はしがき

 この「速記教育関係資料 第1巻」は、故・小林清次さん(大阪府豊能郡)が中根速記協会機関誌「速記時代」に連載された「速記 とともに生きる」及び「国民皆速記の運動!」の2編をまとめました。

速記とともに生きる」は〔昭和31年9月号〜昭和32年5月号〕(第1話〜第10話)
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国民皆速記の運動!」は〔昭和34年2月号〜昭和43年1月号〕(第1話〜第93話)
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「速記時代」には「中根式創案当初よりの速記研究家」及び「教育者・速記愛好家」と紹介されており、大阪の中学校で校長をされて いた方です。

 小林清次さんは大正7年7月26日に中根正親先生主催の「第3回中根式速記法講習会」を受講されております。

 本文中の大正7年に20歳だったことから推測すれば明治31年生まれと思われます。
「国民皆速記の運動!」の内容は
1) 国民皆速記関係
2) 速記指導法関係
3) 速記の利用法
4) 反訳関係
5) 中根式関係
6) 要体教育関係
7) 国語審議会関係
の7項目に大きく分類できます。

 中根式では小林清次さん「国民皆速記の運動!」を昭和34年2月ごろから提唱されております。

 昭和43年以降に中根式速記を練習した人達の中には、小林さんが書かれた「国民皆速記の運動!」を読んだ人達は少ないと思います。

 後世の速記人は「中根式創案の精神」を知るためにも、小林清次さんが連載された「速記とともに生きる」及び「国民皆速記の運 動!」を、読み返す必要があるのではないでしょうか。

 中根式については手前みそ的に書かれている部分もありますが、中根式速記人として、自分が習得をした方式について誇りを持つこ とは当然です。

 この資料は、中根式に限らず、速記方式を超越して内容的にも価値があるものと信じます。現在、我が国の速記界が求めている「み んなの速記」を考える原点を見出すことができるのではないでしょうか。

 小林さんが「国民皆速記の運動!」を提唱されていた53年前の速記界では「速記教育=プロ速記者養成」という思想が主流を占めて おり、当時は「国民皆速記」という思想は、我が国の速記界では一部分の人を除いて余り話題にされていなかったようです。

 極論をすれば、「国民皆速記の運動!」は、我が国の速記界では無視されていたと言っても過言ではないでしょうか。

 この「国民皆速記の運動!」は、小林清次さんの崇高なる速記に対する思想であり、信念でもあります。

 我々は、今こそ「国民皆速記の運動!」の論文を真摯な態度で高く評価をすべきではないでしょうか。

  1. 読みやすくするために、一部分を除いて現代仮名遣いに直した。
  2. 明らかに誤植と思われるものは訂正した。
  3. 原文中、片仮名で書かれている部分は、小林さんが意味を含めていると思われたので片仮名のままにした。
  4. 小林さんが「わたし」と「私(わたくし)」を区別して使用しているので「わたし」とした。

平成24年10月28日




目 次


速記とともに生きる!

第1話 寝言にまでインツクキの妙法手…………………………………………………1
第2話 新米教員が老校長を助ける………………………………………………………1
第3話 漢字制限より中根式速記文字へ!………………………………………………2
第4話 初めて速記文字を見る人の感激…………………………………………………4
第5話 蘭学事始めを思う教養講座………………………………………………………6
第6話 至純至高、全国高校中根式速記競技大会!……………………………………8
第7話 全国高校速記大会の原動力は何か?………………………………………… 10
第8話 感激と奮闘努力………………………………………………………………… 13
第9話 再び、感激と奮闘努力………………………………………………………… 14
第10話 忘れられたる中根式速記文字の特長………………………………………… 17



国民皆速記の運動!

第1話 演説速記が速記のすべてではない…………………………………………… 1
第2話 やたらに速記するだけが能ではない………………………………………… 1
第3話 録音機を過信する人が多過ぎる……………………………………………… 2
第4話 速記ということに対する意味づけ…………………………………………… 4
第5話 速記利用の範囲を拡大しよう………………………………………………… 5
第6話 中根正雄先生の語られる“生の言葉”……………………………………… 6

第7話 速記はホンヤクせずにそのまま使うべきもの……………………………… 8
第8話 学生の速記研究いよいよ盛ん。文部当局も速記に注目…………………… 9
第9話 国民皆速記というコトバの意味づけ、そして内容の盛り込み…………… 11
第10話 速記観の拡大“速記者を使う、速記を使う”……………………………… 13
第11話 速記の日常生活化を語る人達の新年座談会………………………………… 15
第12話 速記学習の意欲を一般社会人に起こさせるには…………………………… 17

第13話 初心者をとらえ、速記指導…………………………………………………… 19
第14話 学習興味を盛り込んだ初心者への速記指導………………………………… 20
第15話 “特例の数と普及成績とは反比例する”…………………………………… 22
第16話 教え過ぎないで、説明は簡素にして徹底をはかる………………………… 24
第17話 論語に学ぶ……憤せざれば啓せず、排せざれば発せず…………………… 26
第18話 基本文字の取り扱い。徹底的練習の一本やりでよいのか………………… 28

第19話 基本文字の「系統書き」で、正しい文字を覚える………………………… 29
第20話 基本文字の「系列練習」から「無系列練習」へ…………………………… 31
第21話 「覚える段階」と「筆意運指法」……頭と指先との連結……………………33
第22話 鋭い聴覚でとらえた言葉を語る座談。方言から貧読まで。速記人の聴覚は鋭い 35
第23話 速記の翻訳のいろいろな形。目的によって仕上げが違う………………… 37
第24話 日常生活に利用しやすい速記の翻訳法は…………………………………… 38

