19  EESSを実際に開発した結果は?


「EESS」の意味をここで記す。

EESS=Experimental English Shorthand System=実験中英文速記方式。

別の言い方をすれば、「平野式幾何派英文速記」と称することもできる。

EPSEMS式の英文用のものは「平野式草書派英文速記」とも言えるため、EESS の場合、「幾何派」の語で表す。

前述のごとく、EESSでは、日本語速記における「単画線=単画符号」に相当する符号、つまり円やフックなどを伴わない、「1本の髪の毛」のような単純線を用いた。

そこに「古い英国流符号」の「長さ1種」を重んじることとした。

この「長さ1種」という美点を備えた符号を個人メモ用途に使いたい。

普通文字に準じた感覚で使いこなせれば、その恩恵は大なりと信じた。

そして母音には、Gregg式タイプの連綴母音(円やフック)とした。

なお、濃淡を廃して淡線のみとしたければ、Gregg式同様の長短2種で符号を確保することもできる。

Gregg式の子音符号は、多くは長短のサイズが2種。

例えば、無声音[t]を表す符号を2倍にすると、有声音[d]になる。

多くの場合、無声音と有声音の違いは長さの違いのみだ。

「無声音、有声音」の区別を長さで示すGregg式に対し、濃淡で示すのがPitman式だ。

Gregg式と同様、長さを2種とし、濃線を廃することもできる。

実際、そういった実験もさんざんやった。

しかし・・・やはりTaylor式やPitman式といった英国方式の美点は捨て難い。

長さの書き分けに神経を使わずに済むって、かなり快適だ。

いささか踏み入った部分にまで話が及んだ。

さて、以上を踏まえて組まれたEESSの子音符号は、どこかTaylor式にも似ている。

とりわけPitman式とは共通部分も多い。

その土台の上に、Gregg 式に準じた母音(円やフック)を付した格好になっている。

過去、EPSEMSを組んだ際、英文速記を組み上げるコツを少なからず会得してきた。

英語の音韻構造、母音種の違いの取り扱い、子音の連続パターン等・・・。

そして英語という言語における語の構成傾向・・・といったものを多く得られた。

語や熟語のどんなパターンを省略することができるか等々・・・。

私なりの自論も踏まえ、省略パターンなるものをEPSEMSで具現化してきたつもりだ。

それらをEESSにも生かしつつ、EPSEMSとは根本的に構成原理の異なるEESS独自の構成パターンも発見していった。

EPSEMSの場合よりも比較的短期間のうちに、方式としてのまとまりを見せた。

少なくとも、私自身がちょっとしたメモに使う際、この上なくシンプルに使える。

煩わしくない、素敵な道具を手に入れたような気持ちだ。

自分で言うのも・・・何だ・・・が、お勧めできる。

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