■ 2005/06/15 (Wed) 関連資料日本速記協会機関誌「日本の速記」には、各式の省略法が簡単に掲載されております。我が式の誇る省略法(中根式)池田正一 昭和32年6月号1.概説2.立案の根本方針3.法則1)基本文字の構成2)濁音及び半濁音3)長拗音4)インツクキ法5)助詞6)上下段法7)節音法8)最大線9)加点法10)加点インツクキ法11)交差平行法12)符省法4.結語我が式の誇る省略法(早稲田式)川口晃玉 昭和32年7月号緒言1.立案の方針2.法則1)基本文字2)二音文字3)略字制定の法則4)技術的操作の原則結語一速記方式のあゆみ(田鎖67年式)田鎖源一 昭和32年8月号速記方式は行き詰まりか67年式省略法の構成縮字の構成略字の構成助字の構成あすへの歩み我が式の高速度理論(衆議院式)西来路秀男 昭和32年9月号省略法の意味原理・原則の大要1)単記法2)摘記法3)段記法4)接記法5)着記法6)交記法7)略記法8)寓記法9)同記法10)縮記法11)換記法12)全記法我が式の誇る省略法(参議院式)山田 到 昭和32年10月号はしがき1.基本字2.略字、省略法の制定基準3.品詞法4.寓意法5.結びアスの速記のために(イトー式)イトーカツジ 昭和32年11月号1.はじめに2.万人のための速記3.基本文字構成上の問題4.離筆の問題5.省略法上の問題ア)濁音イ)助詞法ウ)アオスナ記号エ)過現未法オ)コソアド符号カ)加点法キ)数詞ク)20ミリ文字ケ)第二拗音6.結び我が式の紹介(山根式)山根祐之 昭和32年12月号立案の方針と基本文字法則の名称イン拗長の関連その他の法則融通性流し法結び私の速記方式(石村式)石村善左 昭和33年1月号1.はじめに2.まずやさしさに徹する3.基本文字研究の結論研究の一形態として(佐竹式)佐竹康平 昭和33年2月号速記普及の根本理念研究の中からあとは若い諸君に我が式の片鱗(新牧式)牧泰之輔 昭和33年3月号我が式の構成――国字式速記及び寿光速記法――(寿光式)国字寿光 昭和33年4月号大和文字の構成動くものは回る文字構成の理文字と法則と不偏の頻度合理的なるものは優秀である漢語系の省略法国字式速記、寿光速記法の一斑速記と速記法速記の姓名は正にある――私の考案した――熊崎式省略符号の一端(熊崎式)森沢、行 昭和33年5月号佃式符号の変遷(佃式)萩谷哲夫 昭和33年6月号お断り初期の符号先輩の符号研究基礎符号を尊重の以上です。各方式の原稿の書き方には詳細に説明したものと簡単に説明した方式があります。原稿の書き方については甲乙をつけませんので、各自で判断してください。
■ 2005/06/14 (Tue) 省略法の公開「日本の速記」昭和34年2月号にY.Fさんの「協会に望むこと」の中で“省略法の公開”についてご紹介いたしました。ちなみにY.Fさんは中根式の方です。私はお顔をよく存じ上げております。省略法を公開しても、他式の省略法を取り入れるのは速記法則に精通していないと難しい話です。中根式を例に出しますと、早稲田式の「同行省略法」を取り入れることはできません。逆に、早稲田式に中根式の「中間小カギ」を取り入れるのは図形的には無理があります。また「連続交差略法」も無理です。もし早稲田式の考え方を取り入れるとすれば、「二音文字」という考え方です。つまり中根式では「特定符号」に相当する部分です。それと早稲田式における速記文法という考え方も使えます。学習プログラムが導入される以前、つまり昭和44年以前の早稲田速記講座4巻〜5巻(文法編)の部分です。中根式では「口語助動詞」「副詞」という概念はありませんが、早稲田式の「文法編」は速記文字構成の関係からそっくり使えませんが、速記法則を整理する用語として参考になります。早稲田式の「簡字構成法」は中根式に応用できます。「簡字構成の分類」1.最初の音の速記文字だけを書く。(中根式では頭音摘記略法)2.最初の音の速記文字を工作する。3.最後の音の速記文字だけを書く。(中根式では尾音摘記略法)4.最初と最後の速記文字を続けて書く。(中根式では頭尾音摘記略法)5.最初と最後の速記文字の途中を離して書く。6.最初と最後の速記文字を工作する。7.最初と次の数音の速記文字を書く。(中根式では前音摘記略法)8.省略文字を拡張応用する。9.交差法を応用する。(交差・平行法及び特殊漢音縮記法)10.全く特殊につくった速記文字。(中根式では特殊略法)ですが、既に中根式でも該当する方法もあります。早稲田式で言われている「運筆」(ゆり上げ、ゆり下げ)も利用できます。早稲田式の「ゆりつぎ」は使えますが、中根速記学校の体系では「ゆすり筆」があります。いろいろな速記方式の文献をあさっていくと、なかなかおもしろい省略法と出会えます。自式に利用できるかどうか考えることもおもしろい方法です。中根式は法則性を重視する方式です。他式でいう「略字」は「特殊略法」として取り扱います。
