平成18年1月16日

菅原 登 様
植田 裕



 2つの資料をお送りします。1つは、資料Aで、最近、書類を整理していて出てきま した。
 1枚めの「第8回全中大会優勝者 大阪天商 作田武一君速記原文」の下線に注目し てください。普通であれば途中で区切って書くところです。それを続けて書いています。 この書法が、現在の私の“書風”の原点になっています。例えば2枚目の*印の下線部 分「大きな節目の年である」という書き方であります。
 また、単に連続して書くというだけでなく、同じページの2本線の部分「世界大戦が 終わりまして」(大戦=ポジション記法、旧名・特殊漢音縮記法は、終わり=ア・オ列 表示記法)、「高度成長の時代」(成長、時代=ポジション記法)のように、本来は2 単群になるところを1単群にまとめる記法の開発につながっていきます。
 さらに、「迎えました」の「迎え」のように、中部加点によるスミニヒカリシのカの 加点を、ウスヌムル音をあらわす正側頭部に移行して、ムとカをSM(サインマルチ) 記法であらわし、その加点を前符号の尾部にひそませる、つまり、前符号を利用しなが ら後符号を書く方法に発展していくわけです。
 同じことは、7枚めの下線の部分、「奥邨 (オクムラ)宗務総長におかれましては」の場合、オクムラは、ラの正側頭部に加点で すが、その加点は、オクのオの符号の尾部に(ク符号は逆記されるので)ひそまれます。 シュウというのも同じく正側頭部加点ですから、「総長」のソウの符号の正側頭部に加 点して、シュウとムを同時にあらわすSM記法で書きますが、そのシュウとムの加点は、 オクムラのラの尾部にひそませます。
 「さぬきうどん」の場合、「キ」の正側頭部加点で「ヌキ」となり、「サ」の尾部に、 その加点をひそませて「サヌキ」となります。
 次に、「ド」の正側頭部に加点して「ウド」となりますが、負側頭部に加点 すると、「ウドン」となります。加点インツチクキ法で負側頭部は「ン」をあ らわすからです。
 この負側頭部の加点を、さきの「サヌキ」の「キ」の尾部にひそませると、 となり、「さぬきうどん」のでき上がりです。
 「宗務院」というのは、「シュウ」も「ム」も正側頭部に加点してあらわします。た またま「シュウ」と「ム」が続いたわけですが、SM記法で「イ」の正側頭部に点を1 つだけ打って「シュウム・イ」ですが、負側頭部に加点すると、負側頭部は 「ン」をあらわすので、「シュウ・ム・イ・ン」となります。
 「日蓮宗」は「ニチ」の最大線であらわします。その尾部に「宗務院」の加点 をひそませるととなり、「日蓮宗宗務院」となります。
 こうした方法で、「さぬきうどん」はとなり、「日蓮 宗宗務院」はというふうに、2単群で書かれていたも のが、1単群化されていきます。
 さて、資料Aは、検定試験問題を符号化したのは別にして、平成8年ないし9年に私 が現場で速記した原文帳からのコピーです。
 実は、これを教材にして、衆議院のS.Sさん、Y.Iさんに、私の“書風”を伝授し ようとしたわけです。しかし、既に大成して衆議院の速記者になっているお2人に、今 さら符号の形を変えて書けなんて、非常におこがましいことなので、そのことは断念し て、略符号並びに縮記法を応用して簡単に略符号的に書けるもの、いわゆる「簡字」を 50音順に約2年間かけて、中根速記学校で教えました。(この講習の初期には、石巻の T.Mさんも参加していました。)
 今まで私の符号として出ているものは、生の符号ではなく、文章を見ながら符号化し たものです。その点、資料Aは、先ほど述べたように、検定問題を符号化したもの以外 は、講演、インタビュー、労組大会、日蓮宗宗会など、すべて現場で速記した生の符号 です。したがって、文章を見ながら符号化したものとは迫力は違うと思います。
 同封書類の2つめ資料B「気になる速記文字」は昨年の東京速記士会下期研修会で発 表したものです。(一部、説明の冗長な部分は改訂しました。)学生時代に出会った専 門家の書いた「潜水艦」という符号にこだわり続け、現在ではという符号で あらわせるようになったこと。“美しき線”を追求し続ける私の情熱みたいなものを読 み取っていただければありがたいわけで、読み物としておもしろいのではないかと思い ます。
 そこで、唐突で申しわけありませんが、資料A、Bを『速記道楽』で全国に紹介して いただければと思っておりますが、いかがでしょうか。
 

 ところで、私が日ごろから新しい書き方をメモしているのは御承知だと思いますが、 私も年老いて、いつあの世へ行くかわかりませんので、新しい書き方を思いつく都度、 そちらに報告しますので、『速記道楽』で取り上げていただければ幸いです。
 「植田 裕の速記研究ルーム」とでも題して、植田はコンピュータを持っていないの で、私(滝)のホームページで独占公開することになったとすればいかがでしょうか。

 今回は、「ウイルス」「ウイルソン」「お答え申し上げます」「ご案内申し上げま す」「立教開宗七百五十年慶讃会」「立正安国・お題目結縁運動」の6符号について報 告します。

