■ 2006/01/01 (Sun) 新しい年を迎えて
 国立国会図書館では、ことしの1月から3月にかけてWebサイトの保存が行われると昨年の新聞に報道されておりました。
 
 まだ国立国会図書館の本格的な動きをつかんでおりませんが、Web に掲載された原稿が永遠に残りますので、いい加減な内容の原稿が掲載できなくなります。
 下手な内容の原稿を掲載すると、後世に証拠を残してしまいます。
 速記サイトの管理人は、後世のことまで考えて原稿を作成しなければなりません。
 
 

■ 2005/12/31 (Sat) 速記方式の寿命
 我が国の速記史をひもとくと1速記方式の寿命は約50年前後です。
 田鎖綱紀が田鎖式を発表してから田鎖 一が昭和7年に「51年式」、昭和16年に「60年式」、昭和23年に「67年式」、田鎖 一が研究して昭和33年に田鎖源一が「76年式」しとてまとめました。次の方式へ移行する期間は計算したとおりですが、田鎖76年式が指導された期間は昭和33年から平成8年までの約38年間です。
 
 我が国の速記界ではいろいろな速記方式が発表されておりますが、その方式の指導者・後継者が亡くなったら自然消滅しております。
 1つの速記方式で3代続いたのは「田鎖式」だけですが、2代続いている方式は、自然消滅した方式では、荒浪市平、荒浪清彦父子の「荒浪式」。毛利高範、毛利高棟父子の「毛利式」です。いずれも約50年前後で自然消滅しておりますが、1代限りで後継者・指導者がいない方式の寿命は長くて約50年前後です。
 1つの手書き速記方式が長い寿命を持たせるには、後継者・指導者は、もちろんのこと、時代に合った「速記法則」を構築していかなければなりません。
 どんな優秀な速記方式であっても、後継者・指導者がいないところは「自然消滅」しております。
 「速記史」をひもとけば一目瞭然です。
 我が国の速記界では速記方式を残すことは、指導者養成をするかどうかにかかっております。
 現存する速記方式でも、10年後、20年後にその速記方式の指導者がいない方式は自然消滅する運命にあります。
 実務速記者だけが残っており、現在、指導をしていない速記方式は「自然消滅」したと判断しております。
 創案以来70年以上存続している速記方式は数え上げるほどしかありません。
 
 

■ 2005/12/21 (Wed) 速記講座 加点法
 中根式では正側、負側、頭部、尾部に加点を使用しております。
    F
 正側 ・ 負側       @AB
  @・|・C    正側  ・・・
  A・|・D      F・―――・G
  B・|・E    負側  ・・・
    ・         CDE
    G
 F頭  部
 @正側頭部
 A正側中部
 B正側尾部
 C負側頭部
 D負側中部
 E負側尾部
 G尾  部
 
 清音のウ・ス・ヌ・ム・ルは「正側中部」に加点をつけております。中根式の基本文字で最初に加点の学習を行うのがウ・ス・ヌ・ム・ルです。
 
〔加点を書く順番〕
1.加点を先に書く。
 加点を書いてから速記文字を書く方法。
 1)上段〔頭部〕(行わん、考えん等々)
 2)○ロウ〔頭部〕
 3)2音目のス〔頭部〕
 4)2音目のヌ〔負側頭部〕
 5)2音目のム〔正側頭部〕
 6)○ッ○ラ行〔頭部〕
 7)加点インツクキ法〔正側頭部、正側中部、負側頭部、負側尾部〕
 
2.加点を後から書く。
 速記文字を書いてから加点を後から書く方法。
 1)基本文字〔ウ・ス・ヌ・ム・ルの加点〕
 2)加点助動詞〔正側中部、正側尾部、負側中部、負側尾部、尾部〕
 
があります。
 
〔まとめ〕
1.加点を先に書くのは、頭部、正側頭部、負側頭部。
2.加点を後に書くのは、正側中部、正側尾部、負側中部、負側尾部、尾部。
 
 

