2005/04/17 (Sun) 文献紹介 中根式速記法講習会
 森 卓明著「現代国語表象速記法」(京都速記研究所 昭和52年6月1日発行)に「中
根式速記法講習会」――50年昔の話――が掲載されております。
 
 大正8年の春から、郷里の村の小学校の教師をしていた私は、その夏京都へ来た。せっかく上京したのであるから、その滞在期間を有効に使いたいと思って、毎日、博物館や図書館、名所旧跡の、まだ見ていないところを観て回った。今と違って、そのころは、講習会も講演会もほとんどなかった。
 ところが、図書館から出て、東山通りを熊野の方へ歩いた――当時は東山線が、熊野の
方から丸太町へ曲がっていた。電車を待つ間ふと電柱を見たら、次のようなコンニャク版の広告が張ってあった。
 
   第四回 中根式速記法講習会
 主 催 認可京都速記学校
 期 日 八月廿二日より六日間 毎夜七時半より二時間
     但 第一日目は聴講無料
 会 場 三条 青年会館
 会 費 弐円五拾銭 但入会と同時に納付のこと
     (注意 申込は名刺代用にて差支なく会員はペンとノート持参ありたし)
 本速記法は、大正三年五月 大阪毎日新聞に依り初めて江湖に紹介せられ、其平易簡明、斬新独創的なるは、斯界先輩をして驚倒せしめ且つ之が実証を有す、最近之が普及の一端を記せば、歩兵第四十六聯隊将校団百四十名講習、佐世保海軍及び佐世保市主催講習二百名、仝市長も亦講習に加はり、且つ海軍中将木村剛氏の感謝状を受領す。更に長崎市にては本年五月長崎高騰商業学校、仝医学専門学校、県立長崎中学校、女子校、商業学校に於いて本速記講習会を開催し、研究会入会者五百名を算す。又前月京都第一商業学校に於いて同様講演並びに実技を行ひ一千名の学生に多大の感興を与へ、既に第二商業学校に於いては講習を開催し仝校長長澤(不明)氏も聴講せられたり。
(原文のまま)
 速記という名前は、昔高等小学校の1年生(現中1)のとき、川上先生(故 川上貫一代議士)から、当時早口で有名な島田三郎の話のとき聞いて知っておったし、その夏私の学校で青年団の講習書き取りを命ぜられて困った直後であったので、速記でも習って帰ろうと思い立ったのである。
 三条通を烏丸通りから東へ柳馬場までいくと、基督教青年会館という木造三階建ての洋
館(現存:昭和52年6月現在)があった。当時はまだ河原町通りに電車はなかった。
私は田舎の教員講習会のように、何百名の受講生があることを予想していってみると、二階の一室の前の廊下に受付があって、若い男女の2人が出席者を丁寧に迎えていた。
 会場には既に20人ばかりの人が集まって開講を待っている。黒板の左端には次のような表が張ってある。
(※50音表は省略)
 
 このプリントは、翌日配られたのである。私が川上先生から速記の話を聞いたとき、速記とはどんなものだろう、⌒ )のような線で書くのではないだろうか、と想像してみたことがあるが、この50音表を見たとたんに、ああ、やっぱりああいう字か、と初めて見る字のように思えなかった。
 やがて講師の、発明者中根正親先生が浴衣姿であらわれた。長髪のオールバック、背丈の高い、顔の大きな、額の広い、それていて案外細い神経質な声で、別に紹介も待たずに説明を始められた。そのころの先生がみなやられていたように細い竹のムチを振りながら
“速記法というものはネ”と言って
   複画派  田鎖  熊崎
   折衷派  ガントレット
   単画派  武田  中根
と書いてその1つ1つについて、ポツリポツリとしゃくったような声で糊気のない浴衣のまたしても落ちてくる袖を肩に上げ上げ説明されるのである。
「我が国の速記界はまだ田鎖式が盛んだが、例えば“特に”は、   と書く、ボクの式では   でよい。」
と聞いて、なるほど中根式は進んだ式だな、と感心した。
「ボクはネ、京大の苦学生だったから、英語の速記を練習している人のところに朗読に行って学資の足しにしていた。そのとき初めて速記を知った。それから日本語の速記法を習いたいと思って、当時一番進んでいると思われる熊崎博士(実は博士ではないがあえてこう言われた)の発明にかかる熊崎式を研究して練習にかかった。がなかなか速度が出ない。それで改めて、かつて見ていた英語のピットマン式の研究を始めた。まずその綴字形の美しいのに魅せられた。田鎖式もピットマン式も基本音に当てた先生は同じだが字形がコロッと変わっておる。これは英語のアルファベットを日本語のカナに直訳したからだと気がついて、それには日本語に多い音に、英語に多い音の線を当てたらよい、と考えて、何回も何回も試みた末やっと新しい50音表をつくることができた。それも従来の複画式や折衷式と違って、武田式のような単画式にしたのだ」
というように、中根式立案の動機から、その原理の一般を述べて講義は終わった。掲げられた50音表の説明はとうとう一言もなかったが、私は宿に帰って、その晩のうちに50音を完全に覚えることができたのである。 
 
 
※空白の速記文字の部分で“特に”は、中根式で説明すると \ の末尾に楕円〔ヲ〕、― の末尾に小円〔助詞のハを正側〕につけて連綴した形ですが、熊崎式のタ行は /ですし、田鎖式のタ行は | です。新田鎖式でも楕円の方向が違います。〔助詞ニの形〕
 
※田鎖式、新田鎖式、熊崎式の基本文字については〔速記基本文字総覧〕を参照してください。
 
※「ボクの方式では」と説明された“特に”の速記文字は \ トの速記文字のクは、角カギではなく小カギを正側頭部につけておりますし、助詞のニは、小カギを負側尾部につけております。
 
 
2005/04/14 (Thu) 速記資料館補遺「基本線について5」
 速記資料館「中根式の紹介と評価」で中根正世先生の“基本線について1〜4”を掲載しておりますが、「基本線について5」(中根速記協会機関誌「速記」昭和7年12月号 No.29)の文献が出てきましたので、「速記資料館補遺」として紹介いたします。
※基本文字は掲載いたしません。 
 
 基本線について(5)
中根正世
 基本線についてはもはや前号までで大体了解せられたと思うので、実は前号で打ち切ることにしていたのであるが、念のため初期の50音図を掲げて説明をつけ加えることにしておきます。
 まず初期においてはここに示してあるとおり、ア行の文字は45度であって、これを左から右上に書き上げていたのを現在は30度の線にして左から右上に書き上げることにしてあります。サ行も初期は45度の線であったが、これも現在は30度の線にしてあります。タ行の中、タとトは初期は60度の線であったのを現在は30度の線にしてあります。それからヤ行、ラ行、ワ行などは初期においてはいずれもこの図のとおり45度になっていて、これを上から左下に書き下ろしていたのを現在ではいずれも60度に起こして、上から左下に書き下ろすようにしたのであります。
 そうしてこれによってわかるとおり、初期においてアとラ、イとヤ、ウとル、エとヨ、オとロはそれぞれ45度の同形文字であったので1つの線だけを離して書いたらどちらに読むかわからなかったのであります。従って専ら前後の文章によって判読するようにしていたのであります。ただ書き方だけはア行は左から右上に書き上げ、ヤ行とラ行は同じ形の文字であったが、右から左下に書き下ろしていたので、何か他の文字と連続して書く場合はもちろん、一目して何の字ということを見分けることができたのであります。しかしこれは現在においてはア行は30度に、ヤ行、ラ行は60度に変じ、傾斜の度が違うことになり、1字として同じ形の文字はないようになり、従ってどこにあっても、たとい1字だけ離れてあっても、はっきり何の字であるということの見分けもつくようになり、しかもこの方法が合理的だということになったのであります。
 以上数回にわたる説明によって何ゆえに初期の50音図に変更を加えたかについては十分に了解せられたことと思いますから基本線についてはこれで打ち切り、さらに違った研究を発表することにします。(終)
 
