構成原則の崩壊

 第17図によってわかるように
(1)ア列×2=オ列
(2)イ列×2=エ列
(3)ア列の反対または太い線=イ列
(4)オ列+中部点(正側)=ウ列
例外……フクツユ(不屈勇)





 ―以上通俗中根式速記法7ページより12ページ―
という、中根式のとった50音構成原則は、カ、コの曲線の導入によりカ行、ナ行、 マ行において、物の見事に崩壊してくる。これをどう考えるか。
 私は、それに答える用意もしなければならない。50音符号構成原則とは、絶対 的なものだろうか。この反問的言葉がそれである。学習者には、音を写す一種の 符号とはいえ、そこに1つの関連性(構成原則)のあることは、記憶上便利であ ろう。しかし、そのために書線の連綴の妙が犠牲にされるとなると考えものであ る。より経済的な線によって、書かれねばならない速記符号の宿命がそこにある。 国字式の試みたウ列符号における関連性などは、疑問ではなかろうか。もはやそ れは、発音頻度、符号使用度数から定めらるべき速記符号の範疇から脱し、単に 覚えやすさにのみ重点を求めた結果ではなかろうか。さらにその「覚えやすさ」 である。果たして、そうした配慮が覚えやすいのだろうか。50音順に配列された ときに初めてそれが言えるのかもしれない。では聞こう。速記符号は50音順に覚 えなければならないものなのか。同方角符号別に、あるいは中根先生が、短時間 講習で実験される印象的符号からの教授の仕方と、いうように、覚えやすくする 方法がある。
 なお50音符号の関連性は、単に覚えやすさのみでなく、各種縮記法、略記法と の関係を考慮してのことだということも、うなずけるが、第17図の私案によると、 わずか最短線によってあらわされるゴザイマスとナリマス、同じく最短線イ尾音 符号のガイとメイが共通となり難点がある。しかしこれには解決方法がある。こ れはまたの機会に述べることとして、私は50音符号構成原則の崩壊を認めつつも、 中根式の世界にあって流麗な線を求め続けるのである。


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