石村式速記法( 疑問2 )


 石村さんの研究は速記理論の面でどのような成果が…

 この点にお答えすることも容易ではありませんし、答えらしいことを述べられないで終わってしまいそうです。

少なくとも中根式や早稲田式、国会方式にはさしたる影響をほとんど何も与えていない。

小円順記などによる清濁区別も石村式の中でのこだわりにすぎないと見られても致し方ないような感もある。

長音符号の設定も結構、複雑怪奇な部分も少なくない。

どこでお会いした際かは忘れてしまいましたが、石村先生と対してのお話の中、 例えば「早稲田式のような円付属の複画符号を1音に充てることはもったいない」といった感覚をお持ちで、 実際にそのように伺った記憶があります。このことは単画中根から入った速記の世界であった点が強いのでしょうか。

濃線を排する方向で出発していったのだけれど、田鎖系折衷派のような基礎符号にはしたくなかったでしょうし、 基本的に単画系統、そのための補いとして国字式、衆議院式などの影響も少なからず受けることは必然のようであった。

中根式からの大冒険のような形でとにかく基礎符号のこれだというものを具現化したかった、 けれども実際に進んでみると基礎符号の理想を求めれば求めるほどエンドレスな道程となっていった。

中根式から踏み出したけれど、そしてほぼ単画系統として組み始めていったけれど、 もはや中根式のような単画派とは意味合いが違っていった。

注がれるエネルギーの太い流れは、基礎符号や縮記、清濁の区別あたりに割かれ、 その他の「速記文法」といった運用展開ではやはり中根式の影響が最も濃く、 石村式の中でも年を追うにつれ少しずつ洗練化されたようでもあるけれど、 根本ではこれといった大々的な変化は少ない。

基礎符号は固定したまま、速記理論、運用面を追求、 精緻化していくといったことに全精力を注いだ感ありの研究路程を進んだならばどんな方式になっていたかとは、 いつも考えるところでもあります。