酒井式と泉式
宅間式が楕円派として複画の形をとったのに反し、酒井式は楕円派折衷の形を
とり、宅間式よの早く昭和8年に酒井伍作氏によって発表されている。そこには
やはり母なるグレッグ式の血が、次のような関係において流れている。
〔第7図
〕
ア=A イ=I ウ=U エ=E オ=O ス=S(以上宅間式と同じ)カ=
K テ=T ラ=R ル=L
一方「平仮名の運筆が極めて流暢であり」「書きなれている」点に点眼し「平
仮名の分解線」からその50音符号を制定したという乙部泉三郎氏の泉式(昭和16
年発表)ではカ行に曲線を当てている。〔第8図〕
美しき線への陣痛
ピットマン式のMと中根のマ行、Nとナ行、Kとコ、Tとテの関連性と同じよ
うに、宅間式、酒井式がグレッグ式のKをカ行に、L、Rをラ行に配したことは
無理からぬことである。我が国の多くの速記方式に母系の血の濃さを認められる
からである。しかし私は横行曲線をラ行に当てるのは、邦語速記の場合適切では
ないと思う。むしろサ行あたりに配すべきではなかろうか。とまれ、私はこの横
行曲線を、配したカ行のカ、コに当てはめようと試みた。