■2003/12/31 (Wed) 平成15年を振り返って ことしは念願のホームページ「速記道楽」を開設できました。5月中旬から速記仲間には極秘裏で作業を進めてきましたが、8月31日にホームページを公開しました。ホームページ開設以来、アクセス件数は予想をしなかった6,000を4ヶ月間で突破をしました。これも読者のおかげであり、管理人としてはうれしいことです。当サイトでは「速記方式を超越して、速記を道として捉えて大いに速記を楽しむ」ことを基本理念として運営をしております。またプロ・アマを問わず「速記の腕前は一切通用をしない」サイトです。「速記に対する熱い情熱のみが通用する」サイトです。これが当サイトの「基本理念」でもあり、速記に対する「根本思想」です。当サイトの内容は、学習者用に「中根式速記法入門」コースも設置しておりますし、独習でも速記を学習できるようにしております。速記を道として楽しむために、いろいろな角度から速記に関する文献等や、速記随想なども掲載しております。速記関係のサイトですから、なるべく図版等を多くしております。速記関係のサイトで、全く速記文字を掲載していないと、読む方もおもしろくありません。逆に速記文字だけを掲載されていても、読む原稿がなければおもしろくありません。この辺のバランスをどのように調整するかが、管理人の個性があらわれるところだと思います。ホームページでは「管理人の顔が見えない」とよく言われますが、どんな性格の人がホームページの管理をしているのか、という不安もあると思います。当サイトでも「管理人のプロフィル」を掲載しておりますが、ほとんどの速記関係者は「ハンドル名」と「原稿の書き方・内容」を見ただけで、だれが管理人かわかっておりますので、管理人の顔写真は「不要」だと考えております。当サイトでは、4ヶ月間で膨大なホームページになっております。全ページを出力しますと40ミリの厚さになりますから、分量的にも読み応えがあると思います。容量の10MBを使い切るのも時間の問題です。これも「道楽だからできる業」かと考えております。これからも新しい企画などを考えておりますので、来年もお楽しみください。
■2003/12/30 (Tue) 拾い読み 練習のオアシス 中根速記協会香川県支部機関誌「美しき線の流れ」No.1(昭和29年4月1日発行)の23ページに「練習のオアシス」という原稿が掲載されております。「練習のオアシス」緊張した教室 先生の官報朗読の声、シャープの紙面を走る音、勢いよく紙のめくられる爽快な音、『政府が今回義務教育費の全額国庫負担を決意し、教育職員を国家公務員とするの措置をとるには、この故にほかならない―ホイッ―のであります』で爆笑。何のことはない。先生が「ほかならない」「ホイ」と書くのだと説明したつもりが、生徒には、調子をとるための「ホイッ」と思えたため。× × ×初歩のクラスには、符号をいちいち説明していくクセの先生。『政府の―セイ1ユニットで―所信を―変則のショ、上から4ユニットはねて―伺いたい―ウタイ―そこで―ソコを1ユニットで―私の―特殊略法―思いますることは…』さあて、ここで若い先生、女生徒もいることとて、次の説明ができなくなったはがりか、下をうつむいて真っ赤になってしまった。わけのわからぬ生徒が、ポカンとしていただけ。※中根式で速記文字を書いてみてください。× × ×中根速記学校本科の授業・速度練習でも、先生が朗読をしながら速記文字の説明をしていました。この授業をするのは、新しい速記法則を習った翌日と翌々日は速度を落として行われていました。4日目からは普通の朗読練習をします。生徒の方は、こういう授業が行われたときには、原文帳に「速記文字」と「読み方」を書き込みますが、帰ってからノートに書き写す生徒と、その場で頭の中に入れてしまう生徒がおりました。
■2003/12/29 (Mon) 速記に付随するもの 中学、高校時代は学校の勉強嫌いだった人間が、こんなことを書くのも妙な話ですが、私は遊び半分、興味半分で速記を学習していたら、いつの間にか速記界にどっぷりハマっていました。速記にハマれば自然に他の分野のことにも興味を持つものです。速記と一番近いものは、言うまでもなく「国語学」関係、つまり「日本語学」関係の本などを収集するようになりました。「国語概説」「国語史概説」「国語音声学」「国語学原論」等々が書斎の本棚に収まっております。また「教育原理」「教育心理学」等も読みましたが、「生涯学習」にも興味を持ちました。一応、小説も含めて興味があるいろいろな本だけは読みました。特に速記教育と関係があるのは「生涯学習」です。勉強嫌いの私が通信教育で修了したのは、「速記」と「生涯学習指導者養成講座」だけです。速記の効用かどうかわかりませんが、下手ながらも文章を書くようになりました。私は昔から「作文」は苦手な方でして、今でも原稿作成は苦手な分野なんですね。
