朗読音声 「遺伝に関する話」第149回 速記技能検定試験問題より それでは、遺伝に関するお話をしたいと思います。 皆さんは、自分がお父さんやお母さんに似ていると思ったことがありますか。 顔などの外見だけではありません。 性格も似ていることよくあります。 また、何かのときに同じような行動をとることがあって、びっくりしたことはないでしょうか。 このように、生物としてのいろいろな特徴が次の世代に伝わることを遺伝というのであります。 この遺伝という現象は、人間や動物だけに見られるものではありません。 植物でもよく知られていることであります。 人々は、昔からそのことを利用して、農作物を新たに開発しましたり、あるいは改良などを行ってきたのであります。 例えば、おいしいものがたくさんできるようにするためには、味のよい種類と実を多くつける種類をかけ合わせます。 それから、害虫に強いものでありますとか、環境の変化に対応できるかどうかということも考慮して、望みどおりの性質になるまで試行錯誤を繰り返していったわけであります。 そうやって、長い年月をかけてさまざまな研究を続けてきた結果わかったのは、遺伝子というものが作物の性質を決める上で重要な役割を果たしているということであります。 そして、この遺伝子だけを取り出すこともできるようになりました。 この技術を応用しまして、これまで自然には存在しなかった作物をつくることが可能になりました。 しかも、短期間で確実に成功させることができるようになったのであります。 このような技術は、農業の分野だけではなく、医薬品の世界でも利用されています。 今まで治る見込みの少なかった病気などが、新しく開発された薬で治るようになってきたのであります。 これからも、さらに多くの分野にその可能性は広がっていくことでありましょう。 しかし、遺伝子に関しましては、まだまだ知られていないことがたくさんあります。 新しくつくり出した品種がどう育っていくかということでありますとか、ほかの生物との関係はどうなっていくのかなど、将来的に周りに与える影響ということも考えなければなりません。 特に食品の分野におきましては、安全性ということを第一に考えていく必要があります。 そういったことにも配慮しながら、この取り扱いについては慎重を期していかなければならないと思います。 また、このような技術を動物へ応用することに関しましては、世界各国で大いに論議されているところであります。 現在、この技術の応用はいりいろな場面で行われています。 例えば、クローンをつくったり、病気の治療にも役立てられたりしているのでありますが、まだいろいろな問題点があるということが指摘されています。 技術的な面だけではなく倫理の点からも、これをどこまで進めていっていいのかというようなことも含めて、これからもっと研究が進められなければならないと思うのであります。 (了)
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