勇気


 これは森 卓明氏が、その著書「超中根式速記法」第二編基本文字第一章の50音図で、「願わくば今後とても多少の不便はあっ ても永久に改変せられざむことを」と呼びかけ「これ創案者に対する何よりの記念碑であり謝恩塔である」と断じてから1年後の ことである。私はこの全く相反した言葉が、それも1年後に述べれたということに、何ら驚きはしない。森氏は「超中根式速記 法」の中で“改変しないよう”呼びかけたとき、既に現在の私と同じようなジレンマに陥っていたに違いない。そして氏は自分の 心の悩みに自ら終止符を打とうとして、ああした一文を書いたのではなかろうか。しかし、それでもなお氏の研究する心を止める ことはできなかったのである。氏はその1年間随分と苦しんだことであろう。そして昭和7年8月第一図の案を9で引用した文章 とともに発表するには相当の勇気が必要だったろうと思うのである。


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