■ 2005/12/11 (Sun) 速記講座 加点助動詞法
 加点助動詞法は、中根正世著「通俗 中根式速記法」(昭和2年11月15日初版発行)までさかのぼります。
 中根正世先生の著作において「加点助動詞法」は、「特殊略法」の中に含まれております。
 特殊略法には
1.クと大カギの特別
2.特殊上段
3.特殊下段
4.繰り返し
5.章句省略、年月日
 (基本文字応用)
6.コノ、ソノの特別応用
7.加点助動詞法
の中に分類されております。その説明には、
 加点法といっても必ずしも点のみではなく、また助動詞法といっても、必ずしも助動詞のみではないが、便宜上、かくいっておく。なお、加点法はこの本には発表しないつもりであったが、第1章に示してある最高能率の文例中加点法を応用したものが1つあるから、それを解くために一部分だけ掲げておくことにする。
(1)書き方
 次のとおり、加点の位置によって種々に読む。
          正側  負側
  マショウ、シマショウ ・
レル、ラレル、セラレル ・
      スル、ズル ・
・ マス、シマス
・ マシテ、シマシテ
・ マシタ、シマシタ
             ・
           シテ、ジテ
 
正側頭部……マショウ、シマショウ
正側中部……レル、ラレル、セラレル
正側尾部……スル、ズル
負側頭部……マス、シマス
負側中部……マシテ、シマシテ
負側尾部……マシタ、シマシタ
尾  部……シテ、ジテ
 
 加点助動詞の次に来る助詞符号は一般普通文字を次のとおり、加点すべき位置から書き始め、加点を省略することができる。この詳細も他日の発表に譲るのであるが、これは加点すべき位置に加点せずして符号や文字を書くのであるから、加点したものと思って読むところに注意してもらいたい。
 
 中根正世著「中根式速記講座 下巻」(昭和22年5月20日 初版発行)では、正側頭部のマショウ、シマショウが廃止されております。以降の中根正世著「中根式速記」(昭和27年4月 初版発行)、中根正雄著「中根式速記通信講座」(昭和44年3月5日 初版発行)でも正側頭部のマショウ、シマショウが廃止されております。
 
 中根速記学校では「加点助動詞法」は独立した速記法則として取り扱われております。正側頭部のマショウ、シマショウ。負側尾部のマス、シマスの加点位置を習いますが、正側頭部、負側頭部は覚えなくてもよいことになっております。
 短線(4〜5ミリ)の場合に頭部、中部、尾部の書き分けは誤読をしやすいし、最大線の場合は一度書き終わった字末から頭部まで戻ることはロスを生じます。「マス」は基本文字で「マ」及び「ミ」を続けた方が早い場合があります。
 「マス」は「マ」を続けますし、「大円」の「○」で書く方法があります。
 「いたします」の場合は「チマ」と書きますし、「思います」は、「オ」に「○」の大円をつけて書く方法があります。「思います」の「オマ」では鈍角になるので大円を使用します。
 
 

■ 2005/12/04 (Sun) 速記文例集について
 「速記文例集 第147回速記技能検定試験」の1級から6級までの「問題文」「速記文例」「解説」を掲載いたしました。
 「速記道楽編」の文例と差しかえております。
 
 速記文例は「速記法則の部屋」の「中根速記学校の体系」で作成しております。
 「速記文例」はPDFファイルですが、「解説」はワードです。
 「解説」には、各級のページと行ごとに区切っておりますが、〔 〕に法則名を掲載しております。
 
 

■ 2005/11/29 (Tue) 速記文献のタイトル
 速記の資料を作成して最後につけるのは文献名・書名です。
 中根式関係における91年間に発行された書名を調べてみました。
 書名のつけ方にも時代的背景があります。
 中根式日本語速記法(中根式速記法講解)は、中根式最古の文献です。
 「中根式を基礎としたる○○○○」は、森卓明先生の系統の書名です。基本文字は、そのままにして省略法を改良したことが容易に推測できます。
 「中根式速記」の頭の部分に○○とついている書名があります。
 「通俗」「超」「超高」「最も粋を集めたる」です。
 「中根式○○」という書名が圧倒的に多くあります。
 「速記講座」「速記法通信講座」「速記講義録」「速記知識」「速記読本」「速記学教本」「速記者養成講座」「速記入門」「速記教本」「速記の手引き」「速記法原理」「速記法/初等編/中等編/普通編/高等編」「速記の基本教程」「速記法教程」「速記略字表」「速記研究書」「速記術資料」「速記術簡字」「速記法3週間」「速記問題集」「速記学指導者用教範」「速記教程」「速記法体系」「速記法資料編」「速記XL」「速記の研究」「中根式の流れ」「速記法教範」「速記法概要」等々あります。
 片仮名を使用したものには、
 「ショートハンド/モジノハジメ/キソチシキ」「ウツシングのすすめ」
 ローマ字を使用したものには、
 「Shorthand Textbook First Edition」「Text Of Stenography」「NAKANE
Kurzschrift」
などがあります。
 中には「応用速記術の秘訣」「学生速記教科書」「独習学生速記」「学生の速記」等々あります。
 ただ書名だけを見ると、何式の本かわからないものもあります。
 書名を見ただけで入門書、教科書、指導書、研究書など、文献作成対象にしているものか容易に推測ができます。
 書名をつける場合は、「中根式」という文字を入れる場合にも「中根式」の頭に「超」「新」「超高」という文字は「師を超える」という意味があるので避けるべき文字です。また文字数も10文字前後が理想的です。特に速記の文献名は簡単明瞭にわかりやすくつけるべきです。
 単純に「中根式速記」では、中根速記協会機関誌「中根式速記」、中根正世著「中根式速記」がありますので、紛らわしいので避けるべきです。なるべく既に使用されている書名を避けるようにしたいものです。
 「最新中根式速記法」も、何年か経てば「最新」ではなくなりますので、「最新」という文字も避けるべきです。
 中根式以外では「○○式発展日本語速記法」「超○○式速記術○○」「新式速記術」(明治時代)というのもあります。
 1つの方式で「○○年式日本速記法」というのもあります。この場合は前期の速記方式とは別に改訂していったものです。
 