■ 2005/06/05 (Sun) 速記史資料 日本速記学会の設立を望む「協会に望むこと」Y.F速記方式の選択について我が国における邦語速記方式は多様であるが、実際において優秀な実務者を多数輩出し、あるいは、日速協の検定に際し、立派な成績を上げている式であれば、その成果を上げるに至るまでの努力の多寡は別として、とにかくどの方式をオリエンテートしたとしても、各人の努力で一流の速記力を身につけることができるはずである。従って、各人がその速記習得に関する地域的、人的環境の中で一応社会的に信任されている方式を選べばよいのではなかろうか。完備した独習書よりも優秀な指導者を得たスクーリングの法が優っていることは言うまでもない。「何週間で覚えられる」「何字覚えればよい」「短期間で速記士の資格を与える」等、無責任な商業主義に惑わされてはならないと思う。省略法の公開について各式がセクショナリズム、あるいは独善的な態度をやめて、日本の速記界の総体的発展のために、それぞれの省略法その他を公開し、各式が大乗的な立場で研究し謙虚に取り入れるべきものは取り入れていくことが大切なことではなかろうか。このことが実現したとすれば、各式間における優劣の差はある程度解消され、平均化し、ちょうど山登りのように登り口(方式)は別れていようとも1つの頂上(一流の速記力)に達することができるようになりはしないだろうか。(※以下略)出典:「日本の速記」昭和34年2月号「日本速記学会の設立を望む」森 卓 明2月号の本誌にF氏の注目すべき意見が出ていた。それは「省略法の公開について」というので、その要旨は、各式がそれぞれの省略法を公開して、式は異なってもその利用し得るところはお互いに利用して日本の速記界の総体的発展を図りたいというのである。何式何式と日本には幾つかの方式がある。その基本については直接師匠につくなり講義録によって学びかつ練習するわけであるが、実務につくようになるとおのおの適当に基本教程を改変するなり発展さすなりして、なるべく楽に実務ができるようにしているのが現状である。しかしなかなか変えられないのは初めて習った基本符号である。それ以外の省略法は各実務家によってそれぞれ考案されておるのが実情である。否そうしなければ多種多様の高速度の実務が処理できるはずはない。速記方法は――方式という基本教程まで含むので――固定できない、某式を称えておっても実際は基本符号だけしか同じか、いや大部分は同じであるというにすぎない場合も往々ある。また認定にしても所期のごとき所期していなかったかもしれないが、効果が上がっていない原因もここにあるのではあるまいか。協会においても方式よりも教授所の認定という方に傾いたのはより実際的になったと思って喜んでいる次第である。今まで協会試験の際、方式名を記入すると同時に教授者名を表示するようになっておる。ただし発表の際は方式名だけになっておる。私は方式名も教授者名も要らんことだと思うが、どちらかと言えば教授者名を書いてその系統を明らかにする方が実情に即しておるように思う。教授所の認定はだれがするのか、これは無論教育委員会の仕事である、方式の認定のような学問的な仕事を教育委員会の所管にしたのは適当ではないと思う。ここで最初のF氏の所論に戻るのであるが、多年速記界に功労のあった者を表彰する表彰委員会というのがある、速記発表70年式典の時にガントレット、熊崎、中根の3先生が表彰されたがその表彰状の文句は甚だ妥当を欠いたように思った。この3先生とともに新方式の発明ということが表彰の内容とならなければならぬ。しかるにそれが文句にうたわれてなかった。速記方式の優劣ないしは各方式に通ずるような新法則の発見について表彰に値するようなものが今後出てきても、どこで発表し、だれが審査認定するか。現在の協会にはその委員会に欠けておるように思う。協会は二言目には文化団体であるから、速記方式の改良進歩に役立つ新法則の発見者の功績というものは多く埋もれて世にあらわれないのが普通である。一例を挙げれば高橋鉄雄氏の複音記号の着想のごとき、西来路秀男氏のパターンの原則のごとき、従来一字一音と個別略符のみに依存していた速記方式に一大革命をもたらし、長い間不可能とされていた超高速口話に即応する方式が完成したのである。それらもやはりごく限られた研究報告書の恵贈を受けて僅かに知り得たにすぎない。もしこれが公開の機関誌によって発表されたならば、式のいかんを問わず利益を受け、各自速記技術進歩の上にいかに貢献できたかわからんと思う。速記法というものは学術であるというのが私の持論である。某速記方式発案者が方式一般を発表したということは、一記録学体系として世間の批判を受けることを前提としておると認めなければならぬ。その方式一般としてはたとい幼稚なものであっても、その一部分にすばらしい新法則が採用されておることがあるかもしれん。その新法則をその方式と別の方式に全く使用法を別にした結果、思いもよらん優秀性を発揮するという場合も少なくない。私のことは言うことを控えるが、新法則の発見は容易にできるものではない。広く内外の文献をあさってヒントを受けることもあるし、日々の実務にこれは何とかならんものかと多年心がけているうち、忽然として思いつくという場合もある。それは基本文字表を幾つつくるよりどれだけ難しいかわからぬ。せっかくよい法則を見つけたと思って、あらゆる場合に適用を試みたとき幾多の矛盾が起こってくる。それを一々克服して最終案に至るまでに幾度賽の河原を繰り返さなければならぬかわからぬ。そうして優秀な法則を縦横に駆使してその妙用に独り自らほほ笑んで自分の速記事務に処理しているだけの人が、同業者の中に幾らあるかもしれん。各学会にはそれぞれ学会というものがあって研究報告会もあり研究機関誌も出ておる。各方式のグループ限りにはそれがあっても総合的研究発表機関がない。しかもその価値の評定機関も存在しないというのが我が協会の現状である。ここでいよいよ結論に入る段階に達した。協会内に速記学会を設けることと、季刊ぐらいで研究報告書を発行することと、及び年1回くらいの研究発表会を開くことである。