※初期というのは、中根正親先生が創案された体系のことですが、中根式の基本線は(甲)(乙)(丙)がありました。
 (甲)は \ タ、ト(60度)、― カ、コ(0度)、/(上から左下)キ、ケ(60度)、 /(左から右上)ツ、フ(30度)、|ク、チ、テ(90度)の直線に対して使用されておりました。
 (乙)は◯を×で切り4等分してマ行、ナ行、ハ、ヒ、ヘ、ホの曲線に使用しております。
 (丙)は◯を+で切り4等分してア行、ヤ行、サ行を45度の曲線に使用しております。
 直線の \ は60度です。サ行の\ 角度は◯を4等分した形ですから45度になります。
 中根正世先生によって、◯を4等分した割り出し図を廃止して、現在の30度単位が基本線の角度になっております。
 
 
2005/04/04 (Mon) 文献紹介 我が式の誇る省略法
 中根速記協会機関誌「速記時代」昭和32年8月号に池田正一先生の「我が式の誇る省略法」が掲載されております。
 日本速記協会機関誌「日本の速記」昭和32年6月号に掲載された原稿を転載されたものです。
 「速記雑感」には図版が掲載できませんので、「速記法則の部屋」“中根速記学校の体系”をご参照ください。
 
我が式の誇る省略法
 
1.概説
 中根式速記法は、現京都両洋学園長中根正親先生京大在学中における苦心の創案になるもので、大正3年5月10日大阪毎日新聞によって初めて世に紹介されたものである。爾来令弟正世先生大成、日本全国はもとより朝鮮、台湾、満州にまで普及せられて今日に至ったものである。
 中根式の主なる特長とするところは
 1.立案の根本が極めて科学的である
 2.独創的な法則によって構成されている
 3.法則が簡明でその効果大なる点
 4.根本法則に変更の余地なき良心的創案
 5.科学的な法則性が無限に発展的に展開できる
ことなどである。
 およそ速記法には全て何某創案何々式なる名称が冠せられているが、あえて何某創案何々式なる名称を冠する以上、その方式の内容において、そこにその名称を冠してはばからないだけの独自性がなければならんはずである。そもそも速記法の法たるゆえん学的価値というものは「本画を理論的に短縮する、その法則」にあるのであって、一に通じて二に通じない略字のごとき、また単なる50音の改変などのごときは価値のないものといつてよかろう。しかるに、最近速記界の時流に乗って何々速記方式というには甚だいかがわしいものや非良心的なるものが何某創案何々式の名称を冠して、徒に誇大な宣伝をたくましうして、一般世人を迷わしつつあることは、斯界の正常な発展を阻害するものにして、まことに遺憾である。
 しからば、私の言う方式の独自性中根式速記法の中根式たるゆえんのものはどこに
あるのかと言えば @立案の根本方針と A漢字音の鉄則(後述)発見に伴う一連の独創的「法則」にあるということができる。以下具体的に述べてみよう。
 
2.立案の根本方針
 中根式速記法立案の根本をなすものは「日本語は漢字と仮名であらわされるから、この両方を最も簡単にしなければ優れた速記法はできない」というのがその骨子である。そして、「文章から漢字の部分を除けば、仮名の部分として残るのは少数の助詞、助動詞、形容詞の語尾」ぐらいのものである。従ってまずこの多数の漢字の処分の解決が先でなければならないという理念に基づいて立案の方針が決定された。
 そこで音訓二様まことに複雑きわまりないこの多数の漢字処理のための究明に大なる努力が払われ、苦心の結果、遂に2音からなる漢字の尾音は「インツチクキ」なりという一大鉄則の発見となり、この音を短縮する方法として、逆記による「インツクキ法」の創見を見るに至ったのである。次いで、漢字の訓読みの場合の処理方法としては訓読転化法や節音法が考案され、最後に仮名の部分の処理方法として特に漢字と仮名の部分との連綴運用の妙を期するためには単画でなければならないという結論のもとに50音の1音1線が配定された。それに続いて、漢字音から来る長拗音はウ音の逆記の形をとり、助詞、動詞、最大線、加点助動詞法等々斬新なるアイデアによって、その効用極めて大なる根本法則が案出されたのである。
 中根式創案発表当時、在来の方式はおおむね「言葉は音と音との連続である」という建前から、まず50音を先に決定し、法則らしきものは「同行縮字」ぐらいのもので全てを略字に頼らざるを得なかったのに対し、中根式が言葉をあらわす文字の科学的検討に始まり、字音の性格を明らかにして、まず法則を考案し、理論的本画短縮に必要なる50音の配定をその後に決定したというところに、そもそも在来のものとその立案の根本方針を異にしているものであって、方式構成の大法則があくまでも科学的独創的なるところに、私の言う本式の独自性があり、従って創案の名称を冠してはばからない中根式速記法の中根式たるゆえんの存するところである。
 
3.法則
〔第1図〕
※基本文字表は省略
1)基本文字の構成
 50音の基本文字は第1図のごとく
 ア列×2=オ列  イ列×2=エ列
 ア列の反対または濃くしてイ列
 ウ列はオ列+点  クツフユは例外
となっているが、基本線に示された5方向の長短(一種線及び二種線)曲直、濃淡、加点によって構成されている。その特長とするところは母音も子音も等格の線を配当して連綴の際インツ(チ)クキ符号を逆記し、さらに末尾は助詞符号によって縮字するに便ならしめたところである。本式で符号というのは大円、小円、楕円、大カギ、小カギ等のことである。
 
2)濁音及び半濁音
 濁音は濃線をもってあらわし、グブヅは正側中部に加点とする。半濁音は正側に小半円をつける。
 
3)長拗音
 第1図基本文字ア列、イ列、ウ列、エ列、オ列各列の文字の頭部に直線は正側、曲線は内側に大カギをつけて長音及び拗音をあらわす。ウ列及びオ列は普通の長音に読み、イ列及びエ列は拗長音、ア列は拗短音に読むのである。
〔注〕例外「タ」「ト」の負側に大カギをつけて「シュ」「ショ」と読み「デ」の正側につけて「リョ」と読む。その他拗短音が長音と同形になる場合、直線は負側、曲線は大カギに内に加点する。
 
