朗読音声 『感傷的な午後の珈琲』より 小池真理子著 それでは、ペットについて少しお話をします。 人に飼われている動物はみな、飼い主の悲しみや苦しみを共有するようにできています。 飼い主に愛されたり、充分な餌をもらったり、快適な環境を与えられるためには、飼い主と運命共同体にならざるを得ないからであります。 若いころと違って、そのようなことがわかるようになったからこそ余計に、私には彼らが愛おしくてならなくなりました。 いいことも悪いことも飼い主と共に受け入れ、多くを求めず、生涯を終えていく彼らの命のあり方が、たぶん、老い始めた私の心の琴線にふれるのでしょう。 (了)
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