いろいろな潜水艦

 私が15歳の少年のころ、1年後輩が「私の伯父さんが同盟通信社の支局長で、中根式 です」と言うので、早速、支局を訪れ、相手の迷惑などを意に介せず、その仕事ぶりを 拝見させていただいた。
 山下義夫支局長は実に流麗な符号を軽やかに書いていかれる。今でもまぶたに焼きつ いているのは、
   潜水艦

という符号である。
 中根式の特徴である左斜め上から右斜め下に向けての流れるような曲線美。
 本当は、と書くべきでなのです。「2曲線間の円は、前の曲線の曲がりの 内
側につけよ」という決まりなのです。山下支局長は、これを「2曲線間の円は、後の円 の曲がりの内側につける」という方法で書いていらっしゃる。その方が、線が引き締ま って速度感も伴ってくる。だから、余計に印象的だったわけです。実はグレッグ式がこ の方法であるということを知ったのは、随分後になってからのことです。
 当時は加点インツチクキ法というのが発表されて重宝がられていました。
 「加点インツチクキ法」では、潜水艦をと書きます。

 <加点インツチクキ法の説明>
@
  のように、2音目と4音目にインツチクキのいずれかの音が存在する場合

A2音目のインツチクキ音は、1音目の符号の側面を使ってあらわされる。

B3音目の●音は省略する。

C4音目のインツチクキ音は

と定め、2音目のインツチクキをあわわす箇所に書く。
 イは線に対して平行
 ンは加点
 ツ・チは線に対して直角
 ク・キは外向きにつける。
 これによって、当時は、先ほど述べた「潜水艦」を初め、
 「帝国海軍」

 「戦艦」

 「生産」

 「建設」
と書くことができ、大変便利な方法でありました。
 ところで、今から62年前、出会った潜水艦は、今もなお私の「美しき 線の流れ」追求の原点として強烈に印象づけられているのであります。現在、私は「潜 水艦」を次のように書いております。



<符号の説明> 
@センスイカンをセンの部分とスイカンの部分に分けて考えます。

Aまず「セン」ですが、漢数字の最初の一画、あるいはアラビア数字の千の位をあらわ す 記号でもある´を、「セン」をあらわす2音文字とします。

B次に、「スイカン」ですが、「ス」の符号のかわりに、「ツ」の符号  を使います。江戸っ子は、「まっすぐ」と言えないで、「まっつぐ」と言います。 「遂行」 を「ツイコウ」と読む人もいます。「ズボン」というときに、では なくて、
 と書きます。このように「ツ」は「ス」の代字として使われます。

Cさて、「スイカン」を加点インツチクキ法で書くと、
 1音目はスの代用としてツ、2音目のイは1音目の符号の正側頭部であるが、そこへ、  3音目「カ」は省略して、4音目の「ン」をあらわす・を打てばよいのです。
 即ちという形になります。

Dそれに「セン」を加えるわけです。ダッシュ。その尾部に4音目の「ン」の・が秘ま っ ているわけです。即ちであります。

7⇒IndexTop