後進者へよりよき遺産


 最後に私は、本部長池田正一氏の24年6月の「研究発表を待望す」という文章の結びを引用しておきたい。

 しかしながら斯道に携わってその恩恵に生きる者として、そのいずれの方向(註=縮記、略記法の研究と50音符号にまで立ち入 る研究)を選ぶにしても、ためにする野心的研究ではなく、大乗見地から、後継者へのよりよき遺産として、ひいては我が国速記 界の向上発展に寄与する意味において真摯な研究発表を切望してやまないものである。

 まこと「ためにする野心的研究」ではなく「後進者へよりよき遺産」としての、50音符号に立ち入ってまでの研究が、この誌上 を通じてなされることを、私も切念する。
 「後進者へのよりよき遺産」としての「ステノ」たらしめたい。その意味で、私はあえて問題多い50音符号についての研究への ヒントとその障害を提起してみたのである。
            
(昭和32年7月4日)


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