4)インツクキ法
 漢字のうち、2音からなるものは逆記法で書くのがインツクキ法である。この逆記法というのは例えばA音+B音となっているとき、B音を符号であらわしA音を基本文字で書き逆記、つまりカイと書くのにカの基本文字の頭にイの符号を書いていくという書き方である。この逆記法こそは中根式の一大特長とするところの全く独創的なる縮字法の1つであるる。なお、これは漢字音のみに限らずインツ(チ)クキの音ならばあらゆる場合に活用して差し支えない。
〔イの書き方〕ある音の次にイの音が来るときは、そのある音の頭部に大円をつける。第3音あるいはそれ以下の場合も同様である。
〔注〕直線は正側、曲線は内側(以下同じ)
〔ンの書き方〕ンを持っておる音は全て頭部に小円をつける。
〔ツの書き方〕通常ツの音が2音目に来るときは頭部に小楕円、第3音目以下に来る場合は空間とする。なお、詰音の書き方は前字の末尾と後字の頭部を交差し、同方向の直線は平行するように書く。
〔チの書き方〕2音目に来るチの音は結び小円とし、3音目以下に来る場合はンの小円を書き外側に加点する。
〔クの書き方〕2音目のクの音は角カギとし、3音名家は角出カギに書く。
〔キの書き方〕キの音はチの書き方と同様で、チの場合の小円をキき結び大円とし、3音目以下は大円内加点または詰音の書き方のように交差する。
〔注〕拗短音とクなどの詳細は著書参考せられたし。
 
5)助詞
 文字の書き始めを活用する「インツクキ法」に対し、書き終わりを活用して縮字するのが本式の助詞の書き方である。
 
6)上下段法
 中心線の上下の位置を活用するので、上下段法というが、上段には訓読転化法によって漢字の訓読を音記し、歌壇には動詞、助動詞を略記する。
 上段の訓読転化法というのは例えばワタクシ―私―シ、カエリミル―顧―コ、ウケタマワル―承―ショウ(セウ)などのように1字からなる漢字の訓読みを字音で上段に書き、反文の際、訓読みするする方法である。これは普通の理解力を有する者なら同音のものを幾字活用しても文意文勢によって判読でき、すこぶる融通応用のきく縮字法であると言える。下段にはコレ、カラ、ヨリ、ナリ、タリなどのラ行省略及びアル、オル、イル、スル、ナケレバナランなどにおよそ30字の基本文字を特定の読み方に活用する。
 
7)節音法
 訓読みの言葉で3つ以上の節音からなるものを節音語というが、この2つの節音を結ぶとき、中間に小カギを用いて縮字する。例えばワガクニの場合、ワとクの基本文字の中間に小カギを入れて書く方法で、また中間小カギ法ともいう。これまた応用自在で活用は広い。
 
8)最大線
 基本文字を第三種線に活用して省略する方法を最大線と称し、文例で明らかなように、言葉の中には初めの1字がはっきりしておれば次の字は□でも文意文勢によって間違いなく正確に判読できるものがたくさんあるが、こういう判読に差し支えない言葉の最初の1音を長い線つまり最大線にして、後の字は省略するのである。この最大線の活用は節音法と同様、その効果大なる省略法ということができる。
 
9)加点法
 速記文字そのものの位置に加点し、特定なる省略をなす。語尾の変化は加点の位置に第四種線(最小線)を活用する。
10)加点インツクキ法
 4音からなる音読熟語を位置と符号によって省略する方法で、第1音は基本文字で書き、第2音目は位置であらわし、第3音目を省略して、第4音目は園生とをあらわす符号を用い、書くときには符号から先に書く。
 
11)交差・平行法
 成句をなして特に頻度の高い言葉の頭音を交差または平行に書く省略法。例えば鳩山内閣総理大臣ならハ・ナ・ソ・ダをそれぞれ交差、機会均等ならキ・キをそれぞれ平行に書く方法である。
 なお、「一日も速やか」とか「火を見るよりも明らかに」などのように非常に長い文節の言葉を省略する方法としてイとス、ヒとアをあたかも紐を結ぶように書く紐書き法あるいは連結法と称する省略法もある。いずれもその効用大なる縮字法の1つである。
 
12)符省法
 長拗音、「インツクキ」の音をあらわす本来の符号を省いて接触、交差、空間によって書く方法。わかりやすい2〜3の例を挙げてみると、コウトウと書くのにコの中部にトを接触さして両大カギを省略し、タイカイならタの中部にカの頭をちょっと交差して両大円を省き、センモンと書くときはセの中部に1ミリぐらいの空間をおいてモの字を書くことによって両小円を省略するという方法であって、○イ○ウ、○ウ○イ等々中根式根本の法則性は極めて発展的に展開することができるのである。
 
4.結語
 以上、大体中根式速記法の誇る主なる紹介である。この他、動詞、四字詰音一線化、加点字略法、数詞、冠上法、抄下法等々、「通俗中根式速記法」以後真摯なる中根式研究者によってなされた研究が残っているが、これについては紙数の都合もあるので、次の機会に譲りたいと思う。本式の真価については、その発表当時、斯界の権威熊崎式創案者熊崎健(※一郎)先生が直ちに書を寄せて「幾多斬新なる法則あるが中にもインツクキの妙用には只管敬服の他無御座候、是等独創的御発明に対し満腔の敬意を表し申し候」と推賞されたのであるか、これこそ一知半解の妄評と異なり、本式の真価を評し得てまた妙なるものあると思うのである。
 本稿は限られた紙数と匆々の間にまとめたため、その意を尽くさず、法則の説明も不十分なるものあることを本式関係者にお詫びしながら擱筆いたします。(昭和32年5月13日)
 
 
2005/04/03 (Sun) 文献紹介 50音符号に関する問題点
 中根速記協会研究誌「ステノ」No.1(昭和32年8月4日発行)において荘戸繁土(ショートハンド)さんが「50音符号に関する問題点」について書かれております。小見出しはありませんが、1〜16について述べられております。中根式関係者には参考になりますので、ご紹介いたします。
 速記文字は掲載いたしませんので、「速記基本文字総覧」をご参考にしてください。
 
 昭和32年に「50音符号に関する問題点」を書かれた荘戸繁土さんをどなたか詮索するつもりは毛頭ありません。
 池田正一先生がおっしゃるように「野心的研究」ではなく「後進者へのよりよき遺産」を残すために、中根式関係の資料を後世の速記界へ伝えることは大変に意義があることだと思います。
 中根式関係者のみならず速記方式を超越して読むべき資料だと思います。
 48年前に書かれた内容ですが、現在でも十分に通用する内容です。
 
  
 50音符号については、既に諸先輩によって、ウ列加点符号に対する研究とか、濃線排除に関する研究が行われてきた。
 森 卓明氏は昭和7年8月29日発行の「速記研究」第92号(京都速記研究所刊)で「方式の一部改変について」と題して論文中、第1図に示すような案を掲げている。大きさは短線ナ・マなどの曲がりを深めたものである。
 (※速記基本文字総覧「中根式表象法」のウ・ス・ヌ・ム・ル・ワを参照)
 
 これが発表された翌年、即ち昭和8年4月15日発行の前記「速記研究」第100号の誌上で、浜田喜一氏は「加点基本文字改正私案」として第2図の案を提示している。「除点四種線」と銘打ってあるように、いわゆる“最大線”を取り入れた行き方である。
 (※速記基本文字総覧「浜田案」のウ・ス・ヌ・ム・ル・ワを参照)
 
 一方この四種線に対して一種線いわゆる最小線を取ったのが中根正雄先生である。(先生は正世を正雄と改名された)「中根式速記」(中根正世著)によると「ウスヌムルの代字」として「最小線」(長さ1ミリくらい)にして書き、加点省略。わかりにくい場合は小半円にして書きます。長音になった場合は小カギをつけます。」と述べている。第3図に示したのがそれである。
 (※ウ・ス・ヌ・ム・ルは、オ・ソ・ノ・モ・ロを1ミリくらいで書きます。)
 