第25話 やすいように見えて難しい。漢字と速記文字の違い……………………… 40
第26話 簡単な線画を読み分ける速記文字。乱筆でも反読がきく漢字…………… 42
第27話 初心者の未熟な速記文字は、反訳を強制しない方がよい………………… 43
第28話 反訳教材には、まず正しい模範速記文を与える…………………………… 45
第29話 社会人としての書写生活における“国民皆速記”の位置………………… 47
第30話 速記文字と国字とのまぜ書きから、速記文字ばかりの使用へ…………… 48

第31話 人の話の速さをはかることの難しさ。よい方法は?……………………… 50
第32話 池田総理の舌はどのくらいか。長くなったり短くなったり……………… 52
第33話 天皇さまは「わたくし」大臣や国会議員は「私」………………………… 54
第34話 談義は続く。当用漢字音訓表を乗り越えた「わたし」…………………… 56
第35話 話の速さを語数で測定する。単位となる“語”とは?…………………… 57
第36話 話の速さを音数で測定する。精密機械の実用化へ!……………………… 59

第37話 演説の記録はどんなに仕上げるか。官報や新聞の実例を解剖…………… 61
第38話 題目は本文の縮図。新聞各社に、一字千金の実例を見る………………… 63
第39話 無味乾燥な国会議事録、親しみやすい官報の編集を望む………………… 65
第40話 “夏は来ぬ”を考える。昼寝に語る「卯の花談義」……………………… 67
第41話 文章のまとめ方の典型的な歌詞「卯の花談義」その後編………………… 69
第42話 新聞週間に思う。記事の表現技術について望みたいこと………………… 70

第43話 文章の分量は原稿用紙ではかる。その使い方を考えてみる……………… 72
第44話 新しく生まれた言葉、新しい表現法を考える……………………………… 74
第45話 ことしの新語、bP「豪雪」が生まれる必要性………………………………76
第46話 文や話の表現法を変えている新しい言葉を拾ってみる…………………… 78
第47話 話の癖を追求する。語尾の母音から来た「アー、エー」………………… 79
第48話 話の癖を追求する。次に登場した言葉「アノー」………………………… 81

第49話 呼び出し音とシッポ音。アノー談義の追加………………………………… 83
第50話 気がつかぬ自分の話癖。出し過ぎるとマイナスに………………………… 85
第51話 「速記を習いましょう」高校生の投げた声。世論となれ!……………… 87
第52話 中根式速記法の本を全国の図書館に備えつける要望を!………………… 89
第53話 誌上の記事にうれしい反響…………………………………………………… 90
第54話 速記は学校の教科課程にあるのか。根拠を明らかにしよう……………… 92

第55話 反訳と同音異義の言葉、その難しさとおもしろさ………………………… 94
   月遅れの感想(21)郵便の遅れから…………………………………………… 96
第56話 熊田先生に感謝。国語の用字法はこれでよいのか?……………………… 97
第57話 国語問題最大の恥辱。木に竹をついだような熟字の横行………………… 99
第58話 本誌の用字を新用字例に統一することに賛成!……………………………100
第59話 新しい用字例を調べる。参考書にうずまって、ため息!…………………102
第60話 中根式速記の長所を知ろう。その数々の優秀性は?………………………104

第61話 中根式の長所を数える…………………………………………………………106
第62話 中根式の長所をたたえる。能率的な助詞符号の活躍!……………………108
第63話 インツクキこそ中根式の独創。発見された漢字の音の大法則……………110
第64話 インツクキの卓見性を究明。漢字の発音学界でも大発見!………………112
第65話 当用漢字インツクキ表:1850字の音を分析する…………………………… 113
第66話 インツクキから見た当用漢字、その分布のおもしろさ……………………115

第67話 当用漢字の補正とは?人名漢字表の取り扱い………………………………117
第68話 当用漢字訓読インツクキ表。1116の訓読を分析する………………………119
第69話 中根式速記を生んだ両洋学園。その卓抜な教育を知ろう!………………121
第70話 両洋学園の要体教育!…………………………………………………………123
第71話 要体は学習法則の粋。絶対に間違わぬ英単語のつづり字…………………124
第72話 要体教育は幼稚園から、教育課程の改革は両洋に学べ!…………………126

第73話 両洋独創の超速簡易教育法。だれでもわかる要体教育……………………128
第74話 天下無類「漢字の歌」…………………………………………………………129
第75話 漢字の歌こそ天下無比、千字文に比べて興味津々…………………………131
第76話 校歌にみる両洋精神……………………………………………………………133
第77話 国語審議会はどこへ?…………………………………………………………135
第78話 国語論争は百年戦争?…………………………………………………………137

第79話 NHK・TV「国語問題を語る」中村文相の考えはどこに?……………138
第80話 第7次国語審議会が出した「審議結果」を検討する………………………140
第81話 国審の審議結果を検討、問題を含む復活した漢字…………………………142
第82話 教育賞に輝く速記と要体教育。国際的な教育学会へ発表を!……………144
第83話 中根3先生へあいさつ…………………………………………………………145
第84話 当用漢字に復活する追加漢字。国審委の選んだ反社会文字………………147

第85話 送り仮名を少なくする。字の使い方の難しさ………………………………149
第87話 国民皆速記から見た速記。その認識と問題点………………………………151
第88話 ナマのままで読む速記。反訳を絶対条件としない…………………………153
第89話 速記はだれでもできる。日常生活に使う便利さ!…………………………154
第90話 速記はだれでもできる一字・一法則がすぐ役立つ…………………………156

第91話 おもしろい速記文字の仕組み。簡単な線でしかも正確に…………………158
第92話 学校は速記文字で2画。速記の学校は自由自在に活躍……………………160
第93話 速記文字は年賀状にも。年賀状の用語用字を分析…………………………162