◆◆ 出会い ◆◆ 私自身は、「早稲田式、中根式、Gregg式、モリタ式、石村式、田鎖76年式、 Pitman式、V式」のような順に学んでいったと記憶しているが、他の方式同様、 「石村式」も独学で学んだ。 初めて書店で「石村式」の本を発見した十代の若き日、小躍りするように興奮 して手に取り、買い求め、貪るようにしてその内容に食い入ったあの感覚は、今 でもはっきりと鮮明に呼び覚ますことができる。 「カ、キ、ク、ケ、コ」にたいして「ガ、ギ、グ、ゲ、ゴ」といった「濁音」 を書く場合に、他の方式とは全く異なり、「石村式」では「カ」の末尾にそのま ま「小円」を付することにより表現するのであるが、そもそもこの部分がとても 印象的で意外なものであった。(他の日本語速記方式の多くは、清音符号に加点、 もしくは清音符号を濃線化するという方法を採るものが多い。) そんなこんなとやっているうちに、随分と「石村式」に傾倒したのも事実で、 知らぬ間にそれなりに書けるようにまで熱中している物好きな自分自身であった。 この「濁音表示」を「小円付加」でもって行うという手法は、濁音の存在する 行(カ行、サ行、タ行、ハ行等)以外の行(=ア行、ナ行、マ行、ヤ行、ラ行、 ワ行等)に関してはいわゆる「空き家」となるわけで、このことをもって「整合 性に欠ける」という指摘をすることもできるが、実際上の速記学習〜書記演習〜 習得後の実際使用といった過程までを見てみれば、決してそういった指摘により 速記法としての有用性、価値といったものが崩れるようなものではないことは、 私自身が知っている。 |