2004/02/28 (Sat) 速記講座 特殊上段
 中根式には「上段」という法則があります。
 1行を3段にわけて、中心線より上に速記文字を書けば「上段」、下に書けば「下段」です。
 
 「上段」には、「一般上段」と「特殊上段」があります。
 中根正世著「通俗 中根式速記法」と、中根速記学校では使い方の意味が違います。
 
 中根正世著「通俗 中根式速記法」では、上段は訓音換記法で書いたものを言いますが、「特殊上段」は、訓音換記法で書いて「インツクキ」の符号を省略したものを言います。
     普通上段  特殊上段
 明らか メい    メ
 寧ろ  ネい    ネ
 例え  レい    レ
 
 中根速記学校では訓音換記法で書いたものを「一般上段」、摘記略法を使用したものは「特殊上段」と言います。
     一般上段  特殊上段
 新しい シんシい  アシい
 寧ろ  ネ 
 
と使用しますが、特殊上段で摘記略法を使用した速記文字は中段に書いても読めます。
 「おもんぱかる(慮る)」は上段で「リョ」と習いましたが、頻度の関係で「訓音換記法」を使わないで「オモんハく」とインツクキ法で書いた方が早いということもあります。
 「リョ」の速記文字を思い出しているよりも、インツクキ法でそのまま書いた方が読みやすい場合もあります。
 
 
2004/02/25 (Wed) 速記講座 助詞
 中根式では「第一助詞」「第二助詞」という速記用語がありますが、最近では「死語」になっていると思います。
 
 「第一助詞」は1音の助詞……ハ、ト、ニ、ヲ、カ等々。
 「第二助詞」は2音以上の助詞……ニハ、ニモ、トカ、トシテモ等々。
のことを言います。
 
 中根正親著「中根式速記法講解」では、「第一助詞」という概念はありませんが、中根正世著「通俗 中根式速記法」では、「第一種助詞」「第二種助詞」という言葉があります。
 
 中根洋子著「中根式 速記の基本教程」では「第一助詞」「第二助詞」と言われております。
 
 中根正世著「中根式速記」では「第二助詞」のことを「連続助詞」と言われております。
 
 稲垣正興著「学生の速記」では、「助詞」、「二音助詞」と呼んでおります。
 
 森 卓明著「超中根式速記法」では、一種線を使用する助詞を「一種線助詞」と「基本文字助詞」に分けております。
 「超中根式速記法」には、「基本文字助詞」について下記のように説明されております。
 
 基本文字助詞とは全く私の命名であって、中根式においては一般に称しないところである。ある種の助詞、助動詞、動詞、接続詞等の音に関係ある基本文字をそのまま助詞記号として本詞の線尾に連綴する、即ち基本文字の助詞的用法であるがゆえに「基本文字助詞」と名づけたのである。
 
と書かれておりますが、私は「第一助詞」と「第二助詞」を一括して「助詞」と読んでおります。
 
 
2004/02/25 (Wed) 拾い読み 速記法則の説明について
 関西学院大学速記研究会「関学速記 POPLAR 速記講座No.12」昭和43年5月発行されております。
 内容は中根式の「省略法概説」ですが、15ページに、M.Hさんが下記のように書かれております。
 
 さて、以上省略法原理を概説的に述べてきたが、いかかであったろう。大多数の人が、初めて知ったということが多かったと思うのだが、いつも思うのだが、他方式の教科書なり、省略集を見ると、実に詳しく省略法の原理なり書き方が掲載されている。それに反して中根式の教科書には、簡単に覚えられるということを売り物にしすぎたせいか、そのような点については、甚だ不親切である。こういうところにも関学の速記研究についての、甘さというものが潜んでいたのかもしれない。
 ちょっと大げさになるが、大学というところは真理探究の場であると言われる。うわべだけの学問なら高校までで十分である。それと同様に大学の速記部というものは、ただ表面的に省略法を教え込むのに終始してはならない。実はこういう姿勢が、我々を含めて歴代の指導部に欠けていたことは否めない事実であろう。
 このささやかな省略法概説を第12回の速記講座に選んだのをきっかけにして次期指導部に、省略指導への一考を要請する次第である。もちろん、そのためには部員諸氏の御協力が必要となる。
(後略)
 
と書かれております。
 
 中根式の教科書は、全体的に速記法則が簡単に説明されておりますが、中根正世著「通俗 中根式速記法」及び「中根式速記」は説明は詳しく書かれております。
 また、中根式速記協会機関誌「中根式速記」及び「速記時代」には、中根正世先生が書かれている、法則の説明は詳しく書かれております。
 
