覚で述べると、
「折衷派」 の符号として各速記文字間の区別が比較的しやすく、五十音速記文
字も比較的覚えやすい速記法だと思う。
速度を出すためのいわゆる 「省略符号」 が各速記方式につきものであるように、
モリタ式でも省略符号は当然存在するが、それらを総合した実際に書かれる速記
文字全体のイメージが 「日本語のリズム、日本語の何か (!?) に合ってい
る」 という感じを私自身は受けている。 これは私の感覚である。
明治以来の伝統的な 「田鎖式系統の速記法」 であり、録音機に頼ることもでき
なかったぶっつけ本番、真剣勝負の中で現実に対応しつつ鍛え上げられてきた芯
の強さのようなものがモリタ式速記法には備わっているように思われる。
以上のような言い方はすべて当たっているとも言えない部分や語弊もあるかもし
れないし、誤解の元になるかもしれないことをも承知の上、あえて書き記した。
決して 「モリタ式速記法のすすめ」 などと言うつもりはなく、ただモリタ式速
記法についての私の所感そのものである。