序
50音符号については、主としてウ列加点符号を中心に多くの改変試案が示され てきた。 私は別の角度から、改変を試みようとするものである。目標とするところは、 より流麗な書線の導入にある。もちろんそのためには、50音符号の分野だけでは 解決できない。縮記法、略記法に至るすべての面との関連においてなされなけれ ばならない。しかしながら限られた紙面で、それらを説明することは難しい。逐 次本誌に発表することを約して、ここでは50音符号改変私案について述べること にする。 断っておくが、ここに発表するものは、全くの私案にすぎない。現段階では“ 試案”ですらない。問題が50音符号の改変にまでわたるので、特に付記しておく。 曲線に対する再認識 曲線と直線と、どちらが書きやすい?私たちの中根式速記符号では、曲線の長 さを、直線符号を弦とした場合、それに対する弧と定めている。したがって線頭 から線尾に至る長さでは、曲線の方が少し長いわけである。曲線と直線と、どち らが書きやすいか?ということは、12キロと10キロの距離は、どちらが早く行く ことができるか?ということにもなる。曲線と直線とどちらが書きやすいか?こ の単純?な質問が、この小論の出発点でもある。 多くの人々が、こうした質問に何のちゅうちょもしないで「直線」という答え を出してくる。多分それは1個の直線と曲線との比較による結果であろう。それ をもってすべてを律することはできない。横行線の、しかも連綴された場合はど うだろう。速記符号は、しばしば連綴の形において書かれる。この場合にさえも 「直線」という答えを期待することは困難だ。〔第1図参照〕 |