動画版 モリタ式『速記の習い方』


  はじめに

百練自得。
ことばを越えて、心中におのずから得るところがあるまで、自分をきたえ上げていくのです。
それが速記独習を成功にみちびく、ただ一つの方法です。
  『速記の習い方』谷田達彌より
  

なお、谷田先生は「モリタ式は強い符号」とおっしゃっていました。
モリタ式は「短距離を少し走ったら燃え尽きてしまうようなタイプではなく、長距離をガンガンと酷使されても黙々と走っていくようなタイプ」の速記符号だなと感ずることがよくあります。 単画方式と比較して折衷方式、特にモリタ式はこのようなことが言えるように思います。   (速記士 平野明人)

衆議院における昭和初期の速記は、若林玵蔵を祖とする田鎖系複画符号の確立期であると共に、その一方では革新的な単画方式の創出を模索する時期でもありました。
こうした気運の高まりの中であります。衆議院速記者養成所第14期教官として就任した森田章三氏は、その在任中に自らが改変と改良を繰り返し練り上げた符号を世に問うたのであります。

かくして衆議院の速記は単画化へ大きく舵を切ると思いきや、森田氏の病没というアクシデントで符号開発は頓挫してしまう結果となりました。
森田教官の在任期間は6期。その内、森田案が教授されたのは後半のわずか3期でした。
なお、後にこの"森田案"(モリタ式)の解説書『速記の習い方』を執筆した谷田達彌氏は、養成所第19期卒業生であり、まさに創案者森田章三の直伝でありました。

皮肉なことではありますが、森田氏の急逝を契機に、速記者養成所の符号は複画方式へと逆戻りしてしまうこととなります。
森田案は、複画全盛期の高原に咲いたアダ花だったのでしょうか。
いや、そうではありませんでした。
森田氏の新方式の設計思想は、後の単画式符号「標準速記法」へと結実していきます。

谷田氏は、1946年から約2年半をかけて行われた極東国際軍事裁判の日本側速記者として、法廷のモニター室から審理の趨勢を見守っていたひとりです。
モリタ式は、戦後日本史を克明に刻む生き証人となった符号でもありました。
ぶっつけ本番一発勝負の修羅場を幾度となく潜り抜け、逞しく生き抜いてきた速記方式であることは確かな事実であります。

なお、当該方式の詳細や符号文例は「モリタ式(衆議院森田案)の紹介」等のページを参照ください。
https://sokkidouraku.lsv.jp/t47/index.html
https://sokkidouraku.lsv.jp/t48/1.html

(「速記道楽」編集長 宮嶋亮一)



このたび、モリタ式の解説本『速記の習い方』の内容を、丸ごと一冊解説した動画がSNS上にアップされました。
作成されたdeme7氏(平野明人さん)に御承諾いただき、当サイトで紹介する運びとなりました。
じっくりご覧いただき、みなさんの速記学習に役立ててください。

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