朗読音声 市販薬の過剰摂取について
2024/2/16 神奈川新聞社説より それでは、薬のお話をしたいと思います。市販薬を過剰摂取するオーバードーズが若者を中心に広がり、問題化しております。気軽に手を伸ばして死亡する危険もあり、乱用防止対策とともに問題を抱える若者たちに寄り添った支援が必要になっています。 風邪薬やせき止めには微量ながら麻薬などに似た成分が含まれているものがあり、大量に摂取すると一時的な高揚感などが得られる一方、意識障害や呼吸不全を引き起こす恐れがあります。依存性も強く、大麻や覚醒剤などの使用につながる懸念も指摘されております。 オーバードーズが原因と疑われる救急搬送者は近年、増加傾向にあります。総務省消防庁などの調査によると、2023年上半期は5,625人で20代が最も多く、10代と合わせて半数近くを占めています。女性が全体の7割に上り、10歳未満も14人おりました。 昨年12月には、都内でせき止め薬を大量に飲んだとみられる若い女性が倒れて救急搬送されました。市販とみられる薬を過剰摂取した児童2人が小学校で体調不良を訴え、病院に運ばれるケースもありました。 搬送件数や服用事例は憂慮すべき事態で、社会全体で深刻に受け止める必要があるでしょう。どうしてこのような事態に至ったのか背景や経緯を詳細に把握し、早急に対策を講じなければならないように思われます。市販薬の適切な使用を妨げず、大量入手を防ぐ手立てが不可欠であります。 厚生労働省も乱用対策に乗り出し、20歳未満への販売は小容量製品1個に制限する一方、20歳以上でも複数個や大容量の場合は氏名を確認して販売記録を保存するといった制度の見直し案をまとめました。実効性のある医療品医療機器法改正を目指し、丁寧な議論を求めたいと思います。 合わせて取り組みたいのは、若者の心のケアであります。10代のオーバードーズ患者の多くは非行歴がない一方、家庭や学校で悩みや問題を抱えているケースが多いとされています。精神的苦痛を緩和する「鎮静剤」の役割を求めて過剰摂取に手を伸ばすというのであります。 市販薬は安価で簡単に手に入るだけに、若者の背景にある問題に目を向けなければ広がりは食い止められません。孤立を防ぎ、周囲に助けを求められる環境を社会全体で構築することが何よりも肝要であります。(了)
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