速記講座【26】 「○ΛV」&「立っている者は親でも使え」

 「○ΛV」は後回し。ことわざの意味は、「親は大事に敬わねばならない」と いうことを前提にして、繁忙時には、たとえ敬愛する親でも、ちょっとしたこと なら手伝ってもらっても、罰当たりにはならないということだそうですが、現代 では元の意味が忘れ去られ、「だれでも使える者は、こき使えばいいんだ」とい う自分本位の解釈になっているようです。嘆かわしい限りですね。

 ところで、速記では「速く書き取る目的のため、便利に使えるものは何でも使 え」ということで、明治時代に二葉亭四迷や山田美妙らが言文一致体小説の手本 としたという、三遊亭円朝の落語速記本全盛の時代から、いろんな形の符号が使 われてきました。

 何しろ当時の速記文字は1音が3角(3画にあらず)で構成されるものも多か ったものですから、それだけ略語に頼らざるを得ない面があったようです。

 そこで、「一天、俄かに掻き曇り、大粒の雨がざあざあ降ってきた」というよ うな落語や講談での常用句はこんなふうに書いていたそうです。

 さて、「○ΛV」です。何と読むんでしょうね。ちょっと考えてみてください。

 「○」は「まる」です。小さくして「困る」、大きくすると「大丸」です。

 同じように「Λ」は「やま」です。すると「小山」さんや「大山」さんが出て きました。
「高山」さんに「丸山」さんもいけますね。「富士山」はどうでしょう。

 「V」は「かわ」にしましょう。「小川」さん、「大川」さん、「山川」さん がいます。「細川」さんもいけそうです。
 速記文字の「タ」を前後につけると、「田川」さんに「川田」さんですね。
「イ」がつくと「井川」さんに「川井」さん、「河」の字もありましたね。

 速記では音を書き取っていますから、書き直すときに固有名詞の字は間違えな いようにしてくださいよ。失礼なことになりますからね。

 すると、「○ΛV」は「まる やま かわ」となりますから、兵庫県北部の城 崎あたりを日本海側へ流れる「円山川」ということになりますね。