話がいささか飛ぶが、18世紀(1786年)に現れ、往時の欧米語圏をほぼ席巻した大方式に、Taylor 式がある。 Sir Isaac Pitman自身もJohn Robert Gregg自身も学習し、各々が多大なる影響を受けたところの幾何派英文速記方式だ。 そもそもTaylor式というのは母音が半分「無い」に等しい。 基本的に母音はドット(1種のみ)で表される。 [æ, e, i, a/o、u] であろうが他の重母音であろうが、すべてドット1つ。 書き手自身の判断で判読する。 さらには、「語の最初もしくは最後に来る母音以外は書かれない」・・・、つまり中間母音は書かれない。 中間母音が含まれた速記符号かどうか、これまた書き手自身の判断で判読するのだ。 こんなやり方で大方・・・通用する部分も少なくないが、何の用もなさない部分も少なくない。 世を席巻した方式だが、とにかく良くも悪くもシンプル構造。 音を表現し切れていない部分も多いが、シンプルで書線が書きやすいからこそ世界中の速記に多大な影響をもたらしたようにも思われる。 Taylor式なくしてPitman式なく、巡り巡ってGregg 式もなかっただろうと思っている。 そんな Taylor 式の研究を私は数年にわたり続け、5とおりほどのTaylor式モディファイド・バージョン (私的にアレンジしたもの)を作っていった。 これらを作る中での問題点は、まさに「母音表示法」だった。 母音符号を自らアレンジしたものをTaylor式に上乗せしたりしつつ、自製の方式をあれこれと組み上げていた。 Pitman式タイプの「離筆母音」と、Gregg式タイプの「連綴母音」の両方を試しまくった。 英語のヒアリングと5とおりほどのアレンジ符号により書き取る練習、つまり速度練習も精力的に続け、実際どう機能するかを体で確かめていった。 |