  
 以上は中根式として研究発表されたものであるが、前述の森案、浜田案の発表された直後――昭和9年に発表された土田式なるものがある。「日本速記方式発達史」(武部良明氏著)によると
 土田利雄氏は中根式の速記者として衆議院に働き、遂にその成長を一段落つけて昭和9年「土田式速記法」と自己の名を冠した1人である。
とあり、
 そこで氏はこれに大成長を断行した、その改良の主なる点として上げた9つの中、基本文字に関するのは第3で「基本文字の長さ及び角度を改め、濃淡の区別をなくしたこと」になる。その構成はア列×2=オ列 イ列×2=エ列は、全く中根式のままにとどめ、濃線を廃したため〔チ〕及び〔ノ〕が例外となっている。さらにウ列の加点線の補いとして最大線を活用し、もって〔ウ〕〔ネ〕〔ユ〕〔レ〕〔ワ〕などに当て、後に説明する酒井式によって初めて用いられた楕円的な基本文字を〔ス〕〔リ〕〔レ〕に当て、大川式の半円を〔ヌ〕〔ム〕に当て、中でも頻出度の低い〔ミ〕〔メ〕に加線を施して行った。(原文のまま、ただし誤字は訂正)
と説明を加え、第4図のような50音符号を示しているのである。
 (※速記基本文字総覧「土田式」を参照)
 
  
 土田式の50音符号には、多分に中根式の面影が残っているが、濃線排除、ウ列加点符号除去の研究に入った他の先輩達はどのような結論をつかんだであろうか。国字常弘氏の国字式(昭和6年2月11日発表)と最近中根式から分派した石村善左氏の石村式を眺めてみよう。
 国字式では第5図のようにウ×2=ク ス×2=ツ ヌ×2=フ ム×2=ユ と初めてウ列符号配置に関連性を持たせるほか、いわゆる自然線というべき曲線をマ行以下に配置した。
 また石村式は種々発表以来変更されながらも、国字式が用いた線を採用するとともに、森氏の示した曲がりの深い曲線にヒントを得て、これをウ列に配した。
 とにかく、この両式に見るように1音1字1画の純単画派の50音符号としての体裁は整えることができた。
 (※速記基本文字総覧「国字式」及び「石村式」(1957年型)を参照)
 
  
 さて、私はそれぞれの先輩が行った諸研究を紹介してきたわけであるが、先輩の研究したウ列加点符号除去のため、50音符号を改変するほどの必要性は今のところ感じていない。それらは加点符号縮記法(私はウスヌムル尾音記法と呼んでいる)によって、その大半は簡略され得る。また濃線の排除については、ウ列加点符号ほどの困難さは感じない。速記入門後僅かの期間で、これらの線は、淡線と同様に書記し、判読することが可能であり、その区別をしなければ絶対に誤訳する誤り<例えば、タラナイとタリナイなど>は、濃線以外の方法で区別することができる。
 従って、私の50音符号に対する研究は、以上紹介した研究とは違った角度から取り上げてみようとするものである。
 それは頻度に応じて、書きやすい線が50音に適正に配置されているか?の点である。
 
  
 他式の者のが、中根式の書体を一見して、¯の線多い符号だと評する。しかしながら50音中¯線はサシスセソタトの7音にすぎず、?線はキケラリルレロヤユヨワの11符号、®線はフツアイウエオの7符号である。50音の各線が平均して使用されるとすれば、¬®¯線の使用率は18対7でなければならない。ところが50音中、よく使用される音と、そうでないものがあったり、例え発音されても、縮記法や略記法によって書かれなかったりして、実際には¬®は線と¯線の使用率は同数になるのである。第一表の数字がそれを物語っている。
 
(※注意)
※→ はカ、コ、ナ行、マ行。¯ はサ行、タ、ト。¬ はキ、ケ、ヤ行、ラ行。® はア行、フ、ツ。↓はク、チ、テ、ハ、ヒ、ヘ、ホの基本文字の方向を表記します。(菅原 登)
 
 第 一 表
    通俗中根式速記法 中根式速記  速記の基本教程
    (中根正世著)  (中根正世著)(中根洋子著)
→ 線   33       21       27
¯ 線   36       20       40
® 線   20       8       16
¬ 線   21       10       25
↓ 線   33       14       11
(各著書の最後に掲げられた速記文例によって統計した)
 
 以下に頻度とか縮記、省略法とはいえ、僅か50音符号中7符号しか占めていない¯線が、18符号もある¬®と同じ率で使用されているということは、¯線を当てたサシスセソタトの符号がよく使われることを意味するものではなかろうか。
 それでは、¯¬®線は、どちらが書きよいかという問題になってくる。¯線が¬®線に勝って書きやすいとするなら、中根式の50音符号は、その符号の頻出度(音ではない、符号の)に適正に配置されていると言えるであろう。¯線中(※基本文字のタ、シ)などの短線は、さほど書記上障害回復感じないが、その他の符号は¬®線のどの符号よりも書きにくさを感じるのは、私1人ではあるまい。
 とすれば、使用度数の多いサ行を中心にして¬®線が強調されるように改編することは、果たして可能であろうか。私は理論的には可能であると思うし、試案を示すこともできる。しかし、この50音符号の改変以上に厄介な問題が起こってくる。この厄介な問題とは何か。それに対する私の見解はどうなのか。まずそれらの問題から明らかにしていこう。
 
  
 それでは、¯線と¬®線は、どちらが書きよいかという問題になってくる。¯線が¬®線に勝って書きやすいとするなら、中根式の50音符号は、その符号の頻出度(音ではない、符号の)に適正に配置されていると言えるであろう。¯線中\) などの短線は、さほど書記上障害を感じないが、その他の符号は¬®線のどの符号よりも書きにくさを感じるのは私一人ではあるまい。
 とすれば、使用度数の多いサ行を中心にして¬®線が強調されるように改変することは、果たして可能であろうか。私は理論的には可能であると思うし、試案を示すこともできる。しかし、この50音符号の改変以上に厄介な問題が起こってくる。この厄介な問題とは何か。それに対する私の見解はどうなのか。まずそれらの問題から明らかにしていこう。
 
  
 僚誌「速記時代」の前身である「速記」の3号(昭和24年6月号)で協会本部の池田正一氏は、そのトップ記事で「研究発表を待望す」として、次のような一文を発表している。
 
 どうやら書ける程度に上達すると、ほとんど全ての人々が実務速記に携わってやがて専門速記者への途をたどり、その中でほんの少数の人々がさらに進んで高次の研究へと志していく。
 この行き方の相違によって研究の方向が自ら違ってくる。前者は専ら基本文字、あるいは基本システムはそのまにした書き方の工夫、改善へと比較的安易な方向を選び、後者は基本文字、あるいは基本システムまでさかのぼって理論的改変の方向へと進んでいくようである。(略)これは極めて少数のようである。
 なぜならば1つの方式で(略)熟達したその技術を拠って理論的に基本文字、あるいは基本システムを全面的に改変するには、それを組み立てるまでに相当の時日を要するばかりではなく、さらに練習、修熟までに長年月を費やさなければならぬし、もし研究がどうやら大成したとしても、我が国斯界の現状では、これをもって1つの権威ある速記方式にまで発展せしめることは極めて至難な業であるからである。
 何となれば1方式として社会的信任を得るには出版、指導、宣伝等々経済的にも、精神的にも到底凡庸のなし得ない莫大な負担であり、あえてこれをしなければせっかく長年月を費やして大成した苦心の研究もただ徒に文献的存在に終わるという結果になるからである。
 
