8.指導者の法則体系について
指導者と法則体系の関係について触れてみましょう。指導者は学習者の目的によって指導する法則体系を選択しなければならいのは周知のとおりです。
では、指導者にとって必要な法則体系とはどのようなものでしょうか。
実務速記者養成(分速320字から分速360字以上)の法則体系とアマチュア速記(分速200字から分速240字)の法則体系では内容がおのずから違ってきます。
指導者は速記教育の目的にかかわらず、「速記法」及び「速記法研究」の科目を習得しておく必要があります。これが「実務速記者」と「速記指導者」の大きな違いです。
指導者は「速記法研究」で自己が習得した方式の各法則体系に精通しておく必要があります。
指導者がアマチュアの教育だけを目的とする場合でも、アマチュア用の法則体系だけではなく、自己が習得した方式の各法則体系も把握しておく必要があります。
アマチュア志望の学習者が途中でプロ速記志望に変更することも考えられるので、状況に応じて指導をしている法則体系を変更する場合もあることを忘れてはなりません。そのためにもアマチュア用の法則体系と実務速記者用の法則体系には、法則的にも関連性を持たせておく必要があります。
学習者が社団法人日本速記協会の速記技能検定試験で1級に合格しても、全員が実務速記者になるわけではありません。実務速記者にならなくても各業界において速記能力者が速記を利用できる分野は幾らでもあると思います。
また、速記教育機関に入学したプロ志望の学習者でも、途中で落伍をする実例が多いことも認識しておくべきです。
学習者の中には、興味本位で速記を学習しているうちに、速記がおもしろくなり、そのまま実務速記者になった実例もあります。
指導者は学習者に対して「速記の楽しさ」、「日常生活における速記の利用法」などを指導しておく必要があります。
また、学習者の習得状況(速度及び生活基盤によっても異なる)に応じた速記利用法などを指導することが必要です。従来の速記教育ではこの辺が忘れられていたように思います。
要は速記の入門過程が問題ではなく「学習者が速記を好きになる」ように、速記を指導することが指導者としての大きな課題です。
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