 中根式は法則の説明が簡単にできる方式ですし、速記文字も「基本形」と「変化形」を覚えるように構成されております。
 
 
2004/02/18 (Wed) 拾い読み 読書について
 私が尊敬する速記界の大先輩は、「私の蔵書」の中で下記のように述べています。
 
 1冊、何かの本を読むと、何となくその分野のことはすべてわかったような気になるものである。そして2〜3冊も読めば、自分がその分野のオーソリティーにでもなったようなつもりで得々と人に知識を披露するということもある。しかし、これは危険なことである。どんな分野にしろ、たかだか2〜3冊の本ですべてがわかるということは極めてまれである。
 先日、書斎にこもって分野別に整理し直しながら、こういうことを考えた。
 「10冊読めば自分でわかり、100冊読めば人に話せる。200冊読めば自分の見解を発表することができるようになる」と。
 ある分野の本を10冊も読めば、おおむねその分野のことはわかるけれども、しかしまだ人に話したり説明したりできる程度にまではなっていない。人に説明できるようになるには最低100冊は読まなければならないだろう。そして自分の考えというものができて、その見解を発表できるようになるには少なくとも200冊程度は読まなければならないのではないか。
 
と書かれております。速記関係の書物でも同じことが言えます。1冊の本を何回でも読み返すことは必要なことです。1回目よりは、2回目、3回目に読んだときには、内容も深く理解できますし、読み落としていたところに気がつきます。
 同じ本を何10回も読み返していると、疑問などにぶつかりますし、他の資料を調べてみようという気持ちにもなります。
 中には100回以上読み返した本もあります。そして誤植などに気がつくこともあります。
 
さらに大先輩は、下記のように述べております。
 
 私などはとにかく何にでも興味を示してしまうので、特定分野のものを除けば、書店でふっと見かけたものを購入するといったことが多いのだが、蔵書を整理していると、そこには自ずから一定の傾向を持った形のまとまりが幾つか並ぶことになり、自分でも感心するのである。
 
と書かれております。私の書斎にも特定分野のものがありますが、大体同じ傾向で書籍を購入しております。
 速記関係以外の分野は、今すぐ読むかどうかは別にして、何年か後には読むだろうという前提で購入しているものもあります。あるいは一生涯読まないかもしれません。
 当面、読みそうもない書籍などは段ボール箱にしまい込んでおります。
 
 
2004/02/17 (Tue) 速記の教科書について
 高校の教科書として、文部省の教科書検定を受けておりませんが、中根式では昭和43年3月28日に池田正一/中根洋子/森下 等著「中根式速記」が高校商業科の教科書として発行されております。A5版122ページです。定価は160円でした。
 
 発行所は株式会社市ヶ谷出版社で、発売所は実教出版株式会社です。
 私のかすかな記憶では、実教出版株式会社では商業科目の教科書(商業簿記、商業一般)などを発行していたと思います。
 著者は、池田正一/中根洋子/森下 等さんの共著となっておりますが、速記文字と速記法則体系は森下さんの体系です。
 
 「学習のはじめに」
(前略)
 この本は、京都両洋学園長中根正親が創案し、その弟中根正雄が大成普及した「中根式速記法」をもとに、教科書として再編修したもので、高等学校商業科の実習科目「速記」を文部省指導要領に従って解説し、これに例題と練習題を収録したものである。
 速記を全く知らない商業科教諭でも指導できるよう、具体的で平易な速記上の知識を要領よく配置し、また、例題を読めば、生徒諸君が単独でも練習題と取り組めるよう配慮するとともに、一般人の教養書としての性格も、十分取り入れた。
 
と書かれておりますが、私も高校時代に購入して学習してみましたが使い勝手の悪い教科書の1冊でした。
 
 ちなみに中根速記学校では、中根洋子著「中根式 速記の基本教程」(昭和31年12月25日初版発行/中根速記学校出版部)が教科書として昭和52年度まで使用されておりました。
 
 中根速記学校の授業では「中根式速記」(市ヶ谷出版株式会社発行)に掲載されている法則体系は習いませんでした。
 
 私が中根速記学校の通信教育を受講したときのテキストは中根洋子著「中根式 速記の基本教程」の第8版です。このテキストでは中根式の学習がしやすいように作成されておりました。速記法則が簡単に説明されており非常に使いやすい教科書でした。
 
 中根洋子著「中根式 速記の基本教程」は昭和44年4月1日の第9版が最終版です。
 
 
2004/02/16 (Mon) 文部省検定済教科書 速記〈早稲田式〉
 「拾い読み その6 アマチュアの指導法」では文部省の「高等学校指導要領」の中から速記について書きました。
 昭和41年4月4日に川口晃玉編による高等学校商業科用教科書『速記〈早稲田式〉』が文部省の教科書検定に合格し、言潮社から刊行されました。A5版で157ページの本です。
 定価は113円ですので、当時の高等学校教科書の値段です。
 