そして方式の認定がぜひ必要であるとすれば、この学会においてその基準の設定の実務に当たるべきである。現在優秀な速記実務家を出しておる方式の多くは、かつて既成速記方式の速記者から罵詈雑言を受け、涙をのんで実用化に血の努力を続けたものである。反面、現在多数の習得者があっても、方式そのものとしては特別なものもない平凡な方式もある。現在教育委員会において方式認定の基準としておるものは、新方式の進出を阻むと思われる点がないでもない。かつて中根正親先生は、中根式は決して完全なものではない、これから多数の中根式速記者が出て本式の改良をしてほしい、それには中根式の基本法則が完全なものではない、後進学徒によっていろいろ新法則が発見されるであろう。その場合は、その発見者の名を冠して何々法則と名づけて長くその人の功績として残したい。そしてピットマン式が生誕100年記念に完全なテキストを出したようにしたい、と言われていた。これは創案者としては実に立派な態度だと思う。絶対中立の立場にある協会においては一層こういう態度が必要だ。先般山田副理事長には簡単にその意見を述べておいたが、教育委員会とは別に日本速記学会(仮名)を協会内に一委員会として設置し、活発に活動するようにしたならば、小さくはF氏の「速記方式の選択について」も「省略法の公開について」も完全にその目的を達することができ、有名無実に等しい教育委員会の名誉回復にもなると思う。出典:「日本の速記」昭和34年3月号
■ 2005/06/04 (Sat) 速記史資料 速記教育委員会「方式の公認」東京T生「速記を習いたいのですが、何式がいいでしょうか」とはしばしば受ける質問である。この場合、協会は今までの行き方を見ると「一人前の速記者が出ている速記方式ならば何式でも差し支えありません」などと抽象的に答え、学校や塾の幾つか並べているようである。「我が式からは残念ながら一人前の速記者は出ておりません」などと宣伝している方式があるはずもない。そこに並べられた学校や塾以外にも優秀なものがあり、狭い回答欄でそれらを全て並べることも不可能である。そこで「協会公認」という制度を提案する次第である。そして質問者が迷わないように、「協会公認の養成機関ならばいずれでも、差し支えありません」ということにする。希望者にはその公認養成機関の一覧表を渡すわけである。一方、公認されたところは、その名に恥じないように指導するだろうし、公認されないところでは、公認されるように内容を整えるに違いない。かくして速記教育そのものが充実すれば、習う人にとっても、まことに好都合だという次第である。出典:「日本の速記」昭和30年5月号「速記教育委員会はどんな活動をするのか」1月29日(日)試験の日、東京在住委員だけが集まってこれからの活動方針を話し合った。当日は具体的方針までは打ち出せなかったが、5月の大阪試験、10月の研修会(東京)の機会に正式な会合を重ねる予定だから、そのころに確定した線に沿って活動できるようになるはずである。一応の線としては、現に協会に所属し、協会に協力し、過去に立派な実績を残している方式をまず認定し、保護していく。そのために必要な手段方法として教授者資格の認定や新方式の認定を行い著作権の問題、紛争問題の調整にも当たってはどうか。従って優秀な新式の台頭を阻むものではないが、学習者がいかがわしい新式の犠牲となることは防がねばならない。協会としては、この点については既成各式の協力を強く懇請すべきであろう。よい式の普及という立場からすれば教授者の資格にも一定の基準を設け、何式教授者として適格の旨をはっきりさせて認定しよう、という線が出された。名古屋の伊藤委員からは書面で、委員のおのおの一国一城の主だから我があるだろうが、小我を捨て大局的見地でことを処するように、他式の利害を考慮して発言を控えたり、委員会の名前を自己の勢力伸張に利したりして、委員会自体が立ち消えになることのないように要望されたし、大阪の瀬戸委員からは、今後取り上ぐべき問題として各式各教育機関の情報、意見の交換、新方式の認定、方式名の呼び方、広告倫理、既成方式及び教授者の資格認定の問題を上げてきている。そして現方式及び教授者の適格者をまず認定することが、今後の新方式認定の基準を示す意味でも必要なことだ。新方式については、委員会としてその説明を聞き、既成方式の一部変更のみで何ら創案のないものは認めないように、という意見である。また京都の森委員からは、教授者資格の認定について、教授者は協会会員たることを原則とし、新たに認定した者は会員になってもらう。基本文字中3分の2以上が既成のものと違っていなければ新方式と認めない。それ以下は何式何系と称する。広告倫理として、協会認定の方式名以外を名乗らないこと、また公立のごとき印象を与えるような紛らわしい名称は避けるようにと、具体的な意見が書面で寄せられている。以上はいずれも3氏の個人的見解であるが、当日の席上、池田委員初め各委員も、3分の2などの具体的な点はともかく、大体の線はその辺に一致したようである。殊に教授者資格を現在のように野放しにせず、一定基準によって式及び個人を認定して文部省や各学校長に推薦することは委員会として大事な仕事になろう。どの問題1つ取り上げても容易ではないが、速記界の正常な発展のため委員会の適切な活動を期待する。出典:「日本の速記」昭和31年3月号「第1回速記教育委員会規程を決定」速記教育委員会第1回委員会は大阪試験の前日、5月4日午後1時半から大阪浪速荘で開催。