 

■ 2005/11/13 (Sun) 拾い読み 中根正親先生の特別講演
 中根式速記協会機関誌「速記時代」昭和45年2月号(第160号)に「創案者・中根正親先生中根速記学校で講演」という記事が掲載されております。
 
中根式創案者・中根正親先生
中根速記学校で特別講演
――青年のごとき情熱をたぎらせて――
 中根式創案者中根正親先生は、2月14日(土)午後6時より8時半まで、中根校生徒に特別講演をされた。
 当日は、先生少し風邪気味で、のどを痛められておったにもかかわらず、教室いっぱい、熱心に聞き入る生徒を前に、青年のごとく頬を紅潮させて
 『真の教育というものは、教えて、育てる――活用できるところまで仕立てるのが教育だ。速記はその意味から本当の教育だと言える。ただ講義を聴いただけではいけない。練習・訓練の中に技術が確立する。その技術もさることながら、そういった練習・訓練のプロセスにこそ、実は大きな意味があるということを知らねばならない。
 諸君が速記の練習をやっていると、しまいには苦しくなり、嫌になってくることがあるだろう。そして、幾らやっても、もうこれ以上自分にはできないのだという、一種のあきらめさえ感ずるときもあろうが、速記に限らず、何事でも嫌になって、だめだ、というところを押し切ってやっておると、ぐっと伸びてくる。だから、諸君も速度がなかなか伸びない、スランプに陥ったと感ずるときこそ、ぐっと速度が上がる前提であるから、そんなとき力くじけず、中根式は基本から高等法則まで科学的、学問的に組み立てられた優秀な方式であるから、この式を学ぶことの誇りを持って、しっかり頑張って勉強してほしい。そして、みんなが研究してますますこの中根式をいいものにしてもらいたい
 と親しく生徒に語りかけ「要体教育(新教授法)について」の題下に2時間の予定が2時間半にも及ぶ熱演となり、生徒に深い感銘を与えた。
                          (文と写真・江森 武)
 
と掲載されております。ちなみに「速記時代」は、毎月1ヵ月遅れで発行されておりました。
 私は当時、中根速記学校の本科生でしたので、中根正親先生の特別講演を聴きました。私の記憶では夜間部の本科生、研究科生以外に、昼間部の本科生、研究科生の一部が参加しておりました。
 この日の講演は、要体教育における数学でしたが、残念ながら数学は苦手な科目でしたので聴いていてもわかりませんでした。
 当日の配付資料は、
Fundamental English Sentences Selected by M.Nakane.1963 Ryoyo High
School Kyoto Japan B6版22ページ
要体映画に添えて(中根正親記す)両洋新教授法研究所 A5版6ページ
要体 中根正親創案 1966 新教授法研究所 両洋高等・中学校 B5版29ページ
教育の発掘「要体教育」を見る――現代教育再検討の試み―― B5版36ページ (昭和43年10月以降?)
森の学園 学校法人両洋学園のパンフレット
 
でした。資料の裏表紙に「速記は高度な専門的な学問である」と、速記文字で書き込んでおります。
 もう35年以上前の資料ですが、私は今でも大切に保管しております。中根速記学校の先輩及び同期生で持っている人は少ないと思います。
 中根速記学校在学中に創案者・中根正親先生の特別講演を聴く機会を得ましたが、中根式速記創案当時のお話をお聞きしたかったと思います。
 私には「この式を学ぶ誇りを持って」「みんなが研究してますますこの中根式をいいものにしてもらいたい」という言葉の方が記憶に残っております。
 