 私は50音符号にまでさかのぼって、その改変を論じているのであるが、まこと池田氏の言うように、それは「至難の業」なのである。
 
  
 幾多の研究が発表されながらも、50音符号に関する研究は非常に少なく、またあったとしても、最初に紹介したように、原型の面影を崩さない程度のものであるのはなぜだろう。池田氏の言うように@新しいシステムに習熟するのがまず問題A次に社会的信任を得るための経済、精神両面にわたる苦労の点、この2つの点が、それをなさしめないのであろう。殊に新しいシステムをつくり出すためには、机上の理論だけではだめで、研究者自身相当高度の速記ができなければならず、実務についている場合には、50音符号中1符号でも改変しようものなら、実務に差し支えるので、少々自己の修めた符号に不便を感じても、目をつぶってしまうのが実情であろう。
 さらに私は池田氏か挙げなかった、もう1つのブレーキが存在することを否定できない。それはかつて森 卓明氏がいみじくもその著書「超中根式速記法」で述べたように、自己が現在修めている方式の創案者に対する精神的なつながりの面である。森 卓明氏が述べた一文を引用しておこう。
 
 この50音図に対しては非常に敬意を払い、永久に変更しないということが何より我々学徒の義務であらねばならぬ。いかなる式でも50音図は創案以来たびたび改変されている。創案者も変更すれば学徒も改変する。しかるに中根式においては発表以来17年間(筆者註=現在では40数年間)1回の改変もしない。これは非常な強みであると思う。願わくば今後とても多少の不便はあっても永久に改変せられざむことを、これ創案者に対する何よりの記念碑であり、謝恩塔である。
 
  
 真の研究というものは、経済的、精神的面に拘束されず、ただ理論的に究明するものでなければならぬであろう。しかし私にはそこまで撤し切れない弱さがある。前に引用した先輩達の言葉は、私には相当なブレーキとなってのしかかる。一方多くの後輩に速記を指導する場合、いかにすれば短時日で完成させるか、もっと書きやすい符号はないかということが頭から離れない。私はここで大きなジレンマの谷に落ちるのである。
 私はその谷底でこう考える。さらに書きやすい符号があるとすれば、それを教えていくのこそ、「創案者に対する何よりの記念碑であり謝恩塔で」はないだろうか、と。
 それがあらぬか、私は最初に第一図で掲げた森 卓明氏のウ列符号改変案の発表に当たって、森氏は次のように述べている。
 
 いつまでも不便を忍びつつ旧式の道具を使っていることは考えものであるから、どこまでも速記文字は速記する道具であるという見地に立って実用に即して徐々に改変を加え徐々に覚えやすく書きやすくその方式の簡単にして実用上最も適するようにしていくということは何式を奉ずるものであるというイデオロギーにとらわれざる限りこれは我らの常に心して置くべきことであると思う。
 
  10
 これは森 卓明氏が、その著書「超中根式速記法」第二編基本文字第一章の50音図で、「願わくば今後とても多少の不便はあっても永久に改変せられざむことを」と呼びかけ「これ創案者に対する何よりの記念碑であり謝恩塔である」と断じてから1年後のことである。私はこの全く相反した言葉が、それも1年後に述べれたということに、何ら驚きはしない。森氏は「超中根式速記法」の中で“改変しないよう”呼びかけたとき、既に現在の私と同じようなジレンマに陥っていたに違いない。そして氏は自分の心の悩みに自ら終止符を打とうとして、ああした一文を書いたのではなかろうか。しかし、それでもなお氏の研究する心を止めることはできなかったのである。氏はその1年間随分と苦しんだことであろう。そして昭和7年8月第一図の案を9で引用した文章とともに発表するには相当の勇気が必要だったろうと思うのである。
 
  11
 森氏の昭和7年8月の改変の弁の中に、私はただ1ヵ所疑問を残すものである。それは「何式を奉ずるものであるというイデオロギーにとらわざる限り」「徐々に改変を加え」るという言い方なのである。<自己の修めた方式から離れることを前提として>というふうにこの言葉を取るのは誤っているだろうか。いや私は森氏が中根式から分派することを前提としたとか、どうかとかというこを言おうとするのではない。一般論として「何式を奉ずるというイデオロギーにとらわれざる限り」そうしたことが許されるのであろうか。イデオロギーにとらわれる者は、それじゃどうなるのだろう。私は絶対中根式を奉ずるというイデオロギーを変えない。ただ、その50音符号にまで立ち入っての研究をやりたいのである。
 ここで、また新しい問題が提起される。50音符号の改変は分派を意味し、新しい方式の誕生と言えるのかどうか、という問題である。
 
  12
 仮に、ここに50音符号だけを改変して、それ以上の法則は既存のある方式と何ら相違ない試案があるとする。これを何と見るであろうか。新方式と見なすだろうか。それとも既存方式の域を脱せぬものと見なすだろうか。まるでコウモリ的な方式になりそうである。また50音符号はそのままで、それ以上の法則が、違っている試案があれば、これはどうだろう。50音符号だけが違っていて、他の諸法則が同じだということは、あり得ないと、簡単には片づけられない。諸法則には改変の余地がないが、50音符号中にはどうも感心しない線があるということは考えられることである。殊に最近のようにいろいろの研究が盛んになると諸法則は大体似たり寄ったりのものになってくる。今まで禁断の園とされた50音符号に、研究のメスが加えられないと、だれが断言できよう。こう考えると、新しい方式とか、そうでないとかいう基準は、単に50音符号のみによって判断されてはいけないという結論が出るのではなかろうか。
 
 なるほど50音符号で判断するのは、最も手っ取り早いことではある。あたかも人間の顔のようなものである。しかし早い話が、整形手術などが発達して、同一人でも見違えるような顔立ちになることができる。要は50音符号から諸法則に一貫して流れる「立案の根本精神」とでもいうものを判断の尺度としなければなるまい。50音符号は同一でも――顔、形は前と変わりなくても、諸法則が違っている。精神が違ってくれば、もはや新方式だと断ずべきではなかろうか。
 
  13
 協会本部長の池田正一氏は、昨年の10月20日に開かれた日本速記協会第2回教育委員会で、委員の一員として日速協推薦方式決定に当たり
 
 同一系統の方式であって、ただ小部分の改変を行ったにすぎなかものをもって○○式と名乗っているものがあるが、これは推薦方式決定の場合作に留意するように。
 
との意見を述べている。「小部分の改変」とは、どの程度を指すのであろうか。50音符号の改変も含めてのことだろうか。(一部の意見として、50音符号中1/3までの改変は同一方式と見なすという案もあったやに記憶する)また、小部分の改変によって○○式と名乗っているものは、新方式としての○○式を認めず、母式名を名乗れというのか、それとも○○式と名乗らせてはおくが、日速協推薦方式にはしないように、というのか。その○○式から日速協A級合格者が続出し、実務家が出たとしても……。
 
  14
 「日本の速記」の本年6月号で、協会本部長の池田正一氏は「我が式の誇る省略法」という論文を掲げ
 
 中根式が言葉をあらわす文字の科学的検討に始まり、字音の性格を明らかにして、まず法則を考案し、理論的本画短縮に必要なる50音の配定をその後に決定したというところに、そもそも在来のものとその立案の根本精神を異にしているからであって……
 