 また、昭和42年4月に早稲田速記普及協会『速記〈早稲田式〉指導の手引き』が刊行されました。B5版80ページですが、この本の存在は昭和59年まで知りませんでした。
 
 内容は通信教育のテキスト「早稲田速記講座」と違っていかにも高校の教科書という感じがします。
 
 この教科書は定価が公示価格を超えることができないので、赤字だったようです。
 高校に早稲田式を教えられる教員が少ないなどの理由で、採用数も年間500部を切るようになったため、昭和49年3月ごろまでで発行を中止しております。
(早稲田速記五十年史より抜粋)
 
 私が住んでいる市内には、当時、高校速記部が3校あり、1校は中根式で、2校は早稲田式でした。(現在、道内では速記部が自然消滅しております)
 この「速記〈早稲田式〉」を使用していたのは我が校の速記同好会だけでした。書店に5〜6冊ほど取り寄せてもらいました。
 
 もう1校の早稲田式を採用していた速記部では3年生が「速記講座」で指導しておりました。部員達は黒板に書いた速記文字で学習していました。
 
 我が校では「速記〈早稲田式〉」を全員に私物として持たせておりました。
 私は「速記講座」を片手に指導しておりました。もちろん速記文字を指導する前日には「速記講座」を熟読していましたし、「速記講座」には別冊で「学習の手引き」があり、毎日の「学習指導表」がありました。
 内容は、「目標」「学習内容」「配当時間」「学習上の要点」「講座ページ」「備考」などが書いてありました。
 
 「速記講座」は、発想を転換すれば「指導書」にもなります。
 
 「速記講座」が「私物」か、速記部の「備品」であるかは、指導する側には影響をします。
 「私物」ですと自由に使用できますし、家に帰ってからも読むことができます。
 
 市内の速記部関係者で、現在でも「速記〈早稲田式〉」を持っている人はいないと思います。
 
 ほとんどの人は学校時代の教科書などは卒業後、何年かしたらゴミとして処分されているようです。
 
 
2004/02/15 (Sun) 速記学習教材 W式速記速習盤
 早稲田式の通信教育用教材でユニークなものがありました。
 
 昭和37年5月に言潮社から発売をされていた「マスター W式速記速習盤」という直径13センチの円盤です。
 円盤の中に丸い穴と長方形の穴が空いております。丸い方は速記文字が書いてあり、長方形の方には国字が書いてあります。
 両面とも穴が空いており、中に差しかえ用の円盤があります。真ん中に凹凸のホックでとめるようにできております。
 
 私と同じ時期に早稲田式の通信教育を受講していた速記仲間に聞いても知りませんでした。
 
内容は
入門コース(3枚1組)
 基本文字、イ音省略文字、詰音、などを含めた単語が書いてあります。
 
中等コース(5枚1組)
 ク、ツ音省略の基本と厳選単語。同行省略の基本と文型、二音文字の基本と文型、助詞テニヲハの基本と文型、上下段文字の基本と文型。
 
高等コース(5枚1組)
 助動詞の基本と簡字、国語の常用語と簡字、数字の基本と簡字、一般常用語と簡字の活用文型。
 
です。私が昭和41年ごろに購入したときには「中等コース」は品切れでした。
 
 説明書には、
 人気の的「マスター・コース」は数に限りがありますので、お早めにお申し込みください。
 
と書かれておりました。
 使用方法は極めて簡単で、丸い穴の部分と長方形の穴の部分には線が引いてありますので、目で追うだけです。次に円盤の間に挟んでいるものを回すだけです。
 
 差しかえ用の円盤には回しやすいように刻みがありますし、厚ビニール紙製でビニールケース入りです。
 
 私が早稲田式を学習していたときには、当たり前のように感じておりましたが、他の速記方式にはないユニークな教材です。
 これで「中等コース」の円盤がそろっていたら完璧です。
 もう少し早い時期に購入をすればよかったと思っております。
 
 
2004/02/14 (Sat) 拾い読み おやじパワー
 平成16年2月14日付「北海道新聞」の31面に「音楽愛する心 若者より熱く」「"おやじバンド”定年なし」という記事がありました。
 
 気の合う仲間と長年活動
   演奏場所の少なさ悩み
 NHK福岡放送局が主催するイベント「熱血!おやじバトル」がある。アマチュアで、メンバーの平均年齢が40歳以上であることが参加資格のこの大会に、毎年、全国から200近いおやじバンドから応募がある。テープ審査で選ばれたバンドが決戦ライブに出場できるが、その演奏は若者に負けないほど熱い。
 仕事的にも家庭的にも一段落し、自分の時間ができた今こそ、好きな音楽を楽しみたい―。そんな思いで楽器を手にする中高年がふえている。
(中略)
 楽器店の店長「(A市)の中高年バンドは、若者に比べても心底、音楽が好きな、熱い人が多い」と見る。
(中略)
 さらに離合集散を繰り返しがちな若者バンドに比べ、中高年バンドは「音楽への考え方が似た、気の合ったメンバーで長年活動している人が目立つ」とも。
(後略)
 