 

■ 2005/10/21 (Fri) 拾い読み 雑記帳
 乙部泉三郎著「泉式 速記術精解」(梧桐書院 昭和19年1月20日初版発行)に「雑記帳」があります。
 
女子と速記
 「泉式は婦人の速記術である」と言った人があります。しかしその意味は「婦人だけに適する速記術」というわけではあれません。婦人でも容易にできる速記術の意味であります。その最も重要な点は反訳の容易という点であります。
 速記術は一般男子のみならず、軍隊方面でも大いにこれを利用していただきたいものであります。裁判所において速記を利用しておらない原因の1つは、速記字は書いた人にだけしかわからないからだと聞きましたが、泉式ではだれでも読めますからこの方面にも利用されるときがくるでしょう。速記はまた、議会や座談会や講演等に用いるための専用物ではありません。職業とせず自家用とするには男女ともだれでも覚えておかねばならないでしょうが、専門速記者としては今後男子の手から次第に女子の手に移って参りましょう。男子は国防軍事方面に活躍し、速記のごとき書記的方面の事務は、女子が進んで担当せねばなりません。現在既にこの傾向は顕著にあらわれております。
 大東亜戦争はあらゆる方面に革新の声を反響させ、着々と実行に移っております。速記の方式はもちろん、その教授法、学習法、利用法等からいっても大きな変化を見るでしょう。速記者は女子が大部分を占むる日もやがてくると思われます。議会の速記者志願生は明朗な婦人で満たされ、議政壇上たくましき意見も、やさしい婦人の手で速記されるときも参りましょう。
 
 昭和19年1月当時は、戦争中で男性速記者が応召されて国会でも速記者不足になりつつありました。
 「男尊女卑」の時代です。戦後の速記界では婦人速記者が各方面で活躍していることは、ここで書かなくても「速記史」を見れば明らかです。
 
 

■ 2005/10/20 (Thu) 泉式について
 「速記基本文字総覧」に掲載されている泉式と「泉式資料」で掲載されている「泉式 全音速記」は、基本文字が違います。
 「速記基本文字総覧」に掲載している泉式は武部良明著「日本速記方式発達史」に掲載されているものです。
 現在、泉式の文献で確認ができるものは下記のものです。
1.乙部泉三郎著「泉式 速記術精解」(梧桐書院 昭和19年1月25日初版発行)
2.乙部泉三郎著「泉式速記術 独習の手引き」(泉式速記研究会 昭和22年6月20日発行)
3.乙部泉三郎著「泉式 全音速記」(泉会 昭和44年10月28日発行)
です。
 泉式は昭和15年から昭和19年までを第一期の泉式、昭和44年を第二期の泉式と分類ができます。
 「泉式速記術 独習の手引き」(泉式速記研究会 昭和22年6月20日発行)は、第一期から第二期へ移行する過渡的なものです。
 
 

■ 2005/10/11 (Tue) 中根速記学校関係 補遺
 中根速記学校の通信教育で受講生が少ないのは、高校の速記部関係で、中根式が90%以上を占めていた関係と、地方の新聞などで広告が余り載っていないからです。
 また全国各地で支部活動が盛んに行われておりました。
 同時期に京都の中根式速記本部で、通信教育を行っておりました。
 昭和44年3月5日に、中根正雄著「中根式速記 通信教育」普通科コース/高等科コース/研究科コースが作成されて、中根速記協会で通信指導するようになりました。
 中根速記学校では、通信教育生を「校外生」と呼んでおりましたが、本科、研究科の通学生は「在校生」と呼んでおります。
 「資料紹介 中根式速記を志す人々のために」では、昭和24年当時の中根式について紹介いたしましたが、中根速記学校の「修業年限」は、普通科(3ヵ月)、高等科(3ヵ月)となっておりますが、昭和26年ごろから本科(1年)、研究科(1年)と変更になっております。
 中根速記学校では6ヵ月以内に95%の速記法則の指導が終了しております。12月初旬に「加点インツクキ法」を習えば法則指導が終わります。
 中根速記学校で法則指導が6ヶ月間で終わるのは開校以来の伝統的な指導方法です。
 私が入学した当時は、本科前期(4月から9月)はI先生、本科後期(10月から3月)はN先生に代わりました。
 10月入学生だけはE先生が1年間通して受け持ちました。
 研究科はA先生でした。 
 
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