速記講座【31】 手紙(1)「頭語と結語」

 手紙はよく書かれますか。仲間うちなら電話やメールであっさり済ませられま すが、どうしても手紙でないとこちらの気持ちが相手に伝わりにくいという場合 が結構ありますね。

 まずは頭語と結語ですが、一般的には「拝啓」と「敬具」ですね。少し丁寧に なると「謹啓」に「敬具」となります。急用の場合は「急啓」と「草々」という のがありますね。

 次に、前文を略した形では「前略」「冠省」に「草々」という組み合わせが多 いようです。同じ件で続けて出したり、同じ日に再度出さなくてはならなくなっ た場合には「再啓」「追啓」として「拝具」「敬白」にするときもあります。

 さらに、返信の場合には、一般的には「拝復」「復啓」に「拝具」「敬白」と いうところでしょうか。少し丁寧なものとしては「謹復」「敬復」で、結語は 「再拝頓首」となります。

 また、一通り書き終えて、もう少し書き足さねばならなくなったときは「追 記」「追伸」「二伸」としてから副文をつけますが、これには結語はつけません。
 なお、あらたまった手紙では最初から書き直す方がよいでしょう。

 ところで、女性だけが使える結語として「かしこ」「あらあらかしこ」という のがありますね。「かしこ」は「恐れ多く存じます」という意味で、相手に敬意 をあらわします。また、「あらあら」は漢字で書くと「粗粗」で、「あらあらか しこ」になると「書き方が粗雑で意を尽くさず恐れ入ります」という意味になる そうです。
 決して「アラアラ、賢い子!」ではありません。

 なお、さかのぼっては「かしく」「めでたくかしく」という書き方もありまし たが、「めでたく」は相手をほめる意を添えたものですから、使える場合が限ら れるようです。
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 ちなみに、「恐れ入る」と言えば、「恐入谷鬼子母神(おそれいりやのきしも じん)」という言葉がありましたね。江戸時代から「むかしから古いしゃれの氏 神は、おそれ入谷の鬼子母神様だから」(滑稽本)、「恐れ入谷とあやまっても、 古い洒落じゃあ許さねえぞ」(歌舞伎)というふうに使われていたようです。

 あるいはまた、さきの第二次世界大戦の兵営でよく使われたという「オソレオ ホクモカシコクモ(恐れ多くも畏くも)」というようなものもありましたね。