(※出席者名は省略)まず椎名靖氏を座長に推して懇談会形式で手嶋組織委員提出の速記教育委員会規程(案)を、次いで大阪支部提出の第1号議案 既成速記方式の認定並びに速記方式名の呼び方に関する件第2号議案 速記教授者の認定並びに教授所認定制度に関する件第3号議案 新方式認定制度の確立に関する件につき参会者全員が意見を交換し合った。5時から引き続き委員会を開き山田到が議長になり、懇談会での審議経過に基づき委員会規程を決定した。次に大阪支部提出議案について審議したが、いずれも決定を急ぐ問題ではないから、各地方支部、速記士会などにもその具体案を考えてもらうこと、委員会の機関紙は「日本の速記」を使うこと、次回は今秋行われる予定の記録員研修会の前日に開くことに決めて散会した。出典:「日本の速記」昭和31年6月号速記教育委員会規程(昭和31年5月4日)第1条 本委員会は速記教育委員会と称し、会則第16条に基づきこれを日本速記協会内に置く。第2条 本委員会は、正会員で速記教育関係者の内から理事長が委嘱する委員若干名で組織する。第3条 本委員会は、全日本の速記教育の健全な発展を図ることを目的とする。第4条 本委員会は、前条の目的を達するために次の事業を行う。各方式、各教育機関相互間の情報、意見の交換及び研究。速記方式並びに方式名の認定。速記教授者の認定。速記教育に関する紛争問題の調停あっせん。広告倫理の確立。その他必要な事項。第5条 本委員会に委員長及び幹事を若干名置く。第6条 本委員会の経費はその都度徴収する。出典:「日本の速記」昭和31年6月号「協会推薦方式を決定 第2回教育委員会」第2回教育委員会は10月20日午後5時から参議院速記者養成所で開かれた。(※出席者名は省略)今回の議題は「既存速記方式の認定とその具体的基準」であったが、まず京都の森卓明委員から寄せられた文書による意見を朗読、森委員の「本委員会は各速記方式の認定権を持ち得るか」の根本問題について意見が交換されたが、その結論は本会自体が法律によって設立された者ではないから絶対的な強制力を持つものではないが、従来行われている検定試験合格者も法律に定める資格ではないけれども、漸次各採用者の認識を得て権威を持ちつつある実情に鑑み、本委員会の行う認定も協会自体の権威が確立されていくにつれ確固たる権威を持つようになるのではないか、従って協会自体の活動として方式の認定を行っても何ら差し支えない、とする意見に一致した。(方式発表に当たっては「認定」という言葉を使わず「推薦」ということにすることを決定)次に方式を推薦する具体的基準の審議に入り大阪の高山委員から、1.現在教授している式であること2.教授者が協会の正会員であること3.検定B級以上に合格者を数名以上出し、また実務者として数名以上が活躍している方式という一私案を提出、これについては東京の池田委員から、同一系統の方式であって、ただ小部分の改変を行ったにすぎないものをもって○○式と名乗っているものがあるが、これは推薦方式決定の場合、特にこの点に留意して選定するようにという意見があった。その間種々論議がかわされたが、結局、現段階としては、ある一方式内部で調整を必要とする式は次回に審議することにし、第一回の今回は掲載の方式を推薦することにして散会した。(なお衆参両院の養成所で教授されている方式は、両院内部でのみ教授されるもので、一般の民間方式とは教授の機会が均等でないので、協会推薦方式から除くことにした。)なお次回の教育委員会は明年5月に行われる大阪技術試験の際に開くことにし、そのときまでに全国教授所一覧を作成しその審議を進めることに決定した。また委員長は開催地(東京・大阪)から各1名を選ぶことにした。東京は山田到氏、大阪は未定。〔協会推薦方式名〕石村式、イトー式、熊崎式、国字式、佐竹式、田鎖式、佃式、中根式、牧式、山根式、早稲田式(50音順)出典:「日本の速記」昭和31年11月号「第3回速記教育委員会の経過」第3回速記教育委員会は5月5日、午前午後にわたり大阪市大手前女子短期大学において開催。(※出席者名は省略)まず、瀬戸氏を座長とし、懇談会が開かれた。そして「この懇談会においては広く傍聴者の意見も聴取すること」「本日の議題を(速記教授者の資格基準及び認定)に絞ること」が決定。宮本氏から「本日の議題1.2.を取り下げよ」との要望があったが、種々協議の結果、「教授者の資格基準としては協会の正会員に限る」という線で本委員会に臨むことに決定した。午後懇談会終了後、直ちに委員会を開会、瀬戸委員議長となる。冒頭、南氏から京都を代表して、「本日の議題(速記教授者資格、速記教授所の基準及び認定)は中止されたい」旨の陳情があった。この発言に関連して山根、高山両委員及び議長から釈明、質問、意見等が述べられ、一旦休憩。再開後、議長から「南氏の発言中には不穏当な個所もあると思うので、これは撤回してもらうこととして(教授者の資格は協会の正会員に限る)、これを持って帰って東京側の委員会においてもご審議願いたい。この問題は、なおよく研究せねばならぬので、本日はこれを保留したい」旨述べられたが、高山委員は「本日の委員会は協会の委任を受けた日本全体の委員会であって、東京側の了解は要らないと思う」と、保留に反対。次いで森委員から「京都の先ほどの発言についてはお詫びする。先に提出した陳情書は都合により取り下げる」旨、及び「教育委員会は決定決定でいくより懇談が必要である。