朗読音声  ジャングルジムに上った月 『六本木ララバイ』

文:速記道楽管理人代理
作詞・作曲:エド山口  歌:内藤やす子


どうにもこうにも、身の置き場がない、と言おうか、呆然と立ちすくむしかなかった。
そもそも倫理に反している事柄なのだから、このまま自分の内なる出来事として握り潰してしまえば、誰ひとり傷つけることなく、すべては完結する。
表面上は、何一つ起きていない。無論、相手に気づかれてもいないし、気づかせようなんて気はさらさらない。

考えまいと思えば思うほど、考えてしまう。
想いを募らせる、とはこういうことを言うんだろうな、なんて思ったりする。
きょうもまた、泣いてしまった。

あの日は人事異動の発表があり、その人の地方転勤が決まった。
時間の経過は非情だ。瞬く間に一か月は過ぎ去り、いつもそこにいた顔は消え、机と椅子だけがとり残された。

春はまだ浅い。
いつもの帰り道。だれもいない公園、ジャングルジムの上に浮かんだ真ん丸のお月さま。
ぽっかりと心に穴が空いたから、代わりに月でも浮かべておこうかと考えてみた。

朗読文音声 「ジャングルジムに上った月」 015.mp3(6,148Kb)