漢語の音節と速記符号について

音節は声母と韻母に分けられ、韻母はさらに(介音と主母音と韻尾)に分けられる。

声母には唇音「拼音でbpmf」、舌音「拼音でdtnl」、舌根音「拼音でgk」、喉音「拼音でh」、 舌面音「拼音でjqx」、そり舌音「拼音でzh ch sh r」、歯音「拼音でz c s」がある。舌根音と喉音は1つのグループと見なしている。

韻母は「介音なし」と「i介音」,「u介音」,「ü介音」の4つに分けることができる。

日本語においては子音をストローク符号で母音をサイン符号で表す方式から始まった。今でもこの系統の方式が多い。実際には50音の各列全部を「ストローク+サイン」で綴る方式は極めて少ない。これを完全複画式ということにする。

最初の方式の田鎖式はア列がストロークだけでできている。他の列はストローク+サインである。これを複画式と称している。明治時代において「ウ列がストロークだけ」の方式も生まれたが主流にはなり得なかった。

その後「オ列を倍の線で書く」方式が生まれ、「ア・オ列がストロークだけ」で書ける方式ができた。これを折衷式と称している。

さらにストロークだけで50音を表す方式も現われた。これを単画式と称している。

漢語を「ストローク+サイン」だけで表そうとすると「介音なし」の部分だけで精一杯である。日本語の速記で言うならば完全複画式のようなものである。日本では完全複画式では速度が出ず速記にはならない。その速記にならない方式と同様なものでもまだ全体の3分の1の音節しかカバーしていない。他の3つの介音つきを表すには、「ストローク+サイン+サイン」か「ストロークと位置の変化」「ストローク+サインと位置の変化」など様々なくふうが必要である。こういうことでは中国の速記方式は速度が出ないように思えるが実際には日本人が日本語の速記をマスターするよりも中国人が漢語の速記をマスターする方が短時間でできる。それは漢語速記においては4声を省略することによるものであると考えられる。4声の情報を伝達するにはどうしても発音がその分遅くなる。遅くしてもそれだけの情報量があるからである。それにより中国人の速記習得の時間が短いといえる。

実際に4声を表記するケースはどれだけあるかわからないが「買う」(mai3)と「売る」(mai4)は区別しなければならない。ほかには「山西」(shan1xi1)と「陝西」(shan3xi1)

は区別をする必要がある。

 

音節の体系を具体的に唐亜偉式で見てみることにしよう。この方式は英語のGregg式を応用している。最初に韻母の省略方法である。

大体どの方式にも言えることであるが漢語の音節の基礎音(自然に母音をつけた音---何と言っていいかよくわからない)は拼音で書くと下記の通りになる。

「BoPoMoFo」「DeTeNeLe」 「GeKeHe」 「JiQiXi」

「Zhi Chi Shi Ri」 「ZiCiSi」 

これらは「ストロークのみ」で書く。

拼音のローマ字の母音が「o,e,i」と変化してちょっと見た眼ではややこしくなる。

注音字母だと「ㄅㄜㄆㄜㄇㄜㄈㄜ」「ㄉㄝㄊㄝㄋㄝㄌㄝ」 「ㄍㄝㄎㄝㄏㄝ」「ㄐㄧㄑㄧㄒㄧ」「ㄓㄔㄕㄖ」「ㄗㄘㄙ」のように表記する。「ㄓㄔㄕㄖ」「ㄗㄘㄙ」はまさに1文字で表記され「ストローク」だけで書くのにはぴったりといってよい。

この「ストロークのみ」で書けるものが、他に及べばそれに越したことはない。それには類音であるか片方にはほとんど例がない音ならば、「ストローク」のみで書くことができる。

「BuPuMuFu」も「BoPoMoFo」と同様となる方式がかなりあるが、唐亜偉式ではMuだけはMoと書き分けている。

「GuoKuoHuo」は「GeKeHe」と同様に書ける。

「DeTeNeLe」 「GeKeHe」 は「ストロークのみ」で書けるが、「Zhe  Che

 She Re」  「ZeCeSe」 は別の書き方になる。

EiとUi(Uei)は同様に書ける。実際に両方あるのは「GeiKeiHei」と「GuiKuiHui」それに「Zei」と「Zui」の組み合わせである。

次に介音「i」についてであるが、「JiQiXi」は介音「i」が付いているように見えるが「Ji」は1つと考えた方がいい。「QiXi」も同様である。「JiQiXi」として介音なしのグループに入れることができる。

このようにすると介音「i」が付いているのは「BPM」と「DTNL」だけになる。

その次に介音「u」についてであるが、「GuaKuaHua」が「GaKaHa」と同様に書くことができる。再掲になるが「BuPuFu」も「BoPoFo」と同様になり、

GuoKuoHuo」は「GeKeHe」と同様に書ける。

その次に介音「ü」についてであるが、「JiQiXi」が「ストローク」だけで書けるため「i」の小円を付ける符号が空いているのでこれを「Jüüüに使用している。

 声母の省略についてであるが「声母+韻母」のいくつかの音が「サインだけ」の符号になっている。「サインだけ」だと韻母だけの符号と同一になる場合もあるが片方の事例が非常に少ない場合は同一符号でも差し支えない。

「Dao Dou」等である。

 さらに声母の合併について唐亜偉式では、そり舌音「拼音でzh ch sh r」と歯音「拼音でz c s」を加点で区別しているが、必ずしも打たなくてもいい。中国のかなり地域では同一になっており、区別できない中国人も多い。実際に漢字にする時にはちゃんと文章になっていればいい。

さらに「n」と「l」も混交している地域がかなりある。方式によれば同一で書いている方式もある。唐亜偉式では一応区別している。しかし線は非常に似ている。

他の方式のことですが、「GKH」と「JQX」を同一符号で書いている方式もある。これは時代的変遷により口蓋化して「JQX」になった音がかなりあり、「GKH」と「JQX」は同一にしてもぶつからない。「GKH」には「介音i」と「介音ü」がなく、「JQX」には「介音なし」と「介音u」がない。速記でこの方法を使っている方式は少ないが、点字はこの方法を使っている。

音節の分析とその応用の仕方についは、速記以外に今紹介した点字やコンピュータでキーボードから入力する場合も相互間に役立つことが多い。

 


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