教授者の認定は対社会的関連が代であるから、十分な研究の結果せらるべきであって、きょうは決定を留保したい」旨、述べられ川口・東野両委員はこれに賛成。議長は「きょうの委員会においては最低線の問題は話し合いがあったとするか、あるいは決定するか」を諮る。牧委員は「正会員なら15、6歳でもいいというなら反対、年齢条件が必要である。また、高山委員は(きょうの委員会は日本全体の委員会だ、決定しなければ不名誉だ)と言われているが、その点研究したい」と述べられ、森・東野両委員から「きょう決定しないでもいいと思う。十分検討してもらいたい」旨述べられた。高山委員は「慎重審議は結構だが、年に2回の委員会で一体どういうことが具体的に決定できるか」。森委員は「総会的な委員会は年に2回だが、地区的な委員会を持って、そこで練って決定の線に持っていった法がいいと思う。こういうことは下相談が欲しかった」と述ぶ。(やじあり)議長は閉会したき旨述ぶ。高山委員「反対」、議長は再び「最低線の問題は話し合いがあったとするか、あるいは決定とするか」を諮る。川口委員から「本委員会の決定は効力いかん」との問いに対して、私は「本委員会の決定が理事会の議を経ずして、即100%協会の決定となるとは申しにくい」旨、発言。これに対し、高山委員から反対的意思表示あり、森委員は「決定には異議ないが、時間的余裕が欲しい」と述べられたが、川口委員から「(日速協で教授者の認定をする場合には、協会の正会員でなければならない)とされてはどうか」との発言あり、議長は「多数決で決定するか」を諮られたが、さしたる発言もなく「(教授者の資格は日本速記協会の正会員に限る)ことに本委員会としては決定した」旨が宣告され散会。(理事 木村藤曹 記)出典:「日本の速記」昭和32年7月号協会の動き「第3回理事会」2.第2回及び第3回教育委員会報告の件まず、山田副理事長から、第2回教育委員会において11速記方式を推薦するに至った経過について報告、続いて木村理事から、第3回教育委員会の経過報告(別掲)があった後、両回の教育委員会において得られた結論に対する理事会の態度を種々討議の結果、教育委員会に差し戻して再検討を願うとともに、教育委員会の構成及び今後の進め方について広く意見を聞き教育委員会は再出発することになった。出典:「日本の速記」昭和32年7月号協会の動き「第4回速記教育委員会」32年10月19日参速養において開催、次の3点を確認した。1.本委員会は存続する。2.委員会規程第4条第4項にいう紛争問題が委員会に持ち込まれたときは、委員会を招集してその取り扱い方について協議する。3.試験合格者発表の際の「その他」の件(20ページ参照)「なぜ、「その他」とするか」ある式を学習していて「その他」で合格発表されるのは心外だとの投書があり、10月19日速教委で種々懇談の結果、従来どおり、その式の創案者または主宰者・教授者が協会正会員であり、B級以上の合格者・実務者数名以上が正会員である式はその式名で、そうでない式は「その他」で発表することに決定した。要は、受験申込書記載の方式名をそのまま発表して協会がその式を認めたように誤解されることを防ぎたいことと、多少の主張の違いは超えて協会の事業に協力していただくという趣旨にほかならない。(速記教育委員会)出典:「日本の速記」昭和32年12月号「速記教育委員会(神戸)報告」5月2日(土)午後3時神戸市青雲荘において開催。(※出席者名は省略)瀬戸委員議長となり、「速記方式認定問題」も含め、主として「教授所認定の件」「教授者認定の件」を議題とする旨宣告し、認定条件の1つとして、「日本速記協会員に限定すべし」との意向ある旨紹介し、議事に入る。山根委員より、今日までの関西方面における11方式推薦までの経過、現況についての了解線について説明、大阪の問題は自発的意志により解決されているが、速記の信用、需用者の理解、速記修得希望者への指針として必要であるので、方式推薦の形にしろ、なお推進する要あり、また、それらとの関連もあり、教授所認定、推薦についても速やかに実行すべきであり、決定すれば大阪方面は直ちに推薦教授所名提出の用意がある。そのためには本日の会議は正式な手続きを踏んでいるから、決定は理事会、総会に行くのが当然であるのに、話し合いだけのような通知が本部から来た理由は何かと質問、石渡委員より話の行き違いで、従来の運用方針に変化ない旨答えた。高山委員より、文化団体を標榜する協会としては既成専門速記者対象でなく、全国民を対象とした速記普及運動に乗り出すべきであろう。森委員より、方式認定は種々の理由から現況に至ったので、ここにも私の主張する学会設立必要性の根拠がある。それに反して教授所認定は、会員内の枠を決めれば、比較的容易である。牧委員より、その線の引き方は難しいが、それが決まれば認定は可能であるとのそれぞれ冒頭意見が出された。次いで自由討議に入り、教授所認定ないし推薦は、第一段階としては会員教授者を対象にすべきである。教授所は、速記士証を持つ会員であってかつ実務3年ないし5年経験者中から選考の上教師証を交付された者の教授するものを認める。同時に方式認定への線も確立実施し、殊に教師証発行については500円ないし1,000円を納付させ、それをもって速記普及PRを推進する。教師適格認定は、本部からの調査もよいが、支部長推薦者を認定することが事務簡捷である。教授所制度が確立すれば、方式認定は自然に認定される。方式認定も会員であることがまず前提だ。認定には法的色彩がある関係で推薦となったが、11方式は第一次で、第二次、第三次とやったらいい。