7.指導者の速記史における認識
 「速記史」について書けば、社団法人日本速記協会の「日本速記百年史」に書かれている内容はあくまでも主要方式の概略です。
 各方式には長い歴史を持つ方式があれば、短い歴史しか持たない方式もあります。中には現在では使用されていない方式に関した記述もありますし、現在でも使用されている方式の記述があります。また、使用をされている方式でも記述がされていない方式もあります。
 指導者は過去の速記界における興亡史をひもとくことはもとより、過去の史実を再認識しておくことが重要です。指導者は常に速記界の情勢などに対し、あらゆる状況判断ができなければなりません。そのためには「速記史」関係の文献をいろいろと熟読し、常に速記界の情報を収集・分析することも必要です。
 我々は「日本速記百年史」だけでは各方式の詳しい歴史を知ることができません。
 指導者は自己が習得した方式の歴史に精通することはもとより、各方式の歴史にも精通をすることが必要です。
 自己が習得した方式の創案・発表以来における発展過程を知り、また、各方式の創案・発表以来における発展過程を知ることも必要です。各方式の「速記史」を熟読することにより自己が習得した方式の将来を展望する参考になるはずです。
 現在、各方式では下記のように「〇〇年史」が刊行されております。
 例を挙げれば
 1.衆議院速記者養成所では「衆議院速記者養成所八十年史」
 2.参議院速記者養成所では「貴族院速記練習所・参議院速記者養成所八十年史」
 3.佐竹式では「二人千脚 塾長と塾生の30年」
 4.早稲田式では「早稲田速記五十年史」
 5.中根式では「速記一筋」―中根正雄自叙伝―
など立派なものが既に刊行されております。
 指導者は自己が習得した方式史に関したことを、詳しく知っておくのは当然のことです。
 このほかに「田鎖綱紀」及び「若林玵蔵」の伝記もあります。
 1.日本速記事始 田鎖綱紀の生涯
    福岡隆著(岩波書店)昭和53年8月21日発行
 2.ことばの写真をとれ 日本最初の速記者・若林玵蔵伝
    藤倉明著(さきたま出版会)昭和57年10月28日発行
 これらの伝記類も「速記史」に含まれるので、田鎖式における創案当時のことが理解できると思います。
 指導者は自己が習得をした方式に関係なく、速記史関係のいろいろな文献を読む必要がです。

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