朗読音声  『この一幕もまた過ぎていく』リチャード・カールソン著


「この一幕もまた過ぎていく」
 これは私自身の生き方に取り入れている戦略。
いいことと悪いこと、喜びと悲しみ、成功と失敗、名声と恥辱……すべて現れて消えていくことをつねに思い出すための作戦だ。
ものごとにはすべて始まりと終わりがある、それがあるべき姿だ。

 あなたが経験したすべてのことは終わっている。
どの考えも始まっては終わった。
いままでに味わったどんな感情や気分も永遠に持続することはなかった。
これまで幸せ、悲しみ、嫉妬、落ち込み、怒り、恋、恥、誇りといった人がもつあらゆる感情を味わった。
そういった感情はどこにいったのだろう?
その答えはだれも知らない。私たちが知っているのは、すべてはやがて無に帰るということだけだ。
この真理を歓迎することによって自分を解放する冒険の旅が始まる。

 私たちの失望は、二つの道を通ってやってくる。
楽しんでいるとき、私たちはそれが永遠に続いたらと願う。
でも、そうはならない。
または苦痛を感じているとき、それが消えてくれたらと願う──たったいま。
だが、そうはならない。
この自然な流れに逆らってもがいた結果、不幸な思いが生まれる。

 人生とは次々に変わっていくものだと気づくことが、この訓練にとても役立つ。
いまこの瞬間のあとに、またいまの瞬間がやってくる。
なにか楽しいことをしているとき、幸せな気分を味わいつつも、やがては別のなにかが取ってかわることを自覚する。
それを知っていれば、その瞬間が変わるときも心穏やかでいられる。
苦痛や不快を味わっているときは、やがては過ぎていくと悟っておく。
そのことを心にとめておけば、逆境にあっても落ち着いていられる。

 いつも簡単にできるとはかぎらないが、たいていうまくいく。
 


筆記者 deme7氏(当該方式創案者の平野明人さんです)


 速記符号文例 『この一幕もまた過ぎていく』…図版3枚