都道府県条例と協会認定とがそごすることがないようにすべきだ。学校類似行為の弊害の多い者は取り締まりの対象になり、解散もしくは合同の線が出ている。条例によらない塾式に対する協会の立場を見極め、処理することが必要である。珠算などと同じで、事実が強いのではないかもなどと活発に意見が交換された語、日本速記学会設立を強力にするよう希望を付して、次のような決定がなされた。速記教授所、速記教授者の認定あるいは推薦は、これを行うこと。ただし、その施行については、近畿・東京両地区はそれぞれ十分検討の上、合意成案を得た後、理事会の議を経て決定した細目によること。右の決定を見た後、午後7時散会した。出典:「日本の速記」昭和34年6月号日速協のあり方と問題点(その3)石渡 潔「速記教育委員会」この委員会の構成は、大部分が教育実務者をもって組織されているだけに、方式、教授所、教授者、誇大広告等の問題に焦点が求められ、その結論を得べく推進されているのであるが、地域的条件が一致しない限り、全国的な統一ある結論を出すことが困難視される向きもある。出典:「日本の速記」昭和34年7月号
■ 2005/05/27 (Fri) 拾い読み なぜ「その他」とするか社団法人日本速記協会の検定試験合格者に速記方式名が掲載されなくなった時期を確認しておりませんが、任意団体の日本速記協会が社団法人として認可されたのは昭和40年10月15日です。第1回の文部省速記技能検定試験が実施されたのが昭和41年11月3日です。「日本の速記」昭和41年5月号には任意団体・日本速記協会時代から受け継がれてきた1級から7級までの検定試験の合格者名が掲載されておりますが、方式名が掲載されておりません。「日本の速記」昭和32年12月号に“なぜ「その他」とするか”について掲載されております。ある式を学習していて「その他」で合格発表されているのは心外だとの投書があり、10月19日速教委で種々懇談した結果、従来どおり、その式の創案者または主宰者・教授者が協会正会員であり、B級以上の合格者・実務者数名以上が正会員である式はその式名で、そうでない式は「その他」で発表することに決した。要は、受験申込書記載の式名をそのまま発表して協会がその式を認めたように誤解されることを防ぎたいことと、多少の主張の違いは超えて協会の事業に協力していただきたいという趣旨にほかならない。(速記教育委員会)と意味不明なことが書かれております。検定試験の合格者名に方式名が掲載されていた方がよいのか、名前だけの方がよいのか意見が分かれるところです。ちなみに「日本の速記」昭和24年3月号には、受験者の名前と方式名が掲載されております。何ヶ月後には合格者の名前と方式名が掲載されております。つまりだれが不合格になったかまでわかります。今の時代でしたら「個人情報保護法」に抵触するでしょうね。同姓同名の受験者がいたと仮定します。○○○○(A式)、○○○○(B式)の受験者おり、同じ受験地で同じ級を受験してA式の方が落ちた場合はどうなるのでしょうか。合格通知はB式の○○さんに届きます。A式の○○さんには、不合格ですので通知は届きませんが、「日本の速記」に名前が掲載されております。全くあり得ない話でもありませんね。はっきりした記憶がありませんが、不合格者にも通知が届くようになりました。同じ受験料を払っていながら、不合格者にも通知を出さなかったのは協会本部の片手落ちでしたね。郵便事故で、合格通知が届かないことも考えられます。
■ 2005/05/19 (Thu) 資料紹介 全音速記について昭和42年11月ごろに全国の速記教育機関へ資料を請求しました。長野県の「泉会全音速記塾」から泉式の資料をいただきました。速記資料としてご紹介いたします。「全音速記のすすめ」全音速記とは、ガ、ギ、グ、ゲ、ゴ、カイ、ガイ、コウ、ゴウ、ソウ、ゾウ等の濁音字や長音字もある速記で、書くことも読むことも、速くて、しかも間違いのない速記で、日本唯一のものであります。泉式全音速記は1940年に、元県立長野図書館長・乙部会長によって発表されました。以来、これを修得した人々は次第に増加し、自営速記者や、衆議院、新聞社、協会等の専門速記者も輩出し泉式の活用者は続々ふえております。泉式は新聞などで広告しなかったので、世間にはまだ十分に知れわたっておりませんが、「日本速記方式発達史」やその他の専門書には、みな登載されていて、速記専門家の間では、既に知りわたっております。全音速記は発音したとおりに書ける速記で、書いたとおりに読めます。前後を考え判断しながら読む必要はないのであります。例えば、身体・信大・人体・神代の4つのタンゴは、発音が違うとおり、速記の字体も違いますから、安心して読めるのであります。書くことも読むことも、学習することもやさしい速記でありますから、小学生も喜んで学習しております。学生ばかりでなく、どんな職業の人でも、この全音速記を身につけておけば、必ず役に立ちます。この泉会の速記塾に通学できない方のためには通信教授もしております。長野市北石堂町269 泉会(速記塾)会長・全音速記開発者・日本速記協会会員・乙部泉三郎※現在、泉会はありません。「泉式の説明書」?(表紙がありません)P1.速記(省略)P2.泉式全音速記というのは泉式のことであります。泉式は1940年に全音速記を発表いたしました。基本文字の線はひらがな文字を構成している線を採用し、表音は漢字の字音を参考にいたしました。