2.速記教育機関における授業内容の推移
各方式の速記養成機関では過去において、どういう科目が指導されていたのでしょうか。主要な各方式における速記教育機関の「入学案内」及び「入所案内」から授業内容を抜粋してみました。
資料として古いものから順番に紹介してみましょう。
*速記以外の科目については省いております。
昭和43年度及び昭和44年度における各方式の速記教育機関では下記の科目が指導されております。
中根速記学校(*東京)
本 科(1年)
初歩から基本法則全般(*速記法の意味)、演練(*速度練習の意味)
研究科(1年)
高速度演練(*高速度練習の意味)
*中根速記学校では、昔から「速記術」のことを「演練」という言葉を使っております。現在では「速度練習」と言っております。
大阪山根速記学校
本 科(2年制)
速記概論(速記の歴史、速記構成論、速記法の概念)、速記法(基礎速記法、普通速記法、高等速記法)、速記実技、速記反訳
早稲田速記学校(*東京)
本 科(1年)
速記法(基礎教程、訓練教程、技能検定試験受験指導)
専門科(専門速記コース)(1年)
速記法(速度訓練、反訳練習、整文法、実務速記演習、技能検定試験受検指導)
研究科(1年)
速記研究(速記法理論、速字研究、速記史)、速記指導法(速記指導法、指導実習、実務速記)、教育心理学、教育原理
*昼間部のみ
衆議院速記者養成所
本科1年(前期)
速記法
本科1年(後期)
速記法、速記術、反訳、実習
本科2年
速記術、速記史、反訳
研修科
速記術、反訳、速記学、符号研究、実務知識
参議院速記者養成所
1年
速記法
2年
速記術
研修生
速記術
昭和55年ごろにおける各方式の速記教育機関では下記の科目が指導されておりました。
中根速記学校
実務速記科 (2年制)
速記法、速記特訓
師範科
(指導者を養成するためではなく、高速度の練習をするために設けている)
大阪早稲田速記専門学校
1年
速記法総論(速記法の概念、速記用具の使用法、速記の実用的価値、速記の科学性、速記の歴史)、基本速記法(基本文字、速記文法、速記文型、テープ速記法、簡略文字、単語連綴法、要約速記法)実習1(文章の速字化練習、漢字転記練習、録音技術、速記編集、速記符号研究
2年
高速度速記法(情景描写、各人簡略法、高等省略法、外国語速記法)、速記演習(メモ速記、詳述速記、要約速記、依頼速記法)、記録様式と速記実技(議会速記、大会速記、講演速記、口述速記、社内会議速記、商談速記)、実習2(文章の速字化練習、録音技術、速記編集、要領速記、速記符号研究、実用語研究)
上記のとおり、過去において指導者を本格的に養成した実績があるのは、早稲田速記学校(現在の早稲田速記医療福祉専門学校)だけです。
昭和43年度の早稲田速記学校入学案内には「研究科」の説明に
速記法をさらに徹底的に研究し、早稲田式速記の指導者にふさわしい人材を養成します。現在、拡大しつつある速記需要を前に、優秀な指導者は不可欠です。
適応職種
高校講師/インストラクター/速記教師などの道があります。
昭和44年度の早稲田速記学校入学案内には研究科の内容にも
早稲田速記の指導者を養成するために、速記をさらに掘り下げて研究し、あわせて速記の指導法を知識・技能の両面から学習する。
と書かれております。
現在の早稲田速記医療福祉専門学校において、指導者の養成は行われていないようです。
中根速記学校で「師範科」を設置していたのは、指導者を養成するためではありません。
昭和55年度の中根速記学校入学案内には
2年修了後、さらに技術の錬磨をはかろうとされる方は、師範科生として、引き続き研修に努めていただくことができます。
と書かれております。
中根式において指導者の養成に関しては、1日とか2日間の短期講習会が行われている程度です。
昭和41年3月20日に中根式速記協会愛知県支部主催で「愛知県第1回クラブ・リーダー研修会」が行われました。研修会は高校の速記部員と速記部顧問が対象です。参考までに研修の内容は下記のとおりです。
〔研修内容のポイント〕
1.新入部員の受け入れ準備と募集方法。
指導計画表の作成、成績記録表の作成、ポスターの掲示、演説によるPR、入学式での校長あいさつの速報。
2.魅力のある指導と効果的な練習方法。
指導者としての心得、基本文字の説明、初歩段階の目標、カードの活用、単語・短文の活用、要点速記と応用速記、交換審査と記録の励行、テープレコーダーの活用、休暇中の練習方法。
3.絶対必要な教材とそのつくり方。
読む資料、単語・短文集、辞書・参考書・教本、新刊「速記学習ノート」、その他。
また、中根式速記協会主催で昭和48年3月29日、30日に第1回の「高等学校速記教育指導者養成講習会」が、速記を全く知らない高等学校の教師を対象にして行われております。
講習内容は、中根式速記法の初歩の書き方、練習法、指導法及びスピードメモ法の書き方です。
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