今まで「速記指導者養成計画案」の「大綱」について書いてきました。それでは、中根式を例に挙げて、具体的な「運用方法」について書いてみましょう。
1.指導者養成の対象者について
指導者養成の対象者は年齢、性別に関係がないことは周知のとおりです。最低限、下記の条件を満たしていなければならないと思います。
1)速記学校、教室、支部、研究所、塾等の卒業生
速記学校、速記教室、支部、研究所、速記塾の研究科(本科1年、研究科1年)及び実務速記科(2年制)を卒業し、速記法、速記術のみを習得した卒業生です。
中根式関係の教育機関には下記のものがあり、青字は現在でも指導が行われております。
中根速記学校(東京都千代田区)
川村速記学校(青森県弘前市・川村秀蔵) *故人
岩手速記学院(岩手県盛岡市・加茂秀雄) *故人
澤速記教室(東京都世田谷区・澤 二郎) *故人
中根速記浜松支部(静岡県浜松市・佐山良平) *故人
中根速記三重支部(三重県度会郡小俣町・高木 宏) *故人
中根速記大阪支部(大阪市・西 峰生) *故人
京都速記研究所(京都市・森 卓明) *故人
福知山速記研究所(京都府福知山市・足立卓聰) *故人
中根速記兵庫支部(神戸市・稲垣正興)
神戸速記学校(神戸市・木下謹三郎) *故人
中根速記和歌山支部(和歌山市・山崎英生) *故人
広島YMCA支部(広島市・酒井哲夫) *故人
小出速記事務所(佐賀市・小出邦彦)
熊本市青年学級速記科(熊本市・鬼木淑子)
上記の各支部では「速記法」における全体系(指導された中根式の各法則体系を基準とする)が指導されていたかどうかは不明です。
いずれの教育機関においても「速記史」に関しては指導されておりません。
2)通信教育修了生
中根式速記本部及び中根速記学校で行っている通信教育・研究科課程の修了生です。
「速記法」のみで、「速記術」に関しては各個人によって異なっております。「速記史」に関しては指導されておりません。
*一時期、東京には「中根式速記協会」と「中根速記学校」があり、京都には「中根式速記本部」があり、現在は中根式速記協会として一本化されております。
3)高校の速記部及び大学の速記研究会出身者
高校の速記部及び大学の速記研究会出身者は速記法の全法則体系(指導された中根式の各法則体系を基準とします)が指導されていないと思います。全国各地の高校速記部では95%以上が中根式を採用しております。
最近では高校の速記部が減少をしておりますが、北海道では、過去に小樽商業、小樽潮陵、函館商業、釧路商業、旭川北都商業などに速記部がありましたが、現在では自然消滅しております。
*中根式関係では速記史(「日本速記八十年史」及び「日本速記百年史」)を指導しているところはほとんどないと言っても過言ではありません。
4)独習者
中根式関係では独習者が極めて少ないと思います。
中根式関係の教科書類で市販されたのは、高校速記科の教科書として昭和43年3月28日に市ケ谷出版発行された中根洋子/池田正一/森下等著「中根式速記」だけです。 古書店でも中根式の教科書は入手が困難です。
5)社団法人日本速記協会速記技能検定試験1〜3級合格者
社団法人日本速記協会が行っている速記技能検定試験の1〜3級合格者です。*1)〜5)までは共通ですが、中には例外があることを忘れてはなりません。
速記が速く書けることと、速記を指導することとは別の問題です。速記がある程度速く書けるのは当然のことですが、速記が速く書けなくても速記の指導が上手な指導者もおります。
速記法の大家が必ずしも速記術の大家ではありません。逆にまた速記術の名人即速記法の権威とも言えません。速記法と速記術、この2つは似たところもありますが、本質的には全く別のものです。
幾ら実務経験が長くても、速記の指導ができない人もおります。
要は速記に対する意識の高さが最も重要なことです。
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