と述べており、これこそ「創案者の名称を冠してはばからない中根式速記法の中根式たるゆえんの存するところ」と言っているのである。だとすれば、中根式においては、50音符号は、その立案の根本方針を満足させるための一手段であって、大切なことは50音符号が単画でさえあればいいとまで極言できるのではなかろうか。
 
  15
 さて、私はそろそろ結論を急がねばならない。理論的に50音符号の改変は可能だとしても、まずその前に現行¯線に当てた音――サシスセ……タトを、¬®線に置きかえて、果たしてその連綴に現行以上の効果が生ずるだろうか。創案者はわざとサシスセソタトをあらわす符号を¯線に置いて、→線的感覚に近づけようとしたのではあるまいか。(当初は¯線は45度線であったのを正雄先生により30度に改めたことは、→線的センスへの移行と考えられぬだろうか)仮に¯¬®の音を置きかえが成功したとして、しかもそれが中根式として普及されるとして、現行符号で学習し、また実務についている者との調整をどうするか。現在発行中の教科書をどうするか。考えられ得るいろいろの混乱にどう対処するか。考えれば考えるほど、50音符号をめぐる問題点は大きく深いのである。
 
  16
 最後に私は、本部長池田正一氏の24年6月の「研究発表を待望す」という文章の結びを引用しておきたい。
 
 しかしながら斯道に携わってその恩恵に生きる者として、そのいずれの方向(註=縮記、略記法の研究と50音符号にまで立ち入る研究)を選ぶにしても、ためにする野心的研究ではなく、大乗見地から、後継者へのよりよき遺産として、ひいては我が国速記界の向上発展に寄与する意味において真摯な研究発表を切望してやまないものである。
 
 まこと「ためにする野心的研究」ではなく「後進者へよりよき遺産」としての、50音符号に立ち入ってまでの研究が、この誌上を通じてなされることを、私も切念する。
 「後進者へのよりよき遺産」としての「ステノ」たらしめたい。その意味で、私はあえて問題多い50音符号についての研究へのヒントとその障害を提起してみたのである。
 
(昭和32年7月4日)
 
 
2005/03/28 (Mon) サウスポー用の速記
 速記界の大先輩・兼子次生さんから、サウスポー専用のホームページをご紹介いただきました。
 
 アメリカのGregg式です。
 
 Left Shorthand Book には、Left Version Normal Version が紹介されております。
 
 Left Shorthand
 http://www.werelight.com/shorthand/
 
です。まだ我が国にはサウスポー用のテキストはありません。興味がある方は、サウスポー専用のホームページをお薦めいたします。
 
 
2005/03/27 (Sun) 速記資料のまとめ方
 速記資料のまとめ方には下記の方法があります。
1.1つの速記法体系を基本体系にしていろいろな書き方を上乗せして作成する方法。
2.1つの法則体系をそのままの体系で作成する方法。
 
 1.の作成方法はいろいろな法則を法則ごとに出典を明らかにして1冊の資料としてまとめていく方法です。
 例えば、同じ法則でも、Aの体系、Bの体系、Cの体系というようにまとめていく方法です。
 私が作成した資料では「中根式速記法体系」が相当します。
 
 2.の方法は各法則大系を1冊ずつに作成する方法です。他の法則体系を入れないで資料をそのまま作成する方法です。
 私が作成した資料では「中根式速記法資料編」1〜13巻に相当します。
 
3.自分が使用している体系をまとめたものです。Aの体系、Bの体系、自分で考えた書き方などを折衷した体系です。私が作成した資料では「NAKANE Kurzschrift」及び「中根式速記法教程」がこれに相当します。
 
 ここで、重要なことは、この法則体系はAの体系、Bの体系と出典を明らかにしておく方法です。
 
 また、速記の資料を作成する場合には、ある程度の共通した形にしておくことも必要です。
 特に「中根式速記法資料編」1〜13巻のようなシリーズものには、共通した形にしておくことも必要です。
 
 作成した資料をコピー機でコピーする作業は莫大な時間がかかります。一度、作成した資料を数部コピーする時間は莫大ですが、PDF版として保存しておくとCD-Rに焼きつける時間は短時間で済みます。
 最初のPDF化作業は非常に時間がかかりますが、後々のことを考えれば一時的な作業です。毎日10ページずつ作業を行えば10日もあれば100ページの作業が終わります。
 100ページを1日で作業完了させると思えば精神的にも苦痛になります。
 
 昭和59年7月に「中根式速記法体系」を20部コピー作業をしましたが、B5版で374ページ(改訂版は415ページ)でしたが、コピー機を持っていなかったので、店でコピーをしました。途中でB4判の用紙がなくなり3回に分けてコピーしました。コピーが1枚10円だったと思います。
 B4判の用紙を2つ折りにして丁合作業、製本作業をしました。製本はパンチで穴を開けてファイル3冊に分けました。
 PDF版では25.6MBです。CD-R1枚に焼きつける時間は約3分ぐらいです。
 ちなみに約150MB(B5版で約2600ページ)の容量をCD-Rに焼きつける作業時間は約4分程度です。
 1時間もあれば10枚以上は焼きつけができます。
 PDFファイルの最大の特徴は、
1.かさばらない。場所を取らない。
2.短時間でCD-Rに焼きつけ作業ができる。
3.原価が安い。送料も安い。
4.余分な在庫を抱えない。
5.1枚のCD-Rがあれば簡単にコピーできる。
 
 
2005/03/26 (Sat) まなびの達人・あそびの達人
 
平成16年12月22日
財団法人社会通信教育協会
会 長 須 郷  進
                            人材バンク委員会
委員長 井 出  久
 
第5次「まなびの達人・あそびの達人」調査表の提出について
 
 当協会では、平成13年度から文部科学省と協議し「まなびの達人・あそびの達人」という称号制度を定め、全国各地の生涯学習インストラクターの皆様に、その称号を付与する事業を進めてまいりました。
 そこで本年度も「まなびの達人・あそびの達人」の選考を進めた結果、あなた様を第5次「まなびの達人・あそびの達人」の認証候補者として推挙することを決定しましたのでお知らせいたします。
 つきましては、第5次「まなびの達人・あそびの達人」として認証を受けていただきたくお願いするとともに、所持多端の折りとは存じますが、この認証に必要な別紙「調査表」にご記入いただきご提出をお願いする次第です。
 (最終決定は、財団法人社会通信教育協会会長、ならびに人材バンク委員会で1月中旬に審査会を開き正式決定の運びとなりますので、ご了承ください。)
 この認証制度は、生涯学習インストラクターの中から、自ら学ぶことを継続し、一芸に秀で、さらにボランティア精神が旺盛で、地域や学校等で活躍実績のある方を選出し、「まなびの達人・あそびの達人」として称号を付与しているものです。平成13年度から始まって以来、全国で891名の方がすでに認証を受けております。あなたも栄誉ある認証を受け、生涯学習社会の発展・推進にご活用いただければと願う次第であります。なお、この認証に関する費用は一切かかりませんことを申し添えます。
 以上、趣旨をご理解の上、別紙「調査表」にご記入の上、折り返しご返送ください。また認証式を、平成17年5月26日(土)東京・ホテルオータニにて行います。この認証式への出欠のご予定も合わせてお知らせいただければ幸甚です。
 なお、第5次「まなびの達人・あそびの達人」決定名簿を作成し、文部科学省生涯学習政策局し、同省内の記者クラブに配布し、全国にあまねく周知していただけるよう発表しておりますので、ご了承ください。
 