 速記界でも同じことが言えそうです。
 「老いては子に従え」という言葉がありますが、逆に「老いてはますます壮なるべし」という言葉もあります。一般世間でも「おやじパワー」は健在です。
 
 我が国の速記界を見ても若者よりも「おやじ族」の方がパワーと気迫があります。
 速記的発想で変換すれば「速記を愛する心は若者より熱い」ということになりましょうか。
 
 
2004/02/13 (Fri) 拾い読み 式閥?
 全国速記士団体連合会には「全速連」という機関誌がありました。ありました、という過去形で書くのは、私自身が最近の「全速連」を見たことがないからです。
 
 全速連のNo.24号(昭和55年9月10日発行)に「かきびとしらず」という方が「ちかごろやっときづいたこと」という投稿があります。
 
 東速25周年記念パーティの帰り際、いささか皆さんと別れがたい思いがして、ご一緒だったD、H、N氏らと「どこかで一杯」……となった。たまたま側におられたG氏もお誘いしたが、なぜかシキリと固辞される。久濶だけに「ぜひ…… お互い知らん仲じゃないし」と、ムリヤリ引っ張る私の耳元へG氏「皆さん○式ご一族だから。今度関西へ出たら必ず君ン家へ寄るよ」と別れてしまった。
 また、東京に日速協の支部が次々できたころ、さる支部の設立者が「実は同式のIらが陰で動いていると聞いたので、本元のオレを差しおいてケシカラン。それなら先に……と旗挙げしたんだ」と、ある席で私の耳元へささやいだ。
 どうも100年を迎えようとする手書き速記界は、まだ各方式が互いに競い・牽制し合い、そして同式であっても本家と末流、先生と弟子、先輩と後輩が切磋琢磨・引っ張り合いながら動いているようだ、日本速記協会が法人化され、検定試験合格者の式名を呼称しなくなったというのに。また、80年記念事業のときにはソクタイプ関係者とそれを祝い合ったというのに。
 
※東速25周年記念パーティ(東京速記士会25周年記念は昭和54年10月23日に東京赤坂プリンスホテルで開催)
 
と書かれておりました。私はどなたが書いたのか詮索するつもりは毛頭ありませんが、速記界では「式閥」があったようです。文中から感じられることは「○○ 式」の人とは一緒に酒を飲まない?ともとれそうです。
 
 今どき手書き速記関係者で「○○式」の人とはつき合うな?という人はいないと思います。
 速記界において「式閥」とか「派閥」はそぐわないものです。同じ方式で「本家と末流」というのは時代遅れの考え方です。
 
 現在は速記方式を超越して「後世へ手書き速記をどうやって伝えていくか」ということが大事なときです。
 
 我々速記関係者はインターネットを駆使して速記のPRをすることも大切です。
 「俺がやらなきゃ誰がやる!!」という気概を持つことが大切です。
 速記サイトの管理人同士で協力体制をつくり、お互いの専門分野で協力することも大切です。
 
 1人1人の力は微力ですが「1+1=2」ではなく、「1+1=∞」へと力を発揮しなければいけません。
 
 また、速記関係の書籍などは「PDFファイル化」をしておくことも必要なことです。
 
 
2004/02/12 (Thu) 軽装備/標準装備/重装備
 速記法則における「軽装備/標準装備/重装備」は聞き慣れない言葉ですが、速記法則を組み立てるときには必要なものです。
 
軽装備
 基本的な速記法則体系で、速記法則の骨格をなすものです。中根式においては市販のテキストが相当します。
 この基本法則体系は永遠不滅のものでほとんど手を加える必要がないものです。
 時代とともに同じ速記法則でも運用方法が変わる程度のものです。
 
標準装備
 この法則体系は、基本法則体系に肉づけをしたものです。時代とともに廃止されることもありますし、速記法則体系に一貫性をもたせるためのものです。
 時代とともに言葉が変化しますので、新しい法則などが追加されます。バージョンアップ版みたいなものです。
 
重装備
 各地のいろいろな法則体系を寄せ集めたもので、使い勝手の悪いところもありますが、速記法則体系を組み立てるときの「虎の巻」的な存在です。
 この法則体系をすべて使うかどうかは、別としても速記法則に精通するための参考資料的な存在です。
 各地のいろいろな速記法則を学習するためにはおもしろいものです。
 
 当サイトの「中根式速記法概要」は標準装備に相当しますが、容量の関係で掲載している部分は「基本形」です。
 
 「基本形」と「変化形」を掲載するとPDFファイルでも5.47MBの容量になります。
 ご参考までにB5版で130ページの分量です。