■2003/12/28 (Sun) 速記文字の鑑賞 その3 速記文字の鑑賞における一部分になりますが、速記学習者の原文帳を見るのは、別の意味でも楽しいものです。特に速記学校で指導をしていると、生徒が原文帳にどんな速記文字を書いているのか見たくなります。生徒には下記のタイプがあります。1.速記文字を盛んに質問する生徒。2.速記文字を全く質問をしない生徒。3.原文帳を見せたがらない生徒。指導者の中には、1.のタイプを嫌う人もおりますが、私は速度に関係なく「速記に対する意気込み」を重要視しますから、こういう生徒がかわいいですね。2.のタイプの生徒は、指導をされた「速記法則を理解しているのか」それとも「やる気がないのか」非常にわかりにくいタイプです。3.の生徒は、原文帳を見せるように言っても拒みます。本人がトイレへ行っている間に原文帳を開いて赤を入れたら怒っていました。ぶつくさ文句を言っていたので頭をこづいてやりました。私もまだ27歳で血気盛んなときでしたので、男子生徒だったら、げんこつを一発食らわすところです。最近は齢を重ねて性格が円くなりましたので、頭をこづくようなことはしませんが……。私に頭をこづかれた生徒は後にも先にもこの生徒だけです。今でもこの生徒の顔と名前を覚えておりますが、プライバシー保護の観点から名前は伏せておきます。他の生徒は、素直に原文帳を見せてくれましたので、速記文字の添削ができました。生徒の原文帳を見ると、この言葉に対しては、こんな速記文字を書いているのか、ということがわかります。特に高校速記部出身者の速記文字はおもしろい書き方をしておりました。
■2003/12/27 (Sat) 速記講座 1u線を書くコツ B角は法則的には30度の線ですが、1uで「タイ」「サイ」「セイ」の速記文字を書くときに、30度のままで書くとA角の「カイ」「マイ」「ナイ」と誤訳するおそれがありますので、少し立て気味に書きます。1uの速記文字を書くときには45度ぐらいで書きます。左上から右下へ書く線は60度の線はありません。B角では3uの速記文字を寝かせすぎると、速記文字が乱れた場合にはA角の速記文字と誤訳をするおそれがありますので、30度〜45度の間の角度で書きます。6uは30度のままで書いても誤訳をすることはありません。E角の1u線も45度ぐらいで書きます。3u線も30度以下の角度で書くと速記文字が乱れたときにはA角と間違える可能性がありますので、速記文字を余り寝かせないよう書きます。
■2003/12/26 (Fri) 速記文字の鑑賞 その2 速記文字の鑑賞について、「その1」で書きましたが、他式の実演を見ていて、なぜ「乱れている、抜けている」とわかるのか、簡単なコツを書きましょう。正円幾何派における速記文字は、ほとんどの方式では直線符号、曲線符号は図形的には同じです。曲線符号には、曲線の浅いものと曲線の「頭部が深いもの」及び「尾部が深いもの」があります。各方式の違いは角度・長さ・単線・複線です。どの音に対して、どの線を当てているかぐらいです。1.各方式の「基本文字」を把握しておくことです。2.いろいろな速記方式の本を集めて各方式のイメージを把握します。3.いろいろな速記方式の文例などを見ておくことです。4.動体視力を訓練します。5.朗読文と書いているときの速記文字を目で追っていきます。動体視力は速度練習をしていると自然と身につきますが、いろいろな速記方式の基本文字を書けなくてもある程度記憶することです。なれてくると、訓練次第では他方式の実演を見てもわかるようになります。
