9.指導者養成方法について
 現在、我が国の速記界において指導者養成について実行できることは、下記の方法などが考えられます。
1.独 習
 指導希望者自身が文献の各科目を熟読することです。「指導者養成の文献」で掲げた文献の内容はすべてが独習できるものばかりです。
 独習の場合は、独習者自身が文献を収集することから全てが始まります。
 独習者の場合は、速記界の事情に通暁しており、速記関係機関(社団法人日本速記協会、各速記方式の協会・学校、紀州速記研究所等々)や文献にも精通していなければ文献の収集が非常に難しいでしょう。
 文献を熟読するよりも、文献を収集することの方に時間がかかることを覚悟しなければなりません。
 指導希望者は、常日ごろから文献を収集しておく気持ちがなければ、急には間に合いません。
 独習者の場合は、生活環境、個人差などを考慮すれば、期間の特定は不可能です。
 指導実習に関しては速記を指導しながら、経験を積んでいく方法しかありません。
2.通信教育
 各方式の速記教育機関が独自に通信教育を行い、各科目の文献を独自に作成することです。
 通信教育の場合は、独習と同様に生活環境、個人差などを考慮すれば、期間の特定は難しいでしょうが、最短の受講期間は6カ月から1年間ぐらいが適当です。受講期間が、余りにも長過ぎると受講者の方がだらけてしまいます。
 指導実習に関しては速記を指導をしながら、経験を積んでいく方法しかありません。
3.速記教育機関
 各方式の速記教育機関で「速記指導者養成科」を設置して各科目の文献を作成することです。
 速記指導者養成科の期間は1年間ぐらいが適当です。
 あるいは各方式の速記教育機関が協力して「速記法研究」以外の科目を分担して履修する方法も考えられます。
 いずれの方法も、速記教育機関が事前に各科目の文献を作成することは大変な作業ですが、手書き速記の将来的な見地から考えれば一時的な作業です。
 スキャナーを使用すれば、人間が最初から入力をするよりも作業効率がよいでしょう。各方式の速記教育機関が著作権の問題を解決するだけです。
 各方式では、既に速記教育機関がない方式も存在しております。そういう方式の場合は、上記の「独習」という形になります。
 指導者として、特に必要な科目は「速記法」「速記法研究」「速記指導法」「速記史」の4科目です。
 「速記法」は、速記学校の卒業生、通信教育修了生は既に習得しているので特に問題がないと思います。
 特に「速記法」で問題があるとすれば、高校の速記部出身者及び大学の速記研究会出身者、独習者の「速記法」における法則体系の知識的レベルです。
 特に高校速記部出身者における法則体系の知識的レベルには非常に大きな開きがあります。
 高校の速記部では法則体系を熟知した顧問が指導している場合には問題はありません。全国各地の高校速記部では、顧問のほとんどが「速記」の知識がなく、3年生が1年生を指導しているのが現状です。
 法則体系を指導する3年生の指導能力が低ければ、全体的な法則体系が指導されず、年々、速記法体系(縮記法・略記法)の内容が減少した状態で伝えられております。
 大学の速記研究会についても同じようなことが言えるのではないでしょうか。要は指導する側の能力次第で法則体系の全体が伝えられるか減少するかが決められると言ってもよいでしょう。
 「速記法研究」及び「速記指導法」は、各方式によって異なるので、各方式における問題だけです。
 上記の中で、即応できる方法は「独習」であり、完璧な方法は「速記教育機関」で「速記指導者養成科」を設置することです。(東京の早稲田速記学校では過去に「研究科」として設置をしていた実績があります)
 指導希望者自身の地域的な生活基盤及び年齢などを考慮すれば、「独習」及び「通信教育」が中心になります。
 「速記史」については、各方式とも共通しているので、社団法人日本速記協会は速記技能検定試験日と同日に「速記史」の筆記試験だけを行って合格者に「速記指導者認定証」を交付すれば済みます。

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