朗読音声 『さみしさの研究』より ビートたけし著 よく「定年になったら、新しい趣味を始めて第二の人生を始めたい」なんて言っている人がいます。 けれども、そういう人に限って、いつの間にかその趣味に飽きてしまったり、「老後が毎日つまらない」なんて言い始めるのです。 私に言わせてもらえば、それこそ「自己客観視」ができていない証拠です。 音楽にしろ、芸術にしろ、60歳になるまでやろうともしなかったものにいきなり手を出して、最初から上手くいくわけがありません。 物覚えが早い10代、20代のときに始めるのと比べても、相当ハードルは高いはずであります。 それをわかって手を出すのならいいけれども、そこまでの覚悟がないのにやろうとするから、大体結果は無残なことになるのです。だから自分に過度な期待をしてはいけません。 別に私は、趣味で老後を過ごすことを否定しているわけではありません。 けれども、そのためには、若い頃から何かに夢中になって、リタイアする頃には「名人」と呼ばれるくらいになっていなければダメだと思います。 ゴルフやら、釣りやら、囲碁や将棋が三度の飯より好きだという老人はいっぱいいるけれども、そういう人間は大概、仕事が忙しい若い頃から何とか時間を捻出して、そういう趣味の場に通っているわけです。 時間やお金、努力も費やして長年やってきたものが、ようやく本当の趣味になるのです。 (了)
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