■2003/12/26 (Fri)「速記雑観」について 友野茂三郎先生述「速記雑観」(衆友会 昭和12年11月28日発行 A5版165ページ)という本を知っている方は少ないと思います。この本の編集・発行人は西来路秀男さんです。早稲田式の通信教育テキスト「早稲田式速記講義録」第6巻(昭和30年2月25日発行)の631ページ及び文部省認定通信教育テキスト「早稲田速記講座」第6巻(昭和35年6月1日発行、昭和44年3月までこのテキストを使用)80ページに「速記作法」という文例が掲載されておりますので、早稲田式の通信教育修了生は、必ず「速記雑観」の一部分は読んでいると思います。この本は友野茂三郎(明治1年8月19日〜昭和17年2月3日、若林カン蔵門下、元衆議院速記士、衆議院速記者養成所教官)さんのお弟子さんたちが古稀祝いのためにまとめたものです。内容的には70年近く前のものですから、全体的な速記に対する考え方が現在とはかなり違う部分もあります。小学館の「日本国語大辞典」によると雑観……さまざまな観察。また、それをまとめたもの。雑感……種々さまざまな感想。いろいろなまとまりのない感想。と書かれております。「雑観」と「雑感」では、意味が違います。早稲田式のテキストでは両方とも「速記雑感」になっておりますが、原著では「速記雑観」です。日本語の使い分けは難しいですね。ちなみに、私が書いている下手な原稿は「雑感」の方です。
■2003/12/25 (Thu) 速記文字の鑑賞 その1 絵画鑑賞、音楽鑑賞のように、速記にも「速記文字鑑賞」があります。書かれた速記文字を見ながら線の流れを楽しむ方法ですが、第三者が書いた速記文字も含めて、「きれいな線を書いている」「速記文字が汚い」という類のものですが、じーっと速記文字を見ていると、いろいろなことを楽しむことができます。書かれた速記文字だけではなく、次の速記文字へ移るときの角度、速記文字の開け方、速記文字の流れ方などを楽しむ方法ですが、その速記方式が読めなくても自然とわかるようになります。例えば、他式の人が実演をしているのを見ていても、1.乱れて書いている。2.余裕を持って書いている。3.この文章は暗記をしている。4.ぶっつけ本番で書いている。5.速記文字を抜かしている。というところまでわかるようになります。また、外国語が読めなくても、外国語の速記文字を鑑賞する楽しみ方もあります。私の「悪趣味」ではありませんので、誤解をされませんように。
■2003/12/25 (Thu) 速記講座 各行縮記法 昭和50年代の前半だっと思いますが、○○大学の大学祭で速記研究会の展示室に行ったことがあります。当時は中根式を採用しておりました。配付用のパンフレットには「憲法」という速記文字が最大線で書かれていました。当サイトの「中根式速記法概要」“25.9u略法”にも掲載しております。標準的な中根式において「ケン」の最大線は、正側に小円をつければ「研究」。負側に小円をつければ「憲法」と読みます。私は○○大学速記研究会の3年生に「どうして、これで憲法と読むのか」と聞いたら「昔から書いています」という返事でした。速記文字は「ケン」ではなく「ケホ」です。「中根式速記法概要」“24.各行縮記法”における、ハ行縮記法の「逆大カギ」です。なぜ、ハ行縮記を「逆大カギ」にしたのでしょうか。この書き方は昭和6年12 月発行の森 卓明著「超中根式速記法」まで遡ります。超中根式でもインツクキ法を「中段」に使用しますので、和語縮字法は「上段」に書きます。カ行=小丸カギ、サ行=大円、タ行=有尾小円、ナ行=小円、ヤ行=大カギです。残ったハ行、マ行、ラ行をどのように処理をするのか。大カギと小カギを反対側の形にすれば逆大カギ、逆小カギという発想になると推測ができます。「ハ」を深めに書けば「逆大カギ」になります。「マ」を短くして深めに書けば「逆小カギ」になります。ラ行は下段に書きますが、法則を上段に設定しているので、法則的には逆記する符号がありませんので、線の長さを変えて、短線は最小線(1/2)、長線は最大線(1.5倍)にしたことが推測できます。また「上段」では、「音訓換記法」(訓音換記法ともいいます)を廃止すれば、和語縮字法として法則的にも抵触しませんし、中間小カギ略法も有効に使えます。
■2003/12/24 (Wed) 中根式創案当時の速記法体系 中根式創案当時の速記法体系は、中根式関係者でも余り知られていないので簡単に紹介をしましょう。中根正親著「中根式日本語速記法(中根式速記法講解)」には、1.清音2.濁音、半濁音3.長拗音4.インツクキ法5.加点インツクキ法6.助詞までが掲載をされております。テキストには掲載されておりませんが、大正8年8月に行われた講習会では、上記のほかに1.上段2.下段3.最大線4.畳字5.ラ行短縮6.併用略字が指導されております。現在では、廃止をされた法則もありますし、令弟・中根正世先生によって法則の見直しが行われて大成されました。後には中根速記学校及び各地の研究者によって法則的な研究が行われて、現在に伝えられております。