1.速記界の現状認識について
現在、我が国の速記界は学習者の減少により衰退の一途にあります。これは速記界にとってはゆゆしき問題です。
我が国の速記界では速記教育機関が減少しておりますが、これはワープロやパソコンの普及率とは余り関係がないようにも思われます。速記界全体が一般世間に対して速記のPRが下手だったとは言い切れないのではないでしょうか。速記界では一部分の人を除いてワープロやパソコンに熱中していた結果であり、アマチュアへの教育をおろそかにしていたからです。
現在、我が国の速記界では、指導者の養成機関は皆無であり、速記学校の教師は速記学校在学中に成績のよい卒業生で占められております。
速記学校在学中に指導者としての教育を受けているかどうか実態はわかりませんが、速記学に関しての知識には不明です。
まず、速記界の底辺を広げるためには、指導者の養成をするとともにプロ・アマを問わず、速記者自身の速記に対する意識を向上させることが必要です。従来から各方式で行われている速記教育の内容を十分に吟味して、速記を学問的見地から再検討をすることも必要なことです。
我が国の速記界は実務速記者の養成に力を入れていたことは周知のとおりです。現在でも多くの実務速記者自身が「速記の普及(教育)は実務速記者の養成」という思想を持っており、国民皆速記という思想がいまだに定着しておりません。
速記界においてアマチュアに対する普及は一部分の方式において行われておりますが、速記界ではいまだにその成果及び実態の把握ができておりません。
例を挙げれば早稲田式の通信教育修了者、中根式の高校速記部出身者、各方式の大学速記研究会及び速記部出身者、各方式の速記学校卒業生などは、現在までに相当の数になります。これらの人達で実務速記者になった人はほんの一部分です。
我が国の速記教育は速記を習得した多くの人達に対するアマチュアの速記利用方法(日常生活における速記の利用法)が教育をされていなかったように思われます。
速記界は一日も早く指導者を養成してアマチュアへの普及を図ることが必要です。
現在、我が国の速記界は1人の実務速記者を養成するよりも、1人でも多くの速記指導者を養成することの方が大事な時期です。
他の分野に目を向けると、ワープロやパソコンの普及により「珠算」や「書道」は、いまだに健在です。
速記界では、なぜ「珠算」や「書道」が、いまだに健在であるのか、その実態を十分に調査・研究をすべきです。
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