◆◆ 恩恵 ◆◆ 石村先生宅で昼時を迎えた時、先生が天ぷらそばの出前をごちそうしてくださ り、その味が格別だったこと、そしてそのそばを食べる間も互いに速記談義で時 が過ぎていったことが、私の中でのほのぼのとした思い出ともなっている。 石村先生に始まったことではないのでもあるけれど、「濁音」を「加点、濃線 化」等の方法以外のある種の「明瞭表示法」により表示しようとされた石村先生 の研究、活動による示唆、恩恵を私はいただいたと思っている。 欧米諸言語等、多くの外国語はそもそも子音と母音の両符号を設定する必要が ある構造であるが、EPSEMS考案に当たり、日本語速記法にこうした子音符と母音 符で構成される符号体系をあらためて試みるきっかけ、そしてそんな部分にもこ だわる「何がしかの思いの継続」のための原動力の主たるものは、これはまさし く石村先生から賜ったものだと思っている。 より好ましい速記法構築を目指し、夢見て、実際に行動されていかれた石村先 生へ、尊敬、敬愛、畏敬の念を心より込めて、書き連ねさせていただいた。 ― 石村先生没後丸4年に ― (完) |