@ 書きやすい速記A 読みやすい速記B 美しい文字の速記以上の3点を目標として開発されました。書きやすいためには、だれでも自然に筆先にあらわれてくる線を活用しなければなりません。鉛筆の持ち方も、特別な持ち方をするには及びません。普通の日本語を書いているような調子で鉛筆を持ってください。読みやすいためには、書いたとおりに読むことの練習をすればよいのであります。耳で聞いたとおりに書き、書いたとおりに読むのでありますから、小学生でも習得することができます。美しい文字というのは、贅沢のようでありますが、練習が進んでくると、自然に美しい字が書けるようになります。将来は速記書道のことも考えておるのであります。泉式を習って専門速記者となった方々もあり、自家用で活用している方々もあります。泉式は時勢の進運とともに改良進歩して、発表当時とは見違えるほど成長改善されてまいりました。P3.要具=紙と鉛筆(省略)P4.速記の学び方(省略)P5.泉式は独立文字泉式の文字は普通文字の家来の文字でもなく、臣下の文字でもありません。日本字と対等の字格を持っている文字であり、日本字と兄弟の文字であります。カナ文字にはカナの法則があり、泉式には泉式の書き方があるのであります。カナでは濁点を打っても、泉式には濁点を打つ濁音字はありません。「は」を「わ」と読むのは、カナの助詞のことで、泉式では「は」は「わ」とは読みません。発音とおりに書くのです。P6.速記文字の大きさ(省略)
■ 2005/05/18 (Wed) 速記講座 長拗音「長拗音」とは、1.長音・拗長音、2.拗短音を1つにまとめたものです。ほとんどの方式では拗短音を学習してから拗長音を学習します。中根式では長音のウ・オ列、拗長音のイ・エ列を学習してから拗短音を学習します。早稲田式では拗短音のキャ、キュ、キョを先に学習します。そして拗長音のキャー、キュウ、キョウを学習します。拗短音の速記文字に長音符号をつけるからです。中根式では清音に大カギを逆記します。この段階で重要なことは大カギは直線に対しては正側、曲線は内側につけます。カ キ ク ケ コキャ キュウ クウ キョウ コウ(キウ) (ケウ)::最初に覚えるのはウウ、オウ、イウ、エウです。イウ=ユウ、エウ=ヨウですから、イウ、エウの速記文字を優先的に使用します。拗短音のア列は前出のとおりです。イ列は大カギを負側につけるのは直線のキュ、チュです。曲線の外側には大カギをつけません。大カギは内側につけますが加点を入れます。シュウを直線化してシュ。同じくエ列もキョ、チョは負側に大カギをつけます。曲線の外側に大カギはつけません。大カギを内側につけて加点を入れますが、該当するのはニョ、ヒョ、ミョです。ショウを直線化してショ。リョは直線化するとギョウになるので、直角に立ててデの正側に大カギをつけます。デウ=ヂョウは使いません。ニュ、ニョ、ヒュ、ヒョ、ミュ、ミョ、リュは使用頻度が低いのでニュウ、ニョウ、ヒュウ、ヒョウ、ミュウ、ミョウ、リョウに加点をつけております。ニュウ、ニョウの拗長音の方が頻度が高いからです。
■ 2005/05/13 (Fri) 自然消滅した原因明治15年から今日まで123年間には、いろいろな速記方式が出現して自然消滅してきました。なぜ、多くの速記方式が自然消滅していったのか「速記方式史」をひもといてみる必要があります。速記方式が自然消滅した主な理由には下記のものが考えられます。1.研究、普及する後継者がいなかった。(人材が得られなかった)2.法則の研究が途中で止まった。3.2と関連して時代に乗り遅れた。4.その方式の指導者を養成しなかった。5.4と関連して実務者しか養成しなかった。6.教育機関及び組織をつくらなかった。などが考えられます。今まで自然消滅した速記方式では組織をつくっておりません。各地に支部、同志会、共練会を結成しておりません。組織をつくるためには、速記に対する情熱と指導力がある人材が必要です。ただ、テキストを出版社から発行しただけではだめです。教育機関は学校のほかに通信教育が必要です。また1つの方式が、長く生き残っていくためには、常に法則の研究(略字ではありません)が必要です。「略字」と「略記法」は違います。時代に合った速記法則の研究を怠った方式は自然消滅しております。速記研究者は養成するものではなく自然発生的にあらわれるものです。自己が修めた速記方式が研究する価値があるかどうかです。自己が修めた速記方式に価値がないと思えば、その方式を全面的に否定して、自己の方式を打ち立てております。幾ら「基本文字を入れかえ」ても、法則的にも母式と同じではだめです。結果的には母式から抜け出しておりません。それを○○式と名乗るには無理があります。あくまでも○○式系××案にすぎません。明治時代の方式は、一部を除いてほとんどが田鎖式系諸案です。速記方式名を名乗るには、母式との違いを打ち立てなければいけません。1つの内容で○○式、××式、△△式、□□式、◎◎式、◆◆式、▲▲式といろいろな方式名を名乗るのは詐欺と同じです。いろいろな品物を注文したら、全部同じ品物が届いた、というそしりを免れません。下手をすると、その方式の信用失墜につながります。一度落とした信用を回復するのは容易なことではありません。