ウイルス
1.正側頭部加点で、ウ・ス・ヌ・ム・ルのいずれかの音をあらわす。
2.スの代字として、ツを使用。
3.スの代字「ツ」の正側頭部に加点して「ルス」と読ませる。
4.片仮名のウの字の第一画ここを、ウの代字とする。
 ウイ ウケ ウタと読ませることができる。
(例)
 受け取る受け取り受取人受け取った
 お疑い疑った疑って
5.「ウイ」の字尾に3の「ルス」の加点をひそませる。

ウイルソン
1.「ウイ」は前述のとおり。
2.前項で述べたように、正側頭部に加点して、ウ・ス・ヌ・ム・ルのいずれかの音を あ
 らわすので、「ソ」の正側頭部加点で「ルソ」となる。
3.その加点を負側頭部に持ってくるととなり、負側頭部は加点インツチクキ 法
 で「ン」あらわす位置なので、「ルソン」となる。
4.「ウイ」の字尾に「ルソン」の加点をひそませる。

お答え申し上げます
 「お答え」はと書くので、「お答え申し上げます」は、今まではと 書いていた。
 一方、「ご報告申し上げます」というのは、「ご」は短記法、「報告」は2音文字 「コク」を「報告」の略符号として使い、「ます」という略符号を表意略法で「ご報 告」の上に書いて、「ご報告申し上げます」として使用している。
 それと似せて、「お答え申し上げます」の「答え」を短記法で書けばとなる。

ご案内申し上げます
1.「ご」は短記法。
2.「案内」はポジション記法(旧名・特殊漢音縮記法)によって、アンナイの「ア」 は
 省略、「ナイ」の符号を前字「ゴ」の中部に空間をとって書くことによって「ン」を あ
 らわす。つまり「ゴ○ンナイ」となる。
3.「申し上げます」は前述の表意略法による。

立教開宗七百五十年慶讃会
 日蓮宗の布教伝道運動で、一昨年で終わった。
1.「リッキョウ」の「キョウ」の符号(15度9ユニット)に、速記数 字
 の750を交差。
 7……70……700……(7=セブンのセを連想)
 50……
2.「慶讃」はポジション記法によって、まず、「ケイサン」の「サ」を省略すれば 「ケイ
 ン」となる。
3.前符号「750年」の「ネン」の中部に空間をとって「ケイ」の符号を書く。空間が 「ン」
 をあらわすわけである。つまり、「ケイ○ン」となる。
  この場合、「年」を書き終えて、その中部に「ケイ」を持ってくることは、左から 右
 へ流れる符号の流れと逆行する。
  そこで、便法として、「年」の中部に空間をとるのではなく、「年」の字尾に空間 をと
 って、「ケイ」の中部が位置するようにと書いて符号の流れをスムーズ に する。
4.なお、「ン」をあらわすのに、ポジション記法で中部空間の方法を使っているが、 前
 述の「アンナイ」の場合は、空間(ン)の次にナイの符号がある。つまり空間のンは、
 アンナイと発音順に読むわけで、順記ということになる。
  ところが、「ケイサン」の場合は、空間(ン)の次にケイの符号があって、空間の ン
 は、「ケイサ」の後で読むわけで、逆記の形となる。
  つまり、同じ「空間ン」でも順記によるものと逆記によるものがあるということで あ
 る。

立正安国・お題目結縁運動
 去年から始まった日蓮宗の新しい布教伝道運動。
1.「リッショウ・アンコク」の「リ」と「コク」を交差させて、「立正安 国」
 (交差略法)
2.「お題目」は「オ」の9ユニット化(9u略法)
  この場合、単に「オ」を9u化したのでは、前符号の「立正安国」と角度の関係で ど
 うしても離筆することになる。そこで、「アンコク」の「ク」音をあらわす、ツノ出 し
 の方法をとれば、離筆なしで「立正安国・お題目」が1単群としてまとまる。
3.「結縁」は2音文字「ケツ」を前符号である「お題目」の中部に空間をとって
のように書いて、「○ン」(この場合はエン)をあらわす。前項4. の説
 明でいう逆記のン。
  ただし、この場合も「お題目」の末尾から、その中部に筆を運ぶのは、符号の流れ に
 逆行するので、前項3.で説明した便法によってのように書く。
4.「運動」は、ンの前音省略記法といって、この場合、「ン」の前音の「ウ」を省略 して、
 「ン」の小円に「ドウ」を続ける。
  このン前音省略記法は、国民健康保険の場合だと、のようになり、 三井住友銀行の場合にはとなる。(「ン」は順記されたことにな る)
  また、アフガニスタン、パキスタンの場合には、「ン」の前符号「タ」を省略して、 となる。(「ン」は逆記されたことになる)
 *アフガニスタンの「ニ」と「ン」は、ナ行をあらわす小円とンの小円をSM記法で 書
 いてある。また、「スタン」の「ス」は「ツ」を使っている。

 「国民」をと書いたのは、○ク○ンの形の場合、「ク○」この場合は「コクミ ン」の「クミ」を「ク」符号順記で書いてあらわす方法。したがって、「ニクソン」は 「博覧会」(ハクランカイ)はとなる。国連(コクレン)は となるが、この場合は<反転ラ行>を使って、とした方が書きよい。例えば、 「国連常任理事国」はとなり、通常だとが1単群と してまとまる。
 「三井住友」の書き方は、
      
  
 点で示した位置は、ともに〈肩〉であり、〈隅〉である。したがって、「カタ」「ス ミ」をあらわす場合に使用する。
 「三井住友」の場合、「三井」の末尾に「住友」の「スミ」をあら わす加点がひそんでいる。


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