6.指導者養成の文献について
 この「速記指導者養成計画案」において「指導者養成」することを想定してみました。実際の運用に際して使用する文献における主な書名を紹介してみましょう。
 下記に掲げた文献は、指導者としての知識で必要最小限度のものばかりを列挙しております。
 指導者は下記の「文献」ぐらいは手元にそろえておいてほしいものです。全科目を暗記しなくても、一度でも読んでおくだけで、速記の指導をしているときには、いつかは必ず役に立つはずです。
 ただし、速記法、速記史、速記法研究、速記指導法の科目は暗記しておくものです。指導者として、この4科目は特に必要です。他の科目については常識として概略を知っている程度でよいでしょう。
 特に、速記研究者は全科目を知っていなければなりません。
 吉川欽二さんの著作は早稲田式、佐竹式をベースに作成しておりますが、各方式の法則体系に応用することも可能です。速記指導法には必ず参考になります。
 指導者は1方式の習得にとどまらず、書けなくてもよいから2〜3の方式を勉強することを勧めます。自己が習得した方式しか知らなければ、自己が習得した方式の短所や長所がわからないし、他方式の用語や省略法を自己が習得した方式に取り入れて研究をすることも必要です。自己が習得した方式のみに固執をしていると時代にあった速記法則の研究ができないし、時代に取り残された旧式の速記文字を指導することになるからです。
速記概論関係
 速記概論
   大阪早稲田速記専門学校(兼子次生著)昭和56年3月20日発行
速記学関係
 速記の科学
   速記文化研究所(兼子次生著)昭和57年9月16日発行
 速記研究
   速記文化研究所(兼子次生著)平成2年7月7日発行
 タンフォノピア
   速記文化研究所(兼子次生著)平成3年5月5日発行
 速記用語辞典
   紀州速記研究所(吉川欽二編)平成8年12月20日発行
 速記用語辞典
   速記懇談会 平成9年2月16日発行
速記方式学関係
 比較速記法(速記研究抜粋)
   京都速記研究所(森卓明著)昭和3年12月号(第48号)〜昭和7年6月号(第90号)
 速記符号集
   社団法人日本速記協会(世話人代表・兼子宗也)平成5年9月1日発行
 現代国語速記法における速記符号文例集
   速記懇談会(編集責任者・兼子宗也)平成6年6月2日発行
速記史関係
 日本速記方式発達史
   日本書房(武部良明著)昭和17年11月25日発行
 舞台裏の現代史
   三一書房(竹島 茂著)昭和41年8月23日発行
 速記の歴史(西洋編)
   社団法人日本速記協会(向井征二著)昭和48年3月1日発行
 日本速記事始 田鎖綱紀の生涯
   岩波書店(福岡 隆)昭和53年8月21日発行
 萬国速記史
   大阪早稲田速記専門学校(兼子次生著)昭和55年5月18日発行
 日本速記百年史
   社団法人日本速記協会(武部良明著)昭和58年10月28日発行
速記指導関係
 速記教育概論
   紀州速記研究所(吉川欽二著)平成6年8月発行
 速記講話―速記を教える―
   紀州速記研究所(吉川欽二著)平成6年8月発行
 速記講話―速記を考える―
   紀州速記研究所(吉川欽二著)平成6年8月発行
 速記の『儀式』
   紀州速記研究所(吉川欽二著)平成8年11月15日発行
 標準時間配分と基本練習
   紀州速記研究所(吉川欽二著)平成8年11月15日発行
速記法及び速記研究関係
 (*各方式における教科書及び指導書類を参考にしてください)
速記実務関係
 速記原稿のつくり方
   東京速記士会(宮田雅夫・佐竹康平著)昭和53年3月20日発行
 要点速記の問題点と処理法
   東京速記士会(武部良明著)昭和54年9月30日発行
 記録作成実務の要点
   速記文化研究所(兼子次生著)昭和59年12月発行
 速記実務のABC
   大阪早稲田速記秘書専門学校(吉川欽二著)昭和62年3月20日発行
その他
 名士の速記観
   社団法人日本速記協会(前田英昭編)昭和45年9月1日発行
 寸志録 線に聞く
   同人方(吉川欽二著)昭和61年9月1日発行
 高速度速記奥義秘伝
   同人方(吉川欽二著)平成2年6月17日発行
 
 いずれも熟読をするだけで十分に理解ができるものばかりです。
 以上、紹介した文献は指導者として熟読しなければならない最小限度のものばかりです。このほかにも参考になる文献は幾らでもあります。
 上記の文献はほんの一部分ですが、一度でも熟読しただけで速記関係の知識がかなり得られることだけは保証します。
 上記に掲げた文献におけるすべての内容を暗記することが理想的です。実際問題として各科目のすべてを暗記すること自体は容易なことではありません。よほど記憶力のよい人でない限りほとんど不可能に近いでしょう。しかし、全部の文献を一度でも熟読するかしないかでは大きな違いがあることだけは歴然としております。
 現在、我が国の速記界において指導者の養成機関はありませんが、他の各分野においては指導者の養成機関が充実をしていることを十分に認識しておく必要があります。
 昭和58年10月28日発行の「日本速記百年記念誌」及び平成15年5月14日発行の「日本速記年表/速記関係文献目録」には文献が豊富に掲載されております。これらの文献を再検討して各科目ごとに分類すれば、上記の科目になると思います。
 我が国の速記界は、速記学の分野を総合的に見ると、いまだ学問として確立されておりません。各分野ごとに見れば高レベルの研究があることを忘れてはなりません。我々は、これらの文献を大いに利用しない方法はないと思います。

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