■ 2005/05/12 (Thu) 速記方式統一論について中根速記協会機関誌「中根式速記」の昭和24年4月号では、柴田明さんの「速記方式統一論」。昭和26年1月号では高橋一郎さんの「法則の統一」についてご紹介をいたしました。昭和24年4月から昭和26年1月当時における中根式の速記法則が推定できると思います。大正3年に中根式が発表されてから昭和24年では35年です。中根式では石村善左さんが中心になり「中根24年式」の案がまとまり、昭和23年の年末に中根速記協会福岡支部員に配付しております。名古屋の柴田さんが石村善左さんの「中根24年式」の資料を見たかどうかは時期的にも微妙です。柴田さんが原稿を書かれたのは2月10日です。土田利雄著「土田式速記法」は昭和9年6月発行ですので、一般に配付されたかどうか疑問が残ります。森卓明著「超中根式速記法」は昭和6年12月発行です。中根正世著「中根式速記講座 上巻、中巻、下巻」は昭和22年5月20日発行です。中根速記学校では昭和7年10月ごろ「速記研究会」ができており、新しい書き方が機関誌に掲載されている程度です。柴田明さんが言う「従来の速記法では徒に自己誇大の妄想に追われ、他人の考案を一部改変し自己の考案を一部挿入することによって何々速記法とか何々式とかいういわゆる売名的現状である」と書かれております。田鎖式系統、熊崎式系統の方式かどうかわかりませんが、中根式系統では昭和5年の岩村式、昭和6年の国字式、昭和9年の土田式ぐらいしか見当たりません。「速記方式の統一化は従来の速記法が技術一点張りの書くことだけが全部のように思われていた速記を科学的に体系づけられた速記学として樹立することによって達成できるものである」と書かれておりますが、速記学として樹立するにはほど遠く、まだ速記法則が出そろっていない時代です。速記を学問として樹立する体制が整っておりません。「将来の速記法は自己陶酔に陥らず大乗的見地に立って学問としての速記法に移行するならば前途に輝ける光明が見出され」と書いておりますが、時期尚早です。柴田さんが言う「統一式」とは、昨今日本速記協会で話が出ている「統一式」です。昭和24年の時期では「統一式云々」の話は半世紀以上も早すぎます。昭和24年以降にも速記方式が発表されておりますし、速記方式を統一する段階ではありません。速記方式は長い年月を経て自然淘汰されていくものです。使い勝手が悪い速記方式は残りません。速記方式史をひもとけば法則の研究をしなかった方式は自然消滅しております。なぜ自然消滅したか、一考すべきです。1つの速記方式に統一しないで2〜3方式は残しておくべきで、自由に選択して学習できるものでなければなりません。速記方式の向き不向きがあるからです。高橋一郎さんが言われる「法則の統一」は、中根式内の統一ですが、中根式においても「速記法則を統一」できる時期ではありません。昭和26年以降には中根式内においては新しい速記法則が研究されております。森卓明著「中根式表象法」は昭和32年ですし、「現代国語表象速記法」は昭和44年にその概要が発表されております。
■ 2005/05/12 (Thu) 拾い読み 速記方式統一論中根速記協会機関誌「中根式速記」昭和24年4月号 復刊第1号に、名古屋の柴田明さんが「速記方式統一論」について投稿されております。また「日本の速記」昭和24年7月号にもほぼ同じような原稿が掲載されております。二重投稿のような気もいたします。「中根式速記」へ掲載された原稿をご紹介いたします。元来速記法は人の言語をそのまま書きとめる目的のために考案された一種の便宜的符号である。しかるに従来の速記法(恐らく今までの)では徒に自己誇大の妄想に追われ、他人の考案を一部改変し自己の考案を一部挿入することによって何々速記法とか何々式とかいういわゆる売名的現状である。もちろん過渡期において切磋琢磨して日本の速記界の発展のため貢献されたこの苦労に対しては絶大の尊敬を払うものであるが、将来の速記界の発展を考えるならば速記方式の乱立を戒めたい。何となれば初めて速記法を研究せんとする者は方式の多様に圧倒されて辟易することは言をまたない。ここにおいて私は統一速記法の樹立は国家を救い事務能率を増進するものであると信じここに爆弾的意見であるかもしれないがあえて叱正を承知して述べた次第である。私は日本の速記法が過去70年近くの歴史を持ち現に三千数百字という高速度の言葉もほとんど完全に書き取れるまでに進歩したことはこれら数十余りの方式を考案された方に対して決して侮りをかけるものではないことをここに重ねて誓うものである。速記方式の統一化は従来の速記法が技術一点張りの書くことだけが全部のように思われていた速記を科学的に体系づけられた速記学として樹立することによって達成できるものであると思う。かくして取捨選択せられた方式が統一ある組織を持って伝えられるとき、実用化される速記、真の速記法ができるのではないかと思う。かくもすれば将来の速記法は自己陶酔に陥らず大乗的見地に立って学問としての速記法に移行するならば前途に輝ける光明が見出され、かくして日本語を母体とする国語の簡易化も速記文字的発展をすることもあながち無理ではないと思う。(昭和24年2月10日)また中根速記協会機関誌「中根式速記」昭和26年1月号 復刊第20号で「1951年 新春の抱負 アンケート」で、北海道の高橋一郎さんが「法則の統一」について書かれております。〔抱負〕本式に対する巷間の声に耳を覆うことなくあらゆる観点よりよきを採り悪しきを捨てて本式をより一層の高速度速記法たらしむべく一層の精進をしたい。〔希望〕各支部各人ごとに、まちまちな略法を使用しているが、本部において各支部ごとの研究の結果を集め総合検討して高速度的速記法として統一発表する要はないだろうか。と書かれております。