EPSEMS日本語速記の構造、成り立ちについての紹介
EPSEMS日本語メモ用文字 ( 日本語速記 )
まずもって、 このEPSEMS日本語メモ用文字について 「 速記 」 という
言葉も用いていますが、 考案した私自身は、 「 速記 」 という言葉でな
くても一向にかまわないと思っています。 「 メモ用文字 」 という言葉、
もしくは何らかの適当な言葉で表現した方がよいのかもしれないとも思っ
ています。
それは、 ひとつには、 このEPSEMSを考案した目的が、 いわゆるプロ速
記士用として高速度まで対応できる速記法の考案という点にあるからではな
く、 あくまでも個人メモ専用といった使用形態に照準を置いた速記法の考
案という点にあるからです。 より多くの人々に便利なメモ用文字を提供し
たいという観点から、 そのように考えています。
話は脱線しますが、 私は過去に、 自ら考案した 「 示唆式 」 という速
記法でも 「 速記技能検定試験の1級 」 にパスした経験があります。 若
干専門的にはなりますが、 この 「 示唆式 」 というのは、 従来からの多
くの速記方式と同様に 「 正円幾何派 」 に属する速記文字を持つ速記法で
す。 また、 五十音基礎符号に関して 「 複画、 折衷、 単画 」 という分
類をするならば 「 単画 」 となります。 さらに、 符号の運用形態から
言えば 「 田鎖式系統 」 の伝統的なものでもあります。 また、 多くの
速記方式が採用している 「 加点法 」 ( → 例 : カに点をつけてガ )
とは別の濁音表示法を採用するなど、それなりに奮闘もしました。 しかし
ながら、 「 一般普及用 」 の速記としては、 少なくとも私の考えの中で
は決して満足のいくものではありませんでした。
そんなこんなで、 速記法に関して実にさまざまな研究、検討を繰り返し
てきた中で、 「 プロ速記士用として高速度まで対応できる速記法 」 の約
3分の2程度の書記スピードを達成できる速記法の考案に照準を置くことに
しました。 これは、 日本速記協会主催の速記技能検定試験の6級から1
級までの6段階の中の 「 3級 」 あたりにも相当します。 「 1級 =
分速320字 」 に対して 「 3級 = 分速240字 」 です。
この 「 1級 = 分速320字 」 に対して 「 3級 = 分速240字
」 という部分についてですが、 「1級 = 分速320字 」 の3分の2
というのは 「 分速213字 」 程度で、 「 4級 = 分速180字 」 と
「 3級 = 分速240字 」 の中間ぐらいになります。 しかしながら、
実際の試験場での緊張した状況の中で 「 1級 = 分速320字 」 とい
う速度の試験にパスしようとすると、 ざっと 「 分速360字 」 程度は
書けなければならないと考えるわけです。 そんなわけで、 「 1級 = 分
速320字 ( 360字 ) の3分の2 → 3級 = 分速240字 」 とい
うふうに、 ここでは大ざっぱにとらえることにします。
ここで、 なぜ 「 3分の2 」 かと問われると返答にいささか困ったり
もしますが、 大ざっぱでわかりやすい表現として、 無責任ながらも 「 3
分の2 」 ととらえています。 「 4分の3 」 では 「 もう少し頑張っ
て1分の1にできないのか 」 とでもなってしまいそうだし、 「 2分の1
」 では普通文字のスピード面を補う便利なメモ用文字としての魅力に欠け
るような気もします。
従来型の多くの速記法について、 習得程度に応じて、 例えば 「 初級、
中級、上級 」 という3段階に分けたとすると、 この 「 3分の2 」 と
いうのは、 ざっくり言えば 「 中級 」 といったところかとも思っていま
す。
この 「 3分の2 ≒ 中級 」 のスピード領域を確実に達成でき、 なお
かつ 「 学びやすく、書きやすく、 読みやすい 」 という3要素を達成で
きる速記法の考案を目指したとも言えます。 その代価として、 「 1分の
1 ≒ 高速度 」 の達成は放棄しているとも言えます。
「 速記 」 という言葉でなくても一向にかまわないというのは、 このよ
うなところからも来ています。
EPSEMSの速記文字は、 ほとんどすべての日本語速記法とは異なり、 基本
的に母音文字 ( a, i, u, e, o ) と子音文字 ( k, s, t, n, h, m, y,
r, w, g, z, d, p, b … 等々 )に分けられます。 いわゆる 「 カナ入力
」 に対して「ローマ字入力」に相当する書き方をするわけです。 したが
って、 日本語の五十音 ( 清音のみ → 「ガ」 などの濁音や 「キャ」 な
どの拗音等を除く ) について言えば、 従来型の日本語速記法が五十音基
礎符号としてざっと44文字であるのに対し、 EPSEMSでは17文字 ( シ
= sh 行、 チ = ch 行、 ツ = ts 行の3文字も含む ) となります。
その他、 濁音、 拗音、 拗濁音、 外来音、 等々をあらわす基礎符号と
して、 20文字 ( f 行、 v 行、 ty 行、 dy 行、 fy 行、 vy 行 を含
む ) を加えて、合計37文字となります。
また、 「 ローマ字入力 」 的な構造であるため、日本語のみならず、
アレンジ次第では英語などの外国語にも対応できるといった側面を持ってい
ます。 「 カナ入力 」 に対して 「 ローマ字入力 」 の方がキーボード
をたたく回数が多いように、 従来型の多くの速記法と比較した場合、 この
EPSEMSは文字の画数が多いとも言えます。 そして、 その画数の多さは、
各種の法則によって従来型の速記法の画数にかなり近づいていくような処理
がなされます。
そして、 実際にこのEPSEMSでは英語メモ用文字 ( 英文速記 ) として
の対応も行われています。 ちなみに、 ピットマン式速記法やグレッグ式
速記法等々、 ほぼすべてと言ってよい外国の数々の速記法は、 その言語表
記方法から、 当然ながらいわゆる 「 カナ入力 」 に対して 「 ローマ字
入力 」 に相当する書き方をします。 したがって、 これら世界の数々の
速記法もまた、 やはりアレンジ次第では他の外国語にも対応できるといっ
た側面を持っています。
EPSEMSでは、 日本語を書きあらわすのに必要な母音及び子音 ( 外来音
も含む ) として、 以下のようなものに対してそれぞれの速記符号が設定
されます。 簡単に言えば、 日本語をローマ字で書いていくようなもので
す。 ローマ字の代わりとして、 発音記号的な速記文字が設定されていま
す。 それらの速記文字を一つ一つ覚え、 簡単なメモ等に少しずつ使って
いくなどして、 実用面で自らを鍛えつつ、 すらすらと書けるように反復練
習していくわけです。
母音 : a i u e o
子音 : k g s z t d n h m y r w p b ky gy sh j
ch ts ny hy my ry py by
( プラス外来音として f v ty dy fy vy )
もちろん 「 そろばん 」 や 「 パソコンのキーボードのブラインドタッ
チ 」 などと同様に、 反復練習するといった各個人のそれなりの努力によ
り、 速度と正確度を高めていくことが必要なことは言うまでもありません
が、 このEPSEMSを練習、 習得していく過程で、 「 文字を書くことの喜び
」 を味わっていただけたなら、 なおさら素晴らしいことだと思っていま
す。