という書類が財団法人社会通信教育協会から届きました。
 
 
調査表「まなびの達人・あそびの達人」資料
 氏名/性別/年齢/指導分野/インストラクター登録番号/生年月日/年齢/住所/電話・FAX/Eメール/勤務先・役職 住所/導分野以外の資格・特技などを記入しください。/ボランティア的要素のある参加。主催団体名・役職名を記入してください。/この間の生涯学習推進活動記録。地域活動記録や学校活動支援活動など。
 
などを書き込む欄があります。私の指導分野は「生涯学習」ですし、インストラクター登録番号は、生涯学習1級インストラクター(生涯学習)の資格証に記載されております。
 また指導分野以外の資格・特技は「速記」意外に持っておりません。
 ボランティア的要素のある団体は、社団法人日本速記協会調査部ライブラリアン、社団法人日本速記協会北海道支部生涯学習担当理事、北海道速記士会文献調査担当理事、旭川地域生涯学習インストラクターの会事務局長ぐらいです。
 この間の生涯学習推進活動記録は、書き切れないので「別紙」にしました。
 
 私が書いた「まなびの達人・あそびの達人」の調査表には別紙で下記のことを書きました。
 
専門分野/「速記教育」及び「速記研究」
専攻科目/「速記史(日本史)」及び「速記方式学」
 中学・高校時代から独習・通信教育で、早稲田式及び中根式の通信教育を終了しております。高校卒業後は、東京の中根速記学校へ進学して卒業しております。また中根速記学校では夜間部の講師をしております。
 私は約40年間速記を学問的に追究してきましたが、同時にいろいろな速記関係の文献等の収集を行って、速記関係の資料等を作成してコピーなどで速記関係機関及び速記仲間に無償で配付しております。
 今まで速記界で学習及び情報収集した知識をおすそ分けするためにホームページ「速記道楽」を開設して、速記の楽しさなどを伝えております。
 ホームページは、速記が大好きな仲間と立ち上げました。私が管理人をしておりますが、管理人は「原稿作成」、相棒は「ホームページ作成」と、作業を分担しております。
 速記サイトとして、初めて二人一組の完璧な分業化体制を築き上げております。
 個人のホームページでは、実名ではなく書き込み等はハンドル名が慣例になっております。私の場合は速記界で本名よりもペンネーム・菅原 登でも通っておりますし、速記関係の機関誌等にもペンネームで投稿しております。ハンドル名も「管理人」を使用しておりますし、速記仲間が運営する速記サイト(速記学習者専用)と連携して原稿を提供しております。
 ホームページの名称は、一見ふざけたような名前をつけておりますが、中身はかなり固いものです。閲覧対象者は入門者からプロ速記者・指導者及び研究者まで幅広い内容です。
 
「速記道楽」
 URL http://www12.ocn.ne.jp/~sokkidou/
です。他の速記サイトと比較しても、掲載している原稿は内容的、技術的にも見劣りはしないと考えております。
 
 また、地元においては、旭川地域生涯学習インストラクターの会の事務局を担当しており、平成16年10月17日に旭川地域生涯学習インストラクターの会主催で「速記入門講座」を行いました。
 旭川市教育委員会生涯学習課「生涯学習情報」では、速記の講師として登録しておりますが、旭川市近郊では速記を学習したいという希望者が少ないので、地域を限定しないでホームページ「速記道楽」を通して活動しております。
 ホームページでは、私が使用している中根式を中心に掲載しておりますが、速記のテキストを無償でダウンロードができるようにしております。
 また、特技ボランティアとして速記入門コースを設けておりますので、希望者には電子メール及び速記文字が入る場合には画像ファイルを作成して添付ファイルで質問等に応じております。
 
 速記界では社団法人日本速記協会調査部ライブラリアンとして、速記関係文献目録の調査を担当しており、昭和58年の日本速記発表100年記念及び平成14年の日本速記120年記念には「速記関係文献目録」作業に携わっております。
 社団法人日本速記協会北海道支部生涯学習担当理事として、速記を生涯学習の立場から捉えてホームページ「速記道楽」で速記の啓蒙活動を展開しております。
 
 以上が「この間の生涯学習推進活動記録」の別紙です。私の誕生日1月12日に書類を提出しました。
 
 

 
平成17年1月20日
財団法人社会通信教育協会
会 長 須 郷  進
 
「まなびの達人・あそびの達人」認証について(決定通知)
 さて、第5次「まなびの達人・あそびの達人」選考審査会におきまして、あなた様を「まなびの達人・あそびの達人」として認証することに決定いたしました。まことにおめでとうございます。
 心よりお祝いを申し上げ、ご連絡といたします。
 
(中略)
 なお、文部科学省では「まなびの達人・あそびの達人」の趣旨と今後の推進体制、第5次の達人の方々のお名前・ご住所と指導分野・資格特技等を、近日、記者発表する予定になっていることを申し添えます。
 
 
第5次「まなびの達人・あそびの達人」認証式
  日 時:平成17年2月26日(土)11:00〜11:45
  会 場:ホテルニューオオタニ 翔の間
       東京都千代田区紀尾井町4−1
  主 催:財団法人社会通信教育協会
 
 式 次 第
 あいさつ 財団法人社会通信教育協会会長 須 郷  進
 認証授与 「まなびの達人・あそびの達人」認証状 須 郷  進
 祝  辞 文部科学省生涯学習政策局 生涯学習推進課長 縺@原  靖
 閉  会
 
 
 まなびの達人・あそびの達人の「認定証書」には、下記の内容が記載されております。
 
「認定証書」
まなびの達人・あそびの達人
    ○ ○   ○殿
 あなたは生涯学習インストラクターとして生涯学習の推進に尽力されました学校週5日制の実施に伴い地域や学校における子どもたちのよりよき支援者として期待しここに「まなびの達人・あそびの達人」の称号を付与し認証します。
 平成17年2月26日
  財団法人社会通信教育協会
      会 長 須 郷  進
 
 

 
 
 平成16年度の第4次「まなびの達人・あそびの達人」では104名が認証されております。
 また、第5次「まなびの達人・あそびの達人」認証者名簿には230名が掲載されております。
 平成17年2月26日現在、「まなびの達人・あそびの達人」は合計1,121名が認証されております。
 「生涯学習1級インストラクター」の有資格者の指導分野を問わず選考の対象になります。
 私は指導分野が「生涯学習」ですので、自分の得意なものを指導できます。
 
 平成17年1月5日現在、生涯学習インストラクター登録者は、22,070名おります。
 生涯学習1級インストラクター……3,887名。
 生涯学習2級インストラクター……18,183名。
 
 指導分野は事務系分野(統計、校正、生涯学習、社労士、衛生管理者、民法入門、マネジメント基礎、中小企業診断士、インストラクション等々)、技術系分野(電気・電子、地球科学、総合盆栽、家庭園芸、新家電修理技士、漢字、宅建、風景写真等々)、生活技術・教養分野(栄養と料理、服装、きもの、英語、書道、ペン習字、古文書、漢詩、ハーブ、ビジネス書法士、音楽通論等々)さまざまな分野にわたっております。
 生涯学習の分野から見れば「速記」は、その一部分です。
 
 私は平成12年12月1日に「生涯学習2級インストラクター(生涯学習)」、平成14年5月1日に「生涯学習1級インストラクター(生涯学習)」の資格を「速記」がらみで取得いたしました。
 今回の「まなびの達人・あそびの達人」の認証も全て「速記」がらみでいただきました。
 HP「速記道楽」を編集長さんと二人一組で運営し、また速記界の先輩方から原稿のご提供をいだいて成長してきました。
 それらの全てのことが財団法人社会通信教育協会に認められて「まなびの達人・あそびの達人」の認証へつながったものと思います。
 
 
2005/03/01 (Tue) 地方における速記指導について その後53年間
 中根速記協会機関誌「中根式速記」昭和27年5月号 復刊35号において、「地方における速記指導について」紹介いたしましす。
 
(前略)
 今まで、地方においての指導に当たって、本部に指導用の出版物が出ていることを知らずに、基本文字をプリントしたり、または指導者がまちまちな教材を作成し、配付しているところもあるやに聞き及んでおりますが、これらは本部の承認なしにやられますと、いろいろな問題や弊害が起こりますので、この際地方の指導者は一応本部と連絡を取っていただきたいと思います。
(後略)
 
 中根速記協会香川県支部発行の「中根式速記法原理」の上巻は昭和26年11月です。
 昭和26年11月から昭和27年5月、つまり「中根式速記法原理」の上巻を中根速記協会本部へ送ったのは12月上旬と仮定して、「地方における速記指導について」が書かれたのは3月末前後と推測できます。機関誌の5月号へ原稿を掲載するならば印刷所で活字の組版、編集者の校正作業などを行いますから少なくとも1ヵ月間は必要です。
 1ページへ原稿を掲載しておりますので、逆算しても3月末には原稿ができていたはずです。
 「地方における速記指導について」で書かれている内容と「中根式速記法原理」上巻は、時期的にも符合しております。下巻のまえがきは昭和27年4月10日に書かれております。訂正版の上巻にはまえがきがありません。
 
 昭和27年5月から平成17年の53年間は、各地でいろいろな中根式のテキスト類が作成されております。
 当サイトの「中根式関係文献」を見ていただくとおわかりのようにいろいろなところでテキストが作成されております。中根速記協会本部及び中根式速記協会本部へお伺いを立てて作成しておりません。
 ほとんどの中根式関係者は昭和27年5月の「地方における速記指導について」は知りませんし、高等学校の速記部、大学の速記研究会等々で自由?に作成しております。
 中根速記協会本部で懸念されたように「いろいろな問題や弊害が起こった」とは思えません。
 全国各地ではいろいろな中根式の書き方ができましたが、使い勝手の悪い書き方は自然淘汰されてきました。
 
 
2005/02/25 (Fri) 拾い読み 中根式速記法原理
 植田 裕/川田秀幸著「中根式速記法原理 上巻/下巻」が中根速記協会香川県支部から発行されております。
 上巻は昭和26年11月。訂正版は昭和27年4月3日、下巻は昭和27年5月3日に発行されました。
 「下巻」のまえがきには、
 中根速記協会香川県支部が、その形を曲がりなりにも整えたのは、敗戦直後の昭和20年であった。
 爾来7年有余あるいは中根正世先生を当地にお迎えして、各高等学校に速記講演をお願いし、あるいは香川県高等学校中根式速記競技大会の開催に協力する一方後進の指導にも微力を捧げてきた結果……
(中略)
 それにつれて支部に関係した人々の研究案が何ほどか提起されてきたことは当然のことであり、その1つ1つについては、激しい消長の過程を経て、今日ようやく、その結果がまとまりつつあるように思える。
 幸い、高松、丸亀両商業高校速記科の教授、あるいは県教育委員会の主催する速記講習会等に機を得て、以上の研究案も含めた香川県支部による中根式速記法の体系を立ててみようと思いつき、それにとりかかったのは、昨年(昭和26年)の8月初めであった。
 そして“中根式速記原理”という中根速記協会香川県支部版上巻が、まず昨年の11月に完成された。下巻も引き続きまとめ上げようと努めたが、実務その他の関係で意に任せず、やっと今日、まとまり終わった。
(中略)
 従って、時間を余りかけずに、上、下巻ともまとめ上げたので叙述の点で疎漏の点が多くあることが、まず第一に上げられ、さらには、研究案をまとめた点は中根式の30有余年の歴史に比べて、その実務経験も、なお乏しく、さらに研究の余地が多分に残されておる点が発表に当たって危惧せられる大きな点である。その意味で断っておきたいのは、この2巻に掲載された、香川県支部の研究にかかる箇所は、本部の事前了解を得ておらず、従って単なる香川県支部のものしたものであり、責任は全て香川県支部に帰するところであり、それらは今後本部の裁定の結果をまって、初めて、その当を得るわけである。
(後略)
 
 「中根式速記法原理」の内容は、従来の中根式とは異なっており、省略法名も縮記法、略記法という用語を使用しております。超中根式以来の大きな研究成果だと思います。
 
 また中根速記協会―速記専門研究誌―季刊「ステノ」No.1(昭和32年8月4日発行)の「編集後記」には、
 5月3日、憲法記念日、東京九段の中根速記学校で開かれた、中根速記協会の新生理事会発起人会の席上、新たに専門速記研究誌を発刊することが決められ、その編集を香川県支部に命ぜられた。
 
と書かれております。中根速記協会本部からは、裁定のさたがなかったようです。
 私には既成事実(中根式速記法原理)をつくってから「中根式の研究をしてもよろしいでしょうか」と協会本部へお伺いを立てているようにも受け取れます。
 当時、中根速記協会本部長の池田正一先生は、中根速記協会では相当の実力者でした。香川県支部のやり方が余りにも堂々としすぎているので感心しております。
 参考までに、池田正一先生は48歳、植田裕先生と川田秀幸さんは24歳でした。
 
 
2005/02/21 (Mon) 拾い読み 日本速記協会推薦方式
 中根速記協会―速記研究誌―ステノNo.1で、荘戸繁土さんが「50音符号に関する問題点」について書かれております。
 見出しはついておりませんが1〜16に分かれております。
 その13の部分で
(前略)
 協会本部長の池田正一氏は、昨年の10月20日に開かれた日本速記協会第2回教育委員会で、委員の一員として日速協推薦方式決定に当たり
 
 同一系統の方式であって、ただ小部分の改変を行ったにすぎなかものをもって○○式と名乗っているものがあるが、これは推薦方式決定の場合、特に留意して選定するように。
 
との意見を述べている。「小部分の改変」とは、どの程度を指すのであろうか。50音符号の改変も含めてのことだろうか。(一部の意見として、50音符号中1/3までの改変は同一方式とみなすという案もあったやに記憶する)また、小部分の改変によって○○式と名乗っているものは、新方式としての○○式を認めず、母式名を名乗れというのか、それとも○○式と名乗らせてはおくが、日速協推薦方式にはしないように、というのか。その○○式から日速協A級合格者が続出し、実務家が出たとしても……。
(後略)
※A級(現在の1級)
 
 「日本速記年表」には、
昭和31年10月20日 日本速記協会教育委員会の第2回会合が東京で開かれ、協会推薦方式として11方式を決定したが、理事会はこれを承